2024年7月1日月曜日

ロジャー・スカーレット作「猫の足」(Cat’s Paw by Roger Scarlett)- その3

米国の Penzler Publishers 社から
American Mystery Classics シリーズの1冊として
2022年に出版された
ロジャー・スカーレット作「猫の足」の内扉


(2)「Part I : The Evidence」


物語は、1931年6月13日、大富豪のマーティン・グリーンノー(Martin Greenough)が住むボストンのフェンウェイ屋敷(Fenway estate)と呼ばれるゴシック建築の広大な邸宅から始まる。

マーティン・グリーンノーは、75歳の誕生日を迎えようとしていた。

マーティン・グリーンノーは、長い間、未亡人であるエディス・ワーデン(Mrs. Edith Warden - 40歳近い)と一緒に暮らしていたが、入籍するには至っていなかった。

そんな中、マーティン・グリーンノーは、自分の75歳の誕生日を祝うパーティーに、甥や姪を招いたのである。


<6月13日>

フランシス・グリーンノー(Francis Greenough)が到着。


<6月14日>

ハッチンスン・グリーンノー(Hutchinson Greenough)

アメリア・グリーンノー(Amelia Greenough - ハッチンスンの妻)

ジョージ・ピカリング(George Pickering)

の3人が到着。


<6月15日>

ブラックストーン・グリーンノー(Blackstone Greenough)

ステラ・アーウィン(Stella Irwin - フランシスの元恋人で、現在は、ブラックストーンの恋人)

の2人が到着。


マーティン・グリーンノーは、甥や姪に対して、生活には全く困らない程度に資金的な援助を行っていたが、彼らが独自に職を得て自活することを厳しく禁じていた。そうすることで、マーティン・グリーンノーは、甥や姪を完全に自分のコントロール下に置き、自分の意のままに操っていたのである。

甥や姪は、表面上、彼のことを「マット伯父(Cousin Matt)」と呼んで慕っていたが、実際には、自分達をコントロールに置いて、自由な生活をさせない伯父のことを苦々しく思っていた。その中で、姪のアン・ピカリング(Anne Pickering)だけは、公然と反旗を翻して、伯父の75歳の誕生日にも出席しないことを明確にしていた。


更に、アメリア・グリーンノーによる度重なる盗癖問題が表面化しており、夫のハッチンスン・グリーンノーとの間で、大きな火種を抱えていた。


米国の Penzler Publishers 社から
American Mystery Classics シリーズの1冊として
2022年に出版された
ロジャー・スカーレット作「猫の足」に付されている
大富豪のマーティン・グリーンノーが住むボストンのフェンウェイ屋敷の
2階見取り図

そして、マーティン・グリーンノーの75歳の誕生日である6月17日の夜、遂に事件が発生するのであった。


<6月17日>


*午後7時ー午後8時15分:

マーティン・グリーンノーの75歳の誕生日を祝うディナーパーティーが開催される。その席上、マーティン・グリーンノーは、明後日(6月19日)に、エディス・ワーデンと結婚することを正式に発表した。

マーティン・グリーンノーがエディス・ワーデンと結婚することで、彼の死後、彼の全財産はエディス・ワーデンの元へと行くことになり、甥と姪は、今まで我慢してきた代償として得られる筈だった遺産相続の権利を失うことになるのであった。


*午後8時15分ー午後9時半:

ディナーパーティー後、甥の4人(フランシス・グリーンノー /  ハッチンスン・グリーンノー / ジョージ・ピカリング / ブラックストーン・グリーンノー)は、ディナーの席で酒を飲み始める。一方、女性陣(エディス・ワーデン / アメリア・グリーンノー / ステラ・アーウィン)は、マーティン・グリーンノーに連れられて、図書室へと移動し、カードゲームに興じる。


*午後9時半:

マーティン・グリーンノーは、2階の自室へと退く。


*午後9時45分ー午後10時:

ハッチンスン・グリーンノーは、マーティン・グリーンノーに呼ばれて、2階へと上がり、15分後、戻って来る。


*午後10時15分ー午後11時:

ハッチンスン・グリーンノーを除く全員が庭へと出て、花火に興じる。ハッチンスン・グリーンノーは、2階の自室から、彼らの花火を見物していたものと思われる。

午後10時45分頃、邸宅の2階から、銃声らしき音が聞こえたが、庭で花火に興じていた人達は、気付かなかった。


*午後11時ー午後11時半:

庭での花火を終えた皆が図書室へ戻ると、そこには、アン・ピカリングが居た。


*午後11時半:

アン・ピカリングを含む皆が2階のマーティン・グリーンノーの自室を訪れると、マーティン・グリーンノーが殺されていることを発見。


果たして、マーティン・グリーンノーを殺害したのは、一体、誰なのか?

マーティン・グリーンノーがエディス・ワーデンと結婚することで、今まで我慢してきた代償として得られる筈だった遺産相続の権利を失うことになった甥と姪のうちの誰かなのか?


この謎に対して、休暇から戻って来たボストン(Boston)警察の犯罪捜査部(Bureau of Criminal Investigation)のノートン・ケイン警部(Inspector Norton Kane)が挑むのであった。


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