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英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている アガサ・クリスティー作中編集「厩舎街の殺人」の ペーパーバック版の表紙 - ガイ・フォークス ナイトに該る11月5日、 ロンドンの夜空を照らす花火を背景にした表紙が、 アタッシュケースの形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1937年に発表した中編集「厩舎街の殺人(Murder in the Mews)」には、以下の4編が収録されている。
なお、中編集「厩舎街の殺人」の米国版のタイトルは、「死人の鏡(Dead Man’s Mirror)」に変更された上、「謎の盗難事件」は含まれていないため、収録作品は3編のみである。
*「厩舎街の殺人(Murder in the Mews)」(1936年)
| 地下鉄チャリングクロス駅(Charing Cross Tube Station)内にある ジュビリーライン(Jubilee Line)のプラットフォームの壁に描かれている 「火薬陰謀事件」の主なメンバー達 <筆者撮影> |
| ロンドンの秋深まる夜空を明るく彩るガイ・フォークス ナイトの打ち上げ花火 <筆者撮影> |
ガイ・フォークス ナイト(Guy Fawkes Night → 2016年11月5日付ブログで紹介済)に該る11月5日、打ち上げられる花火がロンドンの夜空を照らす中、物語が始まる。
夕食を終えて、静かな脇道のバーズリーガーデンミューズ(Bardsley Garden Mews)を歩くスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp → 2025年10月24日付ブログで紹介済)は、隣りを歩くエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)に向かって、次のように話しかける。「殺人を行うには、うってつけの晩だ。今夜なら、たとえピストルを撃ったとしても、誰にも聞こえやしない。」と...
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| エルキュール・ポワロは、 ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。 <筆者撮影> |
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| ジェイムズ・ハロルド・ジャップ警部(後に、主任警部)は、 ジグソーパズル中央に立つエルキュール・ポワロの右斜め後ろの位置に立っている。 <筆者撮影> |
全くの偶然ではあるが、彼らが歩いていたバーズリーガーデンミューズにおいて、事件が発生する。若い未亡人であるバーバラ・アレン夫人(Mrs. Barbara Allen)が拳銃自殺をしたのである。しかし、彼女には自殺する理由が見当たらない上に、現場には自殺と断定するには疑わしい点が多かった。何故ならば、ピストルは彼女の右手の中にあったものの、握られていた訳ではなかった。不自然なことに、ピストルの弾丸は、彼女の頭の右側からではなく、左側から入っていたのである。つまり、何者かが彼女を殺害した後で、自殺に見せかけようとしたのだ!これを他殺と考えたジャップ主任警部は、ポワロに事件の捜査協力を依頼する。
*「謎の盗難事件(The Incredible Theft)」(1937年)
大土木建築会社の元社長で、現在は英国兵器省の初代長官であるメイフィールド卿(Lord Mayfield)の屋敷でパーティーが開催され、
サー・ジョージ・キャリントン(Sir George Carrington - 英国空軍中将(Air Marshall))
レディー・ジュリア・キャリントン(Lady Julia Carrington - サー・ジョージ・キャリントンの妻)
レジー・キャリントン(Reggie Carrington - サー・ジョージ・キャリントンの息子)
ヴァンダリン夫人(Mrs. Vanderlyn - 米国人で、3回の結婚歴)
マキャッタ夫人(Mrs. Macatta - 英国下院議員)
カーライル氏(Mr. Carlile - メイフィールド卿の秘書)
が夕食会に参加した。
夕食会が終わり、メイフィールド卿とサー・ジョージ・キャリントンの2人になった際、彼らは新型爆撃機の設計図を使って、スパイと疑われるヴァンダリン夫人を罠に嵌める計画を立てる。
彼ら2人以外の招待客が寝静まった後、メイフィールド卿は、秘書のカーライルに対して、新型爆撃機の設計図を金庫から取り出しておくように指示したが、メイフィールド卿が確認すると、秘書のカーライルが「ここに置きました。」と言う机の上から、肝心な新型爆撃機の設計図がなくなっていたのである。
事態を恐れたメイフィールド卿は、直ぐにエルキュール・ポワロに助けを求めることに決めた。
*「死人の鏡(Dead Man’s Mirror)」(1937年)
1936年9月24日、エルキュール・ポワロは、ウェストシャー州(Westshire)ハムバラ セントメアリー(Hamborough St. Mary)のハムバラ荘(Hamborough Close)に住むサー・ジャーヴァス・フランシス・ザヴィア(Sir grease Francis Xavier - 本名:ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴア(Gervase Chevenix-Gore))から電報を受け取る。極秘の相談をしたい、とのことだった。興味を持ったポワロは、セントパンクラス駅(St. Pancras Station)発午後4時半の一等車に乗り、現地へと向かう。
ポワロは、ロンドンを出る前に、サタースウェイト氏(Mr. Satterthwaite)に会い、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアに関する情報収集を行なっている。
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| 英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に出ている 「アガサ・クリスティーのトランプ」の1枚である 2 ♠️「サタースウェイト氏」 |
午後8時過ぎに駅に着き、そこから出迎えの車に乗り、屋敷に到着したポワロであったが、パーティーの最中で、シェヴニックス=ゴア夫人(Lady Chevenix-Gore - ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアの妻)やルース・シェヴニックス=ゴア(Ruth Chevenix-Gore - ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアの娘)に出迎えられる。ただし、彼女たちは、ポワロが訪れることを知らなかった。
銅鑼が鳴り、執事が食事の用意が整ったことを告げたものの、いつも時間に正確な筈のジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアが、いつまで待っても、姿を見せなかった。執事によると、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアは、午後8時5分前に階下に降りて来て、書斎に入った、とのこと。また、銅鑼は書斎のドアの直ぐ外にあるため、銅鑼の音が聞こえないことはありえなかった。
ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアが姿を見せないことを不審に感じたポワロ達が書斎へ向かうと、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアが死亡しているのを発見する。見たところ、拳銃で自殺した模様だった。
しかし、拳銃の銃弾が、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアが死亡している机の向こうの壁に掛かっている円い鏡に当たった位置等、彼の死因をめぐって、不審な点が多々あったため、ポワロは、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアは殺害されたものと判断したのである。
*「砂に書かれた三角形(Triangle at Rhodes)」(1936年)
10月の閑散期に、エルキュール・ポワロは、宿泊客の少ないロードス島(Rhodes)を訪れる。
島には、パメラ・ライアル(Pamela Lyall)、サラ・ブレイク(Sarah Blake)とヴァレンタイン・ダクレス・チャントリー(Valentine Dacres Chantry)が滞在して降り、自他共に美しさを認めるヴァレンタイン・チャントリーは、ダグラス・キャメロン・ゴールド(Douglas Cameron Gold)の気を引くそぶりを見せる。彼女のふるまいは、ダグラスの妻で、温和な風情のマージョリー・エマ・ゴールド(Marjorie Emma Gold)とヴァレンタインの夫であるトニー・チャントリー(Tony Chantry)の2人を苛立たせていた。
マージョリー・ゴールドから相談を受けたポワロは、彼女に対して、「手遅れにならないうちに、島を離れなさい。」と助言するが、彼女は、「夫(ダグラス)が一緒でなければ、島を離れることはできません。」と言って、首を振る。
そして、ある晩、ダグラス・ゴールドとトニー・チャントリーの2人が言い争いになったことを皮切りに、事件が発生する。マージョリー・ゴールドとヴァレンタイン・チャントリーの2人がドライブから戻った後、ヴァレンタイン・チャントリーが、夫のダグラス・ゴールドから手渡されたカクテルを飲んで、毒死したのである。
(53)新型爆撃機の設計図(aircraft blueprints)
「謎の盗難事件」において、英国兵器省の初代長官であるメイフィールド卿の屋敷から、新型爆撃機の設計図が盗まれる事件が発生して、ポワロが呼ばれる。
(54)粉微塵になった壁の鏡(broken wall mirror)
「死人の鏡」において、いつまで経っても、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアが姿を見せないことを不審に思ったポワロ達が書斎へ向かうと、彼は既に死亡していた。一見、拳銃自殺のようだった。
ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアが死亡している机の向こうの壁に、円い鏡に掛かっていたが、粉微塵になっていた。彼が撃った拳銃の銃弾が当たったためだと思われた。
(55)食事の用意が整ったことを知らせるための銅鑼(dinner gong)
「死人の鏡」において、間を置き、銅鑼が二度鳴ったことを判ったポワロは、ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴアがどのように殺害されたのかを導き出すのであった。































