英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2017年に出版された ニック・カイム作 「シャーロック・ホームズ:遺産」の裏表紙 (Images : Shutterstock / Dreamstime) |
1894年の冬、3週間程、仕事が全くなく、ベイカーストリート221B(221B Baker Street)にずーっと閉じこもっているシャーロック・ホームズのことを心配したジョン・H・ワトスンは、自分のポケットマネーを叩いて、ホームズをロイヤルオペラハウス(Royal Opera House → 2015年8月29日付ブログで紹介済)へと連れ出す。演目は、ドイツを舞台にして、悪魔ロットバルト(Baron Von Rothbart)による呪いで白鳥に姿を変えられた王女オデット(Princess Odette)と王子ジークフリート(Prince Siegfried)の悲恋を描いたクラシックバレエ「白鳥の湖(Swan Lake)」だった。
バレエ「白鳥の湖」は、湖岸において、王子ジークフリートが、白鳥に変えられた王女オデットに出会う第2幕目(Act II)に入る。その時、舞台上の照明が薄暗くなり、突然、後ろの方の幕が下りる。そして、再度、幕が上がる。そこには、白鳥を踊っていた女性ダンサーの一人が、俯せになって倒れていたのである。
ホームズとワトスンの2人が急いで舞台上へと駆け付けるが、彼女が既に死亡していることは、明らかで、死因は後頭部への一撃だった。
Royal Opera House Exterior (Photography by Luke Hayes) - ロイヤルオペラハウスで購入した絵葉書から抜粋。 |
The auditorium of the Royal Opera House (Photography by Sim Canetty-Clarke) - ロイヤルオペラハウスで購入した絵葉書から抜粋。 |
その翌朝、エドムンド・ガレット(Edmund Garret)と言う男性が、ホームズの元を訪れる。
彼は、ウェリントンストリート(Wellington Street)沿いにあるグレイスンギャラリー(Grayson Gallery)に勤める学芸員のアシスタントで、ホームズに対して、「殺人事件が起きたので、ギャラリーまで一緒に来てほしい。」と依頼した。ウェリントンストリートは、ロイヤルオペラハウスとは、目と鼻の先に所在している。
ウェリントンストリートを画面右方向へ進むと、 ロイヤルオペラハウスへと至る。 <筆者撮影> |
ホームズ、ワトスンとエドムンド・ガレットの3人は、馬車でウェリントンストリートへと向かうが、途中、リージェントストリート(Regent Street)において渋滞に巻き込まれてしまう。
英国を訪問中のロシア貴族であるコンスタンティン公爵(The Grand Duke Konstantin)が、彼の息子であるセルゲイ(Sergei)への土産物を買うために、リージェントストリートへとやって来ていたのである。
完全に停まってしまった馬車を諦めたホームズは、突然、馬車から降りると、歩き出した。
ホームズの後を追い始めたワトスンは、途中、
(1)掏摸と思しき若い女性
と
(2)彼女を追っている男
の2人に出会う。
女性の心配顔を見たワトスンは、男を引き止めて、彼女を逃げしてあげた。
ところが、ホームズに指摘されて、ワトスンが自分の懐を確認すると、父親の形見である懐中時計が盗まれていることに気付いた。
グレイスンギャラリーに着いたホームズとワトスンの2人を、エドムンド・ガレットは、表口からではなく、横道へと案内して、裏口から内へ入れた。
驚くことに、ギャラリー内の床の上に、ギャラリーのパトロンである30名以上の男女が死んでいたのである。その中には、学芸員のアーサー・マボット(Arthur Mabbot)と2名のウェイターも含まれていた。
問題の部屋には、鍵が掛けられていたが、学芸員のアーサー・マボットのポケットには、鍵はなかった。何者かが持ち去ったものとしか考えられなかった。
ホームズは、30名以上の男女の死体の前に掛かっている絵画が気になった。
それは、死神(Death)と思われる骸骨が描かれた「不死の男(Undying Man)」と言う題で、作者は「アイヴァー・ラザラス(Ivor Lazarus)」となっていた。
ホームズからの問い掛けに対して、エドムンド・ガレットは、「アイヴァー・ラザラスと言う画家本人を知らないし、会ったこともない。」と答えた。
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