2024年7月21日日曜日

アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」<小説版(愛蔵版)>(Peril at End House by Agatha Christie )- その2


2024年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
愛蔵版(ハードカバー版)の裏表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. 

 「コーニッシュ リヴィエラ(Cornish Riviera)」と呼ばれるコンウォール州(Cornwall)のセントルー村(St. Loo - 架空の場所)に近いマジェスティックホテル(Majestic Hotel)において、エルキュール・ポワロと彼の相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)は、優雅な休暇を楽しんでいた。

一方、新聞では、世界一周飛行に挑戦中の飛行家であるマイケル・シートン大尉(Captain Michael Seton)が、太平洋上で行方不明になっていることを伝えていた。


テラスから庭へと通じる階段でポワロが足を踏み外したところ、丁度運良くそこに通りかかったニック・バックリー(Nick Buckley - 本名:マグダラ・バックリー(Magdala Buckley))に助けられる。

彼女は、ホテルからほんの目と鼻の先にある岬の突端に立つやや古びた屋敷エンドハウス(End House)の若き女主人であった。

また、彼女は、父のフィリップ(Philip)と母のエイミー(Amy)を早くに亡くしており、祖父のサー・ニコラス・バックリー(Sir Nicholas Buckley)に育てられた。そのため、祖父が「Old Nick」、そして、彼女自身が「Young Nick」と呼ばれ、彼女は、「ニック」と言う愛称を得たのである。


ポワロ達との会話を終えると、ホテルからほんの目と鼻の先にある岬の突端に立つやや古びた屋敷エンドハウス(End House)の若き女主人であるニック・バックリーは、それまでかぶっていた日除け帽子をテラスのテーブルの上に忘れたまま、立ち去った。

ポワロが残された帽子を手に取ってみると、帽子のつばには穴があいており、その上、近くには弾丸が落ちていたのである。と言うことは、先程、ニック・バックリーが蜂による一刺しだと思ったのは、実際には、銃による狙撃だったのだ!


先程の会話によると、ニック・バックリーは、「3日間に3回も命拾いをした。」とのことだった。


<1回目>

彼女が寝ているベッドの頭板の上に架かっている大きな油絵の額が、ある夜、額を支えている針金が切れて落下したが、ちょうど彼女が目を覚ましてベッドから離れていたため、間一髪のところだった。


<2回目>

彼女が海水浴のためにエンドハウスから小道を下っていた際、丸石が崖から転がり落ちてきて、もう少しで当たるところだった。


<3回目>

車のブレーキが突然効かなくなったが、近くの植え込みに突っ込むだけで、なんとか事無きを得た。


会話を終えて、彼女が立ち去った際に忘れていった日よけ帽子の広いつばには、穴が開いており、狙撃によるものだと、ポワロは見抜いた。つまり、ポワロが先程拾った弾丸は、何者かが彼女の命を狙って発射したことになる。更に言うと、彼女は、3回ではなく、4回も命を狙われたことになる。大胆にも、名探偵である自分の目前で、殺人を行おうとした犯人に、ポワロはプライドを大きく傷つけられたのだった。

そこで、ポワロは、ヘイスティングス大尉を伴って、ニック・バックリーが住むエンドハウスへと赴く。


ニック・バックリーには、一緒に食事をしたり、飲んだりする友人が、3人居た。


(1)フレデリカ・ライス(Frederica Rice - 愛称:フレディー(Freddie)):2、3年前に、アルコール中毒の夫と別れたものの、元夫は行方知らず。


(2)ジム・ラザラス(Jim Lazarus):ロンドンのボンドストリート(Bond Street → 2017年5月21日付ブログで紹介済)において、美術商(art dealer)を営む。


(3)ジョージ・チャレンジャー(George Challenger):英国海軍中佐(Royal Navy Commander)


ニック・バックリーは、彼女の取り巻きの友人から、何か恨まれているのだろうか?エンドハウスが多額の抵当に入っていることから、金銭面が動機とは思われなかった。現時点において、ニック・バックリーの命を付け狙う犯人の動機が、ポワロには、ハッキリとしなかった。


そのため、ポワロとしては、犯人の可能性がある人物を突き止めるまでの間、何としてでも、ニック・バックリーの命を守る必要性があった。

そこで、ポワロは、ニック・バックリーに対して、ヨークシャー州(Yorkshire)の牧師(clergyman)であるジャイルズ・バックリー(Giles Buckley)の娘で、彼女の従姉妹に該るマギー・バックリー(Maggie Buckley)を呼び寄せて、いつも彼女の側に居てもらうよう、説得した。


ところが、セントルー村で開催された花火の夜、ニック・バックリーがヨークシャー州から呼び寄せたマギー・バックリーが、何者かに殺害されてしまった。

事件当夜、マギー・バックリーは、ニック・バックリーの真っ赤なチャイナシルクのショールを借りていたため、ニック・バックリーと間違えられて、犯人に拳銃で撃たれたものと思われた。これで、ニック・バックリーは、謎の人物に5回も命を狙われて、5回とも、命拾いしたことになる。ただし、今回の5回目の場合、彼女の従姉妹であるマギー・バックリーが、彼女の代わりに、殺されてしまった訳である。


その翌日、世界一周飛行に挑戦中だった飛行家のマイケル・シートン大尉が、飛行中の墜落事故により、死亡したと言うニュースが報道される。

約1週間前に、マイケル・シートン大尉の叔父で、大富豪のサー・マイケル・シートン(Sir Michael Seton)が死去した結果、彼は、世界一周飛行に挑戦中に、莫大な遺産を相続することになっていたのである。

ニック・バックリーは、ポワロに対して、「自分とマイケル・シートン(大尉)は、密かに婚約していた。」と告白する。

また、マイケル・シートン大尉は、「自分に何かあった場合、マグダラ・バックリー(Magdala Buckley)に対して、自分の全財産を遺す」と言う遺言書を作成していたことが判明した。

と言うことは、世界一周飛行に挑戦中のマイケル・シートン大尉が亡くなった結果、マグダラ・バックリー(愛称:ニック・バックリー)に、巨万の富が転がり込んでいることになる訳だった。これが、ニック・バックリーが、何度も命を付け狙われる理由なのではないだろうか?


何度も、自分の目前で犯行を繰り返す殺人犯の正体を暴くべく、ポワロは灰色の脳細胞をフル回転させるのだった。



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