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英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている アガサ・クリスティー作「いち、にい、私の靴の留め金を締めて」の ペーパーバック版の表紙 - 壁紙のような背景が、留め金(バックル)付きの靴の形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1940年に発表した「いち、にい、私の靴の留め金を締めて(One, Two, Buckle My Shoe)」の場合、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)がクイーンシャーロットストリート58番地(58 Queen Charlotte Street → 2016年5月29日付ブログで紹介済)にある歯科医ヘンリー・モーリー(Henry Morley)の待合室に居るところから、物語が始まる。
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| エルキュール・ポワロは、 ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。 <筆者撮影> |
流石の名探偵ポワロであっても、半年に一回の定期検診のために、歯科医の待合室で診療を待つのは、自分の自尊心を大いに傷つけられるのであった。ようやく診療を終えて、建物の外に出たポワロは、そこでタクシーから降りて来た女性の患者とすれ違った際、彼女が落とした靴の留め金(バックル)を拾って渡した。
そして、フラットに戻ったポワロを待っていたのは、ついさっき自分を診療したモーリー歯科医が診療室で拳銃自殺をしたとのスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)からの連絡であった。
ポワロの後に、モーリー歯科医の待合室にやって来た患者は、以下の3名であることが判る。
(1)マーティン・アリステア・ブラント(Martin Alistair Blunt)/ 銀行頭取で、経済界の大立者
(2)アムバライオティス氏(Mr. Amberiotis)/ インドから帰国したばかりのギリシア人 → モーリー歯科医の患者で、元内務省官僚のレジナルド・バーンズ(Reginald Barnes)は、「アムバライオティスは、スパイである上に、恐喝者だ。」と、ポワロに告げる。
(3)メイベル・セインズベリー・シール(Mabelle Sainsbury Seale)/ アムバライオティス氏と同じく、インド帰りの元女優
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| サヴォイホテルの正面玄関 <筆者撮影> |
モーリー歯科医の死が自殺ではなく、他殺の可能性もあると考えて、捜査を開始したポワロであったが、その後、アムバライオティス氏が、宿泊先のサヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)において、歯科医が使用する局部麻酔剤の過剰投与により死亡しているのが発見される。
モーリー歯科医は、アムバライオティス氏の診療ミス(=注射する薬品量の間違い)を苦にして、拳銃自殺を遂げたのだろうか?
| ストランド通り(Strand → 2015年3月29日付ブログで紹介済)に面したサヴォイホテルの玄関上部 <筆者撮影> |
続いて、メイベル・セインズベリー・シールが行方不明となり、バタシーパーク地区(Battersea Park - ロンドンの特別区の一つであるワンズワース区(London Borough of Wandsworth)内に所在)にあるアルバート・チャップマン夫人(Mrs. Albert Chapman)という女性のフラットにおいて、彼女の死体が発見される、しかも、彼女の顔は見分けがつかない程の有り様だった。
チャップマン夫人がメイベル・セインズベリー・シールを殺害の上、逃亡したのだろうか?ところが、モーリー歯科医の診療記録によると、発見された死体は、メイベル・セインズベリー・シールではなく、チャップマン夫人であることが判明する。
ポワロが診療を終えて去った後、モーリー歯科医の診療室において、一体何があったのであろうか?ポワロの灰色の脳細胞がフル回転し始める。
(72)留め金(バックル)付きの靴(buckled shoe)
ちょうどタクシーが一台、家の前で停まって、中から、片足がすっとあらわれるところだった。ポアロは物好きな興味でその足を観察した。
形のいい踝、上等な靴下、悪い足ではない。しかし、彼はその靴が気に入らなかった。新しいエナメル靴に、ギラギラ光る大きなバックル。彼は首をふった。
不要だ - まるで田舎風だ!
婦人はタクシーからおりかけたが、そのとき、残った片方の足をドアにひっかけ他ので、バックルがちぎれて舗道の上にチャリンと落ちた。
(早川書房クリスティー文庫19 - 加島 祥造 訳)
前述の通り、ポワロは、その婦人が落としたバックルを拾って、彼女に渡した。
その婦人は、インド帰りの元女優であるメイベル・セインズベリー・シールと思われたが、行方不明になった彼女は、バタシーパーク地区にあるアルバート・チャップマン夫人という女性のフラットで、死体となって発見される。
彼女の死体は、既に1ヶ月以上経過している上に、顔が判別できない程にメチャメチャにされていたのである。
ポワロは、彼女の死体の足元を見たところ、彼女が履いていたのは、飾りの多いバックルが付いた履き古した靴だった。また、バックルは、不器用に手で縫い付けられている上に、どこもへこんでいなかった。
ポワロが注目したように、バックル付きの靴は、物語上、非常に重要な役割を果たすのであった。








































