2024年7月4日木曜日

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 殺しの操り人形」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Instrument of Death by David Stuart Davies) - その4

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2019年に出版された
デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 殺しの操り人形」の表紙(部分)-
医者で、狡猾な殺人鬼であるグスタフ・カリガリが
自分の操り人形にするための暗示に使用する懐中時計が描かれている。


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)


英国の作家であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies:1946年ー)作「シャーロック・ホームズの更なる冒険(The further adventures of Sherlock Holmes)」(2019年)は、ドイツの映画監督であるロベルト・ヴィーネ(Rober Wiene:1873年ー1938年)が1919年に制作して、1920年に公開したサイレント映画「カリガリ博士(Das Cabinet des Doktor Caligari)」をベースにしていると思われる。

映画「カリガリ博士」の場合、精神に異常を来した医者であるカリガリ博士(Dr. Caligari)と彼の忠実な下僕かつ夢遊病患者であるチェザーレ(Cesare)の2人が、ドイツ山間部の架空の村で引き起こした連続殺人が語られている。

本作品の場合、幼少期より身体が非常に大きい上に、陰気でサディスティックな性格のグスタフ・カリガリ(Gustav Caligari)は、同世代の子供達を虐めたり、小動物(猫等)や虫(蜘蛛等)を殺したりして、楽しんでおり、人間の皮を被った「怪物」と既に化していた。その後、彼の家庭教師として雇われたハンス・ブルーナー(Hans Bruner)を通して、他人を操り人形のようにコントロールする考えに、次第に取り憑かれていく。そして、不治の病に罹り、床に就く家庭教師のハンス・ブルーナーの口を押さえて窒息させ、最初の殺人を犯したグスタフ・カリガリは、医者となった後、第2の殺人(老女)に失敗すると、プラハ(Prague)からロンドンへと逃れる。ロンドンのケンジントン地区(Kensington → 2023年12月12日 / 12月17日付ブログで紹介済)内に診療所を開いたグスタフ・カリガリは、バーモンジー(Bermondsey)の川の近くで見つけた浮浪者のロバート・ストラウス(Robert Straus - 身長180㎝)を薬でマインドコントロールして、自分の操り人形にすると、殺人を再開するのであった。

上記の通り、映画「カリガリ博士」に比べると、本作品のグスタフ・カリガリの場合、殺人鬼に至るまでの過程が、詳細に設定されている。


(2)物語の展開について ☆☆☆☆(4.0)


3人称文章によるグスタフ・カリガリ側の話とジョン・H・ワトスン記述によるシャーロック・ホームズ / ワトスン側の話の2つが交互に進んでいき、最終的に、グスタフ・カリガリとホームズが相見えることになる。

本作品の場合、他の作品に比べると、約240ページと少し短めであるが、2つの話が交互にテンポ良く展開して行くので、とても読みやすい。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆半(3.5)


ルビー盗難事件に関連して、サー・ジェフリー・ダムリー(Sir Jeffrey Damury)サー・ジェフリー・ダムリーの妻であるレディー・サラ(Lady Sarah)を、ロンドンにおける最初のターゲットとして、殺害することに成功したグスタフ・カリガリは、次のターゲットとして、サヴォイ劇場(Savoy Theatre → 2021年7月7日付ブログで紹介済)のオペラ「The Magic Rose」に出演しているルース・マーシャル(Ruth Marshall)に狙いを定める。

ルース・マーシャルの命を守るべく、ホームズとワトスンの2人は、グスタフ・カリガリを捕まえようとするが、ワトスンが

グスタフ・カリガリの手に落ちて、彼の操り人形となってしまう。

ホームズとしては、ルース・マーシャルだけではなく、ワトスンも、グスタフ・カリガリの魔の手から救い出すと言う重要な局面に立たされる。


(4)総合評価 ☆☆☆半(3.5)


本作品の場合、通常のホームズ作品とは異なり、ホームズの相手が医者のグスタフ・カリガリだと、最初から明確になっている上に、グスタフ・カリガリが、狡猾な殺人鬼として、捜査から免れるべく、ホームズとワトスンの2人を罠にかけようと計画する。

グスタフ・カリガリは、ホームズ最大の敵であるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)とは異なった相手として、ホームズとワトスンの2人に敵対する。

通常のホームズ作品とは違って、サスペンスに満ちた物語展開で、なかなか面白い。


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