英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から 2024年に刊行されている Pushkin Vertigo シリーズの一つである 横溝正史作「悪魔の手毬唄」の裏表紙 (Cover design by Anna Morrison) |
日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの一つである「悪魔の手毬唄(The Little Sparrow Murders)」の場合、1955年(昭和30年)の7月下旬に、金田一耕助が、岡山県警(Okayama prefectural police headquarters)の磯川警部(Inspector Isokawa)の元を訪れるところから、物語が始まる。
探偵稼業に疲弊していた金田一耕助は、1ヶ月程、ゆっくりと静養できる辺鄙な田舎を探していた。金田一耕助の依頼に応じて、磯川警部は、岡山県と兵庫県の県境に位置する寒村、鬼首村(Onikobe)にある温泉宿である「亀の湯(Turtle Spring)」を紹介する。
金田一耕助自身は、鬼首村について、静かに休める場所だと単純に考えていたが、一方の磯川警部には、彼に鬼首村を勧めた理由は、他にあったのである。
「亀の湯」の関係者の系図 <筆者作成> |
静養のため、「亀の湯」に逗留し始めた金田一耕助は、
*青池リカ(Rika Aoike)- 「亀の湯」の女将(48歳)で、磯川警部の知り合い
*青池歌名雄(Kanao Aoike)- 青池 リカの長男(25歳)
*青池里子(Satoko Aoike)- 青池 リカの長女(22歳)
*お幹(O-Miki)- 「亀の湯」の女中 / 屋号:竿屋
*仁礼嘉平(Kahei Nire)- 仁礼家(The Nire Family - 屋号:秤屋)の先代の当主である仁礼仁平(Jinpei Nire)の長男で、現在の当主
*多々羅放庵(Hoan Tatara)- 庄屋の末裔
等と知り合いになる。
「由良家(屋号:枡屋)」の関係者の系図 <筆者作成> |
鬼首村の青年団副団長を務める青池歌名雄は、ハンサムで、歌が上手いため、村一番の人気者だった。
歌名雄は、由良家(The Yura Family - 屋号:枡屋)の先代の当主である由良卯太郎(Utaro Yura)の娘で、美人の由良泰子(Yasuko Yura - 22歳)と付き合っていたが、仁礼嘉平の娘で、歌名雄のことが好きな仁礼文子(Fumiko Nire - 22歳)は、その交際を快く思っていなかった。
また、仁礼嘉平は、「亀の湯」に足繁く通い、青池リカに対して、歌名雄と文子の縁談を持ち込んでいた。
「仁礼家(屋号:秤屋)」の関係者の系図 <筆者作成> |
金田一耕助の「亀の湯」滞在と符合するかのように、鬼首村出身で、「グラマーガール」と呼ばれる国民的人気歌手である大空ゆかり(Yukari Ozora)が、里帰りすると言う噂で、村中は持ち切りとなっていた。
大空ゆかりこと、別所千恵子(Chieko Bessho - 22歳)は、別所家(The Bessho Family - 屋号:錠前屋)は、別所春江(Harue Bessho)の娘で、父親は、鬼首村に輸出用のクリスマスモール作りの仕事を仲介していたセールスマンである恩田幾三(Ikuzo Onda)だった。
そのため、別所千恵子は、幼少時から、「詐欺師で、人殺しの娘」と呼ばれて、鬼首村の皆から迫害を受けていた。
そのため、別所千恵子は、16歳の時に、鬼首村を出て、芸能界へ入り、悔しさをバネに、今では、国民的人気歌手へと上り詰めていた。そして、今回、祖父母の別所蓼太(Ryota Bessho)/ 別所松子(Matsuko Bessho)のために、鬼首村に「ゆかり御殿」と呼ばれる大邸宅を建設した訳である。
「別所家(屋号:錠前屋)」の関係者の系図 <筆者作成> |
何故、大空ゆかりこと、別所千恵子は、「詐欺師で、人殺しの娘」と呼ばれているのか?
疑問に思う金田一耕助は、磯川警部から、23年前の1932年(昭和7年)に、鬼首村で起きて、未だに未解決のままとなっている殺人事件のことを聞かされる。
実は、磯川警部は、金田一耕助に、この未解決事件の調査を依頼したかったのである。
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