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英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている アガサ・クリスティー作「ホロー荘の殺人」のペーパーバック版の表紙 -ホロー荘の庭園に植えられた植物が、 女優のヴェロニカ・クレイがホロー荘へ借りに来たマッチ箱の形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1946年に発表した「ホロー荘の殺人(The Hollow)」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第37作目に該り、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては、第22作目に該っている。
ある年の9月末の週末、行政官だったサー・ヘンリー・アンカテル(Sir Henry Angkatell)と夫人のルーシー・アンカテル(Lucy Angkatell)が、友人のクリストウ夫妻をロンドン近くの自宅ホロー荘(The Hollow)へ招待して、彼らをもてなす計画をするところから、物語が始まる。
夫のジョン・クリストウ(John Christow)はハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)で成功をおさめた外科医で、夫人のガーダ・クリストウ(Gerda Christow)は純真かつ無邪気な性格で、夫のジョンに対して崇拝に近い位の愛情を捧げていた。ただ、ガーダは簡単な室内ゲームも満足にできないのが、ルーシー・アンカテルにとって頭の痛い点だった。
ホロー荘には、クリストウ夫妻の他に、以下の人物が招待されていた。
(1)ミッジ・ハードキャッスル(Midge Hardcastle):ルーシー・アンカテルの従妹で、服飾関係の店員として働いている。
(2)エドワード・アンカテル(Edward Angkatell):サー・ヘンリー・アンカテルの従弟で、アンカテル家の領地エインズウィック(Ainswick)の法廷相続人。
(3)ヘンリエッタ・サヴァナク(Henrietta Savernake):彫刻家
(4)デイヴィッド・アンカテル(David Angkatell):ルーシー・アンカテルの従兄弟で、学生。
更に、ルーシー・アンカテルがバグダッドで出会ったエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)が偶然ホロー荘の近くに別荘を借りていたため、彼女は彼を日曜日の昼食に招いていた。
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| エルキュール・ポワロは、 ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。 <筆者撮影> |
招待客が到着して、週末が始まると、ルーシー・アンカテルの心配が的中することになった。
ミッジ・ハードキャッスルはエドワード・アンカテルのことを愛していたが、当人のエドワード・アンカテルはヘンリエッタ・サヴァナクにエインズウィックの女主人になってほしいと思っている。ところが、ヘンリエッタ・サヴァナクはジョン・クリストウと不倫関係にあったのだ。そして、デイヴィッド・アンカテルはそんな彼らを嫌っていた。
ポワロの向かいの別荘を借りている女優のヴェロニカ・クレイ(Veronica Clay)がきらしたマッチを借りようとホロー荘へとやって来たことが契機となり、状況は更に緊迫度を増した。
ヴェロニカ・クレイは以前ジョン・クリストウと交際しており、彼に外科医の仕事を捨てて、自分と一緒にハリウッドへ来るように誘ったが、彼は彼女の要請を断り、彼女としては、それを良しとはしていなかった。そして、これが15年振りの再会であった。
ジョン・クリストウは、以前のようにヴェロニカ・クレイの魅力に抗いできず、結局、彼女を別荘まで送って行くことになった。ジョン・クリストウが、午前3時にヴェロニカ・クレイの別荘からホロー荘へと戻って来た際、誰かに見られているように感じた。ところが、誰の姿も見当たらず、妻のガーダが寝室で寝ていることを確認すると、ジョン・クリストウは安心して、床に就くのであった。
翌日の日曜日、ルーシー・アンカテルに昼食へ招かれたポワロは、ホロー荘を訪れた。執事のガジョン(Gudgeon)に案内されて、昼食前の一杯のため、プールの側の東屋(あずまや)へ向かったポワロであったが、プールのところにホロー荘の主夫妻や招待客達が集まっているのを目にする。そして、彼らが囲んでいたのは、銃で撃たれ、血を流して倒れているジョン・クリストウと、銃を手にして傍らに立つガーダ・クリストウという芝居染みた光景であった。
当初、ポワロは、名探偵である自分を歓迎するための余興だと考えたが、直ぐに冗談事ではないことが判る。正に、ポワロの目の前で、本物の殺人事件が発生したのであった。そして、銃で撃たれたジョン・クリストウは、最後に「ヘンリエッタ」と呟くと、息絶える。
ジョン・クリストウを銃で撃ったのは、目前で展開している通り、妻のガーダ・クリストウなのか?
ヘンリエッタ・サヴァナクが、ガーダ・クリストウの手から銃を取ろうとして、前に進み出るものの、誤って銃をプールに落としてしまう。水中に落ちたため、この銃から指紋を検出することが、非常に困難になった。
ところが、プール内から回収した銃を調べたところ、この銃がジョン・クリストウを撃ったものではないことが判明する。
後に、ジョン・クリストウを撃った本物の銃が、ポワロが借りている別荘の生け垣から発見されるに至る。その凶器には、指紋が付いていたが、ホロー荘に滞在していた誰とも一致しないと言う不可解な事実が更に明らかになった。
それでは、ジョン・クリストウが今際の際に呟いた「ヘンリエッタ」と言うのは、一体何を意味しているのか?
ジョン・クリストウを銃で撃った真犯人は、ヘンリエッタ・サヴァナクなのか?そして、その動機は、何なのか?
(77)馬の粘土細工(clay horse)
ジョン・クリストウが今際の際に「ヘンリエッタ」と呟いたのを聞いたヘンリエッタ・サヴァナクは、「彼(ジョン・クリストウ)は、自分を撃った犯人を助けてほしいのだ。」と即座に理解。
そこで、ヘンリエッタ・サヴァナクは、ガーダ・クリストウの手から銃を取ろうとして、実際には意図的ではあるが、誤って銃をプールに落としてしまう動きをとった。
更に、彼女は、ジョン・クリストウを撃った本物の凶器(銃)を取りに行き、一時的に、それを自分の工房にある馬の粘土細工の中に隠す。その後、馬の粘土細工の中から本物の凶器(銃)を取り出した彼女は、盲目のマッチ売りを使って、ポワロが借りている別荘の生け垣に置かせたのである。
(78)樹木の悪戯書き(doodle of a tree)
ホロー荘のプールサイドにおいて、ジョン・クリストウが銃で撃たれた時間帯に、ヘンリエッタ・サヴァナクは、パヴィリオンに変わった落書き(樹木の悪戯書き)を残していた。




































