2026年3月8日日曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その24B

英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている
アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ」の
ペーパーバック版の表紙 -

トランプの柄の表紙が、スペードの形に切り取られている。


ある美術展でエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)に出会った謎多き裕福な蒐集家であるシャイタナ氏(Mr. Shaitana)は、犯罪関連のコレクションをしており、「最高のものだけを蒐集している。」と自慢した。「まだ告発されていない殺人犯を招いた上でのパーティーだ。」と言うシャイタナ氏の趣旨に興味を覚えたポワロは、ブリッジパーティーへの招待を受けるのだった。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
1 ♠️「エルキュール・ポワロ」


シャイタナ氏の自宅で行われたパーティーに招待されたのは、以下の8人だった。


< 探偵組 >

*エルキュール・ポワロ

*バトル警視(Superintendent Battle)- スコットランドヤードの警察官


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
3 ♠️「バトル警視」


*ジョン・レイス大佐(Colonel John Race)- 英国秘密情報局の情報部員


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
4 ♠️「ジョン・レイス大佐」


*アリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)- 女流推理作家


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
7 ♠️アリアドニ・オリヴァー夫人


< 容疑者組 >

*ジェフリー・ロバーツ医師(Dr. Geoffrey Roberts)- 成功をおさめた中年の医師

*ロリマー夫人(Mrs. Lorrimer)- ブリッジ好きな初老の女性

*ジョン・デスパード少佐(Major John Despard)- 未開地を探索する探検家

*アン・メレディス(Anne Meredith)- 内気で若く麗しい女性


食事の最中、シャイタナ氏は、招待した4人の容疑者達に対して、言われた本人にしか判らない謎めいた告発を行い、他の出席者達を困惑させる。

そして、食事が済むと、容疑者組の4人は、メインルーム(客間)において、また、探偵組の4人は、別の部屋で、ブリッジを始めることとなった。シャイタナ氏は、メインルームの暖炉の側に置かれた椅子を自分の居場所として、ブリッジへの参加を辞退する。

ブリッジが終わり、ポワロとレイス大佐が、シャイタナ氏に対して、暇を告げようとした際、彼らは、暖炉の側に置かれた椅子に座ったままの状態で、シャイタナ氏が彼の蒐集品である宝石で装飾された短剣で胸を刺されて死んでいるのを発見する。

ブリッジの最中、容疑者組の各人は、それぞれ休みの時間を利用して、メインルーム内を歩き回っていたため、誰もがシャイタナ氏を刺殺する時間があり、犯人を特定することは非常に困難だった。


果たして、シャイタナ氏が謎めいた告発をした対象の人物は、誰だったのか?そして、その人物が、シャイタナ氏を刺殺したのだろうか?

探偵組の4人は、独自の捜査を開始する。


探偵組の4人による独自の捜査の結果、以下の事実が判明。


*ジェフリー・ロバーツ医師:彼の患者の夫が、彼の不適切な医療行為について告発した直後に、炭疽菌により死亡。

*ロリマー夫人:彼女の夫は20年前に亡くなっていたが、それにかかる内容はほとんど判っていない。

*ジョン・デスパード少佐:彼は、アマゾン川流域を案内した植物学者を銃で撃ち殺したと噂されていた。動機は、植物学者の妻をめぐる諍い、とのこと。

*アン・メレディス:彼女のフラットメイトであるローダ・ドーズ(Rhoda Dawes)によると、アン・メレディスがコンパニオンを務めていた雇い主の老女が、毒を無花果のシロップと間違えて飲んでしまい、死亡すると言う事件が以前に発生。ただし、アン・メレディスは、この事件のことをひた隠しにしている、とのこと。


名探偵、警察官や情報部員等が同席しているパーティーの最中、大胆にも行われた犯行を解き明かすべく、ポワロの灰色の脳細胞が、ブリッジの点数表の内容にその糸口を見いだすのであった。


(51)宝石で装飾された短剣(jewelled stiletto dagger)



シャイタナ氏は、彼の自宅のメインルーム(客間)において、暖炉の側に置かれた椅子に座り、容疑者組の4人によるブリッジを眺めている最中、何者かによって、彼の蒐集品である宝石で装飾された短剣で胸を刺され、殺害される。


(52)トランプの城(playing cards)



シャイタナ氏は、探偵組の4人と容疑者組の4人を自宅に招いた食事の後に行われたブリッジの最中に、暖炉の側に置かれた椅子に座ったままの状態で、何者かにより、彼の蒐集品である宝石で装飾された短剣で胸を刺され、殺害される。

ポワロは、残されたブリッジの点数表の内容を糸口にして、シャイタナ氏を刺殺した犯人を、4人の容疑者組の中から指摘する。


2026年3月7日土曜日

綾辻行人作「時計館の殺人」<小説版>(The Clock House Murders by Yukito Ayatsuji ) - その3

英国のプーシキン出版から2025年に刊行されている
Pushkin Vertigo シリーズの一つである
綾辻行人作「時計館の殺人」の英訳版内に付されている
「時計館」新館(New Wing)の見取り図


1989年7月30日(日)の午後、建築家の中村青司(Seiji Nakamura)が設計した「時計館(Clock House)」(神奈川県(Kanagawa Prefecture)鎌倉市(Kamakura City))へ取材に出かけるメンバー達は、JR 大船駅に集合し、3台の車(小早川 茂郎(後述)の車+タクシー2台)に分乗の上、時計館へと向かった。


大船観音寺にある大船観音像
<筆者撮影>


なお、JR 大船駅に集合したメンバーは、以下の通り。


*小早川 茂郎(Shigeo Kobayakawa - 44歳 / 大手出版社である稀譚社(Kitansha)が発行する超常現象を取り扱うオカルト雑誌「CHAOS」(月刊紙)の副編集長(Deputy editor-in-chief)で、W大学のOB)

*江南 孝明(Takaaki Kawaminami - 24歳 / 「CHAOS」の新米編集者)

*内海 篤志(Atsushi Utsumi - 29歳 / 稀譚社写真部のカメラマン)


*瓜生 民佐男(Misao Uryu - 20歳 / W大学3年生で、超常現象研究会会長)

*樫 早希子(Sakiko Katagi - 20歳 / W大学3年生で、超常現象研究会の会員)

*河原崎 潤一(Junichi Kawarazaki - 21歳 / W大学3年生で、超常現象研究会の会員)

*渡辺 涼介(Ryosuke Watanabe - 20歳 / W大学2年生で、超常現象研究会の会員)

*新見 こずえ(Kozue Niimi - 19歳 / W大学2年生で、超常現象研究会の会員)


当初の予定では、新見 こずえではなく、福西 涼太(Ryota Fukunishi - 21歳 / W大学3年生で、超常現象研究会の会員)が参加する筈だったが、2日前に起きた親戚の不幸(従兄弟のオートバイ事故死)のため、取材に参加できなくなった関係上、急遽、新見 こずえが、彼の代わりに参加することになったのである。


彼らが目指す時計館は、白山神社(Hakusan Shrine)や散在ガ池(Sanzaigaike)等が所在する今泉地区(Imaizumi area)がある鎌倉市北東部にあった。

時計館に到着して、建物を見上げた江南 孝明は、驚いた。彼が見上げた時計塔の文字盤には、時間と分を示す2本の針が存在していなかったからである。


そんな江南 孝明を初めとする取材メンバー達を、時計館の現在の管理者である伊波 紗代子(Sayoko Inami - 46歳)が出迎えた。

彼女によると、今日から3日間、時計館に泊り込むメンバーの一人である光明寺 美琴(Mikoto Komyoji - 32歳 / 霊能者(Spirit medium)で、江南 孝明の友人である島田潔(Kiyoshi Shimada - 40歳)が住んでいるマンションの隣人)は、既に到着済、とのことだった。


その頃、江南 孝明との2週間前の約束通り、島田潔は、自分の車で時計館へと急いでいた。


大分県(Oita Prefecture)O市のK大学推理小説研究会の元会員である江南孝明と島田潔の2人は、「十角館の殺人(The Decagon House Murders → 2023年2月21日 / 2月25日 / 3月9日 / 3月18日付ブログで紹介済)」を通じて、知り合いになっていた。


英国のプーシキン出版から2020年に刊行されている
Pushkin Vertigo シリーズの一つである
綾辻行人作「十角館の殺人」の英訳版の表紙
(Cover design & illustration by Jo Walker)


「十角館の殺人」

*事件発生時期:1985年9月 / 1986年3月

*事件発生場所:K大学の推理小説研究会(Mystery Club)の一行が合宿に訪れたS半島のJ岬の沖合いに浮かぶ角島(Tsunojima)と呼ばれる無人の孤島に建つ十角館(Decagon House)- 建築家の中村青司(Seiji Nakamura)が設計した十角形という奇妙なデザインの建物


上記の事件後、江南孝明は、大手出版社である稀譚社に入り、新米の編集者となっていた。一方、島田潔は、「鹿谷門実(Kadomi Shishiya)」と言うペンネームで「迷路館の殺人(The Labyrinth House Murders → 2024年12月19日 / 2025年1月9日 / 1月18日 / 3月18日付ブログで紹介済)」を出版して、駆け出しの推理作家としてデビューを飾っていた。


英国のプーシキン出版から2024年に刊行されている
Pushkin Vertigo シリーズの一つである
綾辻行人作「迷路館の殺人」の英訳版の表紙
(Cover design by Jo Walker /
Cover image by Shutterstock)


親戚の不幸のため、時計館の取材メンバーを辞退した渡辺 涼介であったが、ある記憶が気になっており、島田潔と同じように、時計館へと向かっていた。


2026年3月6日金曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その24A

英国の HarperCollinsPublishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ」ペーパーバック版の表紙 -
謎多き裕福な蒐集家であるシャイタナ氏が、
探偵組4人と容疑者組4人の合計8人を
自宅に招いて開催したブリッジパーティーが、表紙に描かれている。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている「エルキュール・ポワロの世界(The World of Hercule Poirot)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているエルキュール・ポワロシリーズの登場人物や各作品に関連した112個の手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

前回に引き続き、各作品に出てくる登場人物、建物や手掛かり等が、その対象となる。


ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の完成形
<筆者撮影>


(51)宝石で装飾された短剣(jewelled stiletto dagger)



ジグソーパズル中央に立つエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)の右斜め後ろの位置に、スコットランドヤードのジェイムズ・ハロルド・ジャップ警部(Inspector James Harold Japp / 後に主任警部(Chief Inspector)に昇進 → 2025年10月24日付ブログで紹介済)が立っている。ジャップ警部の左足の先にある床の上に、宝石で装飾された短剣が落ちている。


(52)トランプの城(playing cards)



ジグソーパズル中央に立つエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)から右真横へ移動した画面右端近くにある柱の側に、彼の執事であるジョージ(George → 2025年10月23日付ブログで紹介済)が立っている。ポワロの執事ジョージの左足の先にある床の上に、トランプの城が築かれている。


これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1936年に発表した「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」である。

「ひらいたトランプ」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第20作目に、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては、第13作目に該っている。


アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ」は、エルキュール・ポワロが、美術展で出会った謎多き裕福な蒐集家であるシャイタナ氏(Mr. Shaitana)から、ブリッジパーティーへの招待を受けるところから、その物語が始まる。

シャイタナ氏は、犯罪関連のコレクションをしており、「最高のものだけを蒐集している。」と、ポワロに対して自慢した。「まだ告発されていない殺人犯を招いた上でのパーティーだ。」と言うシャイタナ氏の趣旨に興味を覚えたポワロは、パーティーへの参加を決めるのであった。


シャイタナ氏の自宅で行われたパーティーに招待されたのは、以下の8人だった。


(1)探偵組

*エルキュール・ポワロ

*バトル警視(Superintendent Battle)- スコットランドヤードの警察官

*ジョン・レイス大佐(Colonel John Race)- 英国秘密情報局の情報部員

*アリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)- 女流推理作家


(2)容疑者組

*ジェフリー・ロバーツ医師(Dr. Geoffrey Roberts)- 成功をおさめた中年の医師

*ロリマー夫人(Mrs. Lorrimer)- ブリッジ好きな初老の女性

*ジョン・デスパード少佐(Major John Despard)- 未開地を探索する探検家

*アン・メレディス(Anne Meredith)- 内気で若く麗しい女性


アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ」の場合、エルキュール・ポワロに加えて、


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
1 ♠️「エルキュール・ポワロ」


< バトル警視 >


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
3 ♠️「バトル警視」


彼は、スコットランドヤードの警視で、主に政治に関係する重要な問題を取り扱う。大柄の体格、彫りが深くて無表情な顔、そして、ポワロに匹敵する口髭が特徴。

バトル警視には、妻のメアリー(Mary Battle)との間に、5人の子供が居て、末娘の名前は、シルヴィア(Sylvia Battle)である。また、甥には、バトル警視と同じく、スコットランドヤードに所属するジェイムズ・リーチ警部(Inspector James Leach)が居る。


登場作品

(長編)

*「チムニーズ館の秘密(The Secret of Chimneys)」(1925年)

*「七つの時計(The Seven Dials Mystery)」(1929年)

*「ひらいたトランプ」(1936年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「殺人は容易だ(Murder is Easy)」(1939年)

*「ゼロ時間へ(Towards Zero)」(1944年)


< ジョン・レイス大佐 >


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
4 ♠️「ジョン・レイス大佐」


彼は、元陸軍情報部員で、現在は、英国政府の情報機関に勤務。力強く、寡黙な人物である。


登場作品

<長編>

*「茶色の服を着た男(The Man in the Brown Suit)」(1924年)

*「ひらいたトランプ」(1936年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「ナイルに死す(Death on the Nile)」(1937年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「忘られぬ死(Sparkling Cyanide)」(1945年)


< アリアドニ・オリヴァー夫人 >


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている
「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である
7 ♠️アリアドニ・オリヴァー夫人


アリアドニ・オリヴァー夫人は、フィンランド人探偵(Sven Hjerson)を主人公とするシリーズで有名な女性推理作家で、アガサ・クリスティー自身が彼女のモデルと言われている。

彼女は、リンゴが大好きで、いつも齧っているが、ある事件を契機に、リンゴを食べられなくなってしまう。


登場作品

(長編)

*「ひらいたトランプ」(1936年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「マギンティー夫人は死んだ(Mrs. McGinty’s Dead)」(1952年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「蒼ざめた馬(The Pale Horse)」(1961年)- ノンシリーズ

*「第三の女(The Third Girl)」(1966年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「象は忘れない(Elephants Can Remember)」(1972年)- エルキュール・ポワロシリーズ

(短編集)

*「パーカー・パイン登場(Parker Pyne Investigates)」(1934年)- パーカー・パインシリーズ

 ・「退屈している軍人の事件(The Case of the Discontented Solider)」→ 当作品が、アリアドニ・オリヴァー夫人の初登場作品に該る。


と言った他の作品に登場する人物が共演する内容となっている。


2026年3月5日木曜日

ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に座る女」(A Lady Seated at the Virginal by Johannes Vermeer)

ナショナルギャラリー内に所蔵 / 展示されている
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に座る女」
(1671年ー1674年)<その1>
51.5 cm x 45.6 cm / Oil on canvas
<筆者撮影>

ハムステッドヒース(Hampstead Heath → 2015年4月25日付ブログで紹介済)内に建つ「白亜の館」であるケンウッドハウス(Kenwood House → 2018年9月23日付ブログで紹介済)に所蔵 / 展示されているヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer:1632年?ー1675年? / 本名:ヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト(Jan van der Meer van Delft))作の絵画「ギターを弾く女(The Guitar Player → 2026年2月24日 / 3月1日付ブログで紹介済)」の他に、ヨハネス・フェルメール作の絵画2点が、ナショナルギャラリー(National Gallery)に所蔵 / 展示されている。

トラファルガースクエア(Trafalgar Square)に面したナショナルギャラリー -
画面中央奥に見える
セインズベリーウィング(Sainsbury Wing)が、現在、
ナショナルギャラリーへの入口として使用されている。

<筆者撮影>

今回は、「ヴァージナルの前に立つ女(A Lady Standing at the Virginal → 2026年3月4日付ブログで紹介済)」に続き、「ヴァージナルの前に座る女(A Lady Seated at the Virginal」について、紹介したい。


「ヴァージナルの前に座る女」も、「ギターを弾く女」や「ヴァージナルの前に立つ女」と同じく、ヨハネス・フェルメール晩年(1671年ー1674年)の作品である。

「ヴァージナルの前に立つ女」の場合、立っている女性の黄色いスカートの折り目が非常に立体的で、明暗もハッキリしているのに対して、「ヴァージナルの前に座る女」の場合、座っている女性の青いスカートは質感に乏しく、簡略化されている。

また、「ヴァージナルの前に立つ女」の後ろの壁に掛かっている絵画の額縁に比べると、「ヴァージナルの前に座る女」の後ろの壁に掛かっている絵画の額縁も、簡略されている。

両者のドレスの質感の違いや後ろの壁に掛かっている絵画の額縁の簡略化から、「ヴァージナルの前に立つ女」対比、「ヴァージナルの前に座る女」におけるヨハネス・フェルメールの力が衰えたと評されており、そのため、「ヴァージナルの前に座る女」は、ヨハネス・フェルメールが描いたとされる絵画の最後の作品ではないかと考えられている。


ヴァージナル(virginal)と言うのは、チェンバロに似た楽器で、当時のオランダの家庭にはよく置かれていたものと思われる。


ナショナルギャラリー内に所蔵 / 展示されている
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に立つ女」(左側の絵画)と
「ヴァージナルの前に座る女」(右側の絵画)
<筆者撮影>


ヴァージナルの前に座る女性の後ろの壁に掛けられている画中画は、オランダの画家で、ユトレヒト・カラヴァッジョ派でも知られるディルク・ファン・バビューレン(Dirck Jaspersz van Baburen:1595年ー1624年)作「取り持ち女(The Procuress / 娼婦と客の間を仲介する女)」である。

元ワシントンナショナルギャラリー学芸員のアーサー・K・ウィーロック・ジュニア(Arthur K. Wheelock Jr.:1943年ー)は、「女性が弾いているヴァージナルと左側に置かれているヴィオラ・ダ・ガンバが「調和」や「愛」を意味しているので、二つの対立する価値観が描かれている。つまり、売春が象徴する不浄な愛と理想的な愛の二者択一を見る者に対して問うている。」と解釈している。 


ナショナルギャラリー内に所蔵 / 展示されている
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に座る女」
(1671年ー1674年)<その2>
51.5 cm x 45.6 cm / Oil on canvas
<筆者撮影>


「ヴァージナルの前に座る女」は、「ヴァージナルの前に立つ女」と一緒に、当初、アントウェルペンのデュアルトの元にあったようで、その後、アムステルダムで競売にかけられ、流転の末にフランス人のテオフィル・トレ=ビュルガー(Théophile Thoré-Bürger:1807年ー1869年)によって所有された。

彼は、美術ジャーナリストである「テオフィル・トレ」と美術史家である「ウィリアム・ビュルガー」と言う2つの顔を持ち、画商を生業としており、ヨハネス・フェルメール作品を再発見した人物として知られている。

彼の死後、競売にかけられて、英国の画商が買い、英国人(個人)の所有となり、ナショナルギャラリーに寄贈され、現在に至っている。


2026年3月4日水曜日

ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に立つ女」(A Lady Standing at the Virginal by Johannes Vermeer)

ナショナルギャラリー内に所蔵 / 展示されている
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に立つ女」
(1671年ー1674年)<その1>
51.8 cm x 45.2 cm / Oil on canvas
<筆者撮影>

ハムステッドヒース(Hampstead Heath → 2015年4月25日付ブログで紹介済)内に建つ「白亜の館」であるケンウッドハウス(Kenwood House → 2018年9月23日付ブログで紹介済)に所蔵 / 展示されているヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer:1632年?ー1675年? / 本名:ヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト(Jan van der Meer van Delft))作の絵画「ギターを弾く女(The Guitar Player → 2026年2月24日 / 3月1日付ブログで紹介済)」の他に、ヨハネス・フェルメール作の絵画2点が、ナショナルギャラリー(National Gallery)に所蔵 / 展示されている。

トラファルガースクエア(Trafalgar Square)に面したナショナルギャラリー
<筆者撮影>

今回は、「ヴァージナルの前に立つ女(A Lady Standing at the Virginal)」について、紹介したい。


「ヴァージナルの前に立つ女」も、「ギターを弾く女」と同じく、ヨハネス・フェルメール晩年(1671年ー1674年)の作品である。


多くのヨハネス・フェルメール作品のように、室内に女性が一人で立っていて、左手の窓から光が射していると言う彼独特の構図ではあるが、他の作品と異なるのは、


(1)左手の窓から射している光に対して、女性が背を向けていること

(2)左手の窓から射している光が強いため、画面全体が明るいこと


が挙げられる。


ヴァージナル(virginal)と言うのは、チェンバロに似た楽器で、当時のオランダの家庭にはよく置かれていたものと思われる。


ナショナルギャラリー内に所蔵 / 展示されている
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に立つ女」(左側の絵画)と
「ヴァージナルの前に座る女」(右側の絵画)
<筆者撮影>


女性の後ろの壁に掛けられている画中画に描かれている「キューピッド」は、左手に何も記されていないカードを掲げている。

この絵は、「愛のエンブレム集」(絵画に描かれている図像がどのような意味を有しているのかを解説した寓意図像解説書)に出てくる「1」と言う数字が描かれたカードを掲げているキューピッドを下敷きに、ヨハネス・フェルメールは描いたものと考えられている。

識者によると、「愛は一人に捧げてこそ」と言う意味で、「ヴァージナルの前に立つ女」の場合、キューピッドが掲げているカードに数字が入っていないのは、「1が描かれていると、寓意があまりにも明確で、作品の外観を損なうから。」と推測されている。


また、壁に掛かっている風景画とヴァージナルの蓋に描かれている風景画に関して、元ワシントンナショナルギャラリー学芸員のアーサー・K・ウィーロック・ジュニア(Arthur K. Wheelock Jr.:1943年ー)は、両方とも自然の美しさで女性の純潔を表現したものと考えている。

一方、元メトロポリタン美術館学芸員のウォルター・リトケ(Walter Liedtke:1945年ー2015年)は、岐路に立つヘラクレスと言う有名な主題(岩山:美徳 / なだらかな道:悪徳)を引き合いに出して、岩山の風景画(ヴァージナルの蓋)と牧歌的な風景画(壁)は、女性が美徳と快楽のどちらを選択するのかを突き付けられている比喩だと解釈している。


ナショナルギャラリー内に所蔵 / 展示されている
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に立つ女」
(1671年ー1674年)<その2>
51.8 cm x 45.2 cm / Oil on canvas
<筆者撮影>


「ヴァージナルの前に立つ女」は、次回に紹介する「ヴァージナルの前に座る女(A Lady Seated at the Virginal)」と一緒に、当初、アントウェルペンのデュアルトの元にあったようで、その後、アムステルダムで競売にかけられ、流転の末にフランス人のテオフィル・トレ=ビュルガー(Théophile Thoré-Bürger:1807年ー1869年)によって所有された。

彼は、美術ジャーナリストである「テオフィル・トレ」と美術史家である「ウィリアム・ビュルガー」と言う2つの顔を持ち、画商を生業としており、ヨハネス・フェルメール作品を再発見した人物として知られている。

彼の死後、競売にかけられて、英国の画商が買い、ナショナルギャラリーが1892年に同作品を購入して、現在に至っている。


2026年3月3日火曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その23B

英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている
アガサ・クリスティー作「メソポタミアの殺人」の
ペーパーバック版の表紙 -

中東に広がる砂漠の表紙が、

遺跡を発掘するのに使用されるスコップの形に切り取られている。


その後も、ルイーズ・ボスナー(Louise Bosner)が新しい男性と親しくなる度に、夫のフレデリック・ボスナー(Frederick Bosner)の名前で、脅迫状が舞い込んだ。ところが、ルイーズが米国人考古学者のエリック・ライドナー博士(Dr. Eric Leidner)と出会って結婚するまでの間、脅迫状は届かなかった。

しかしながら、二人の結婚後、夫のフレデリックの名前で、「命令に背いたお前を殺す。」と書かれた脅迫状が再び届き、その直後、ルイーズとエリックの二人は、自宅において、危うくガス中毒で殺されかけたのである。

そのため、二人は、イラクで発掘調査をする時以外も、海外で暮らし始めると、それから2年間、脅迫状はぱたりと止んだ。


しかし、今年の発掘調査が始まると、3週間前に、「お前の命は、風前の灯だ。」と、そして、1週間前には、「俺は、遂にやって来たぞ。」と書かれた脅迫状がまた届いたため、ルイーズは、恐怖に怯えていたのである。

ただ、脅迫状に書かれた筆跡が、ルイーズのものによく似ていたため、夫のエリック・ライドナー博士と英国人看護婦で、ルイーズの付き添いとして雇われたエイミー・レザラン(Amy Leatheran)の二人は、ルイーズが自分で自分宛に脅迫状を書いているのではないかと疑う。


翌日の午後、昼寝の床に就いたルイーズが自室の床の上で死んでいるのを、夫のエリック・ライドナー博士が発見した。何か重いものによる右のこめかみへの一撃が、彼女の死因だった。ところが、ルイーズの部屋の窓は、内側から鍵がかかっている上に、室内から凶器らしきものは、全く見つからなかった。


事件発生当時、ルイーズの部屋の前の中庭では、現地の少年が発掘された土器を洗っており、彼女の部屋には、誰も出入りしなかったと証言する。更に、中庭へと通じる発掘調査隊宿舎の入口には、現地雇いの使用人達が集まって、雑談に興じており、見知らぬ外部の人間が宿舎内へと侵入することは、不可能だった。

つまり、ルイーズを殺害した犯人は、発掘調査隊のメンバーの中に居ると思われた。


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


折しも、シリアからバグダッドへと向かう途中、この辺りを通りかかったエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)は、自分達の手には負えないと判断した地元の警察署長から要請され、事件の捜査を引き受けるのであった。


(48)遺跡の発掘現場(archaeological dig)



米国人考古学者のエリック・ライドナー博士は、ピッツタウン大学イラク調査隊のメンバー達と一緒に、発掘調査隊を組成し、古代メソポタミアの地、チグリス河岸にあるテル・ヤリミヤ(Tell Yarimjah)遺跡において、発掘調査を進めていた。

そして、発掘調査隊の宿舎内において、エリック・ライドナー博士の妻であるルイーズ・ライドナーが、密室状態の自室の床の上で死んでいるのが発見される。


(49)黄金の杯(gold cup)



黄金の杯は、テル・ヤリミヤ遺跡から発掘された調度品の一つである。


(50)石臼 (stone quern)



昼寝の床に就いたルイーズ・ライドナーが自室の床の上で死んでいるのが、夫のエリック・ライドナー博士によって発見される。何か重いものによる右のこめかみへの一撃が、彼女の死因であった。

地元の警察署長からの要請に基づき、事件の捜査を引き受けたエルキュール・ポワロは、石臼 が凶器だったことを見抜く。