2024年7月25日木曜日

アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」<小説版(愛蔵版)>(Peril at End House by Agatha Christie )- その3

2024年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
愛蔵版(ハードカバー版)の内扉


今回、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「エンドハウスの怪事件(Peril at End House)」(1932年)を再読して思うことは、名探偵エルキュール・ポワロの正義に対する考え方である。


日本の文藝春秋社から2022年に出版された
有栖川 有栖作「捜査線上の夕映え」の
ハードカバー版の表紙
カバー写真: 堀内 洋助
装丁: 関口 聖司

まず、その前に、日本の出版社である株式会社文藝春秋から出版された日本の小説家 / 推理作家である有栖川 有栖(Alice Arisugawa:1959年ー)作「捜査線上の夕映え」(2022年)の中から、ある文章を紹介したい。

同作は、京都の英都大学において、犯罪社会学を研究している火村 英生(Hideo Himura)准教授を主人公とするシリーズの1作で、同作に登場する推理作家の有栖川 有栖(Alice Arisugawa - 作者と同姓同名)が、彼のことを以下ように評している。


「犯罪そのものより、彼は犯罪者 - 端的に言うと人を殺す者を憎んでいる。殺人を犯した者がその罪を自らの命で償うのは当然だとも考えている。理由は、自分が人を殺したいと思ったことがあるから。」


英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
ペイパーバック版の表紙(その1)

エルキュール・ポワロも、「殺人を犯した者は、その罪を自らの命で償うのは、当然だと考えている」と、個人的には、思っている。

勿論、ポワロの方が、火村 英生准教授よりも、「先駆者」であるが、ポワロの考え方は、より絶対的な正義を体現していると言える。


英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
ペイパーバック版の表紙(その2)

ポワロによる絶対的な正義の片鱗は、まず最初に、「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2023年9月25日 / 10月2日付ブログで紹介済)」(1926年)に見られる。

ポワロは、ロジャー・アクロイド(Roger Ackroyd)を殺害した犯人に対して、事件の記録を書き上げた後、自殺をするように促す。


2022年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「アクロイド殺し」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by Holly Macdonald /
Illustrations by Shutterstock.com) 


そして、本作「エンドハウスの怪事件」の場合、マギー・バックリー(Maggie Buckley)を射殺したことをポワロによって指摘された犯人は、友人である女性に対して、「あなたがしている腕時計を譲ってほしい。」と頼む。

実は、友人である女性から譲ってもらった腕時計の中には、コカインが仕込まれていた。裁判で死刑に処せられることを回避するために、犯人はそのコカインで自殺しようと考えていた。ポワロは、そのことを知っていたが、罪を自らの命で償わせるために、あえて何も言及しなかった。


次は、「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」(1934年)となる。

オリエント急行の乗客の一人、米国人の実業家であるサミュエル・エドワード・ラチェット(Samuel Edward Ratchett)が殺害される。

実は、サミュエル・エドワード・ラチェットという名前は偽名であり、彼は、5年前に、米国において、幼いデイジー・アームストロング(Daisy Armstrong)を誘拐して殺害した犯人カセッティ(Cassetti)で、身代金を持って海外へ逃亡していたことが判明する。

ポワロは、デイジー・アームストロングを誘拐の上、殺害したサミュエル・エドワード・ラチェット自身、殺害されることで、罪を自らの命で償ったと考えているのではないだろうか?

ただ、デイジー・アームストロングの復讐のためとは言え、サミュエル・エドワード・ラチェットを殺害した犯人達について、ポワロは、最終的に、見逃している。


2013年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」
(ペーパーバック版)の表紙
(Cover design by Claire Ward / HarperCollinsPublishers Ltd.
Background illustration and silhouette Shutterstock.com)


年代はかなり後半となるが、


*「死者のあやまち(Dead Man’s Folly → 2023年8月18日 / 8月22日付ブログで紹介済)」(1956年)


2023年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「死者のあやまち」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by HarperCollinsPublishers Ltd. /
Cover illustration by Becky Bettesworth) -
アガサ・クリスティーの夏期の住まいである
デヴォン州のグリーンウェイが、ナス屋敷として描かれている。


*「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party → 2023年10月6日 / 10月11日付ブログで紹介済)」(1969年)


2023年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「ハロウィーンパーティー」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by Sarah Foster / HarperCollinsPublishers Ltd.
Cover images by Shutterstock.com) 


を経て、(執筆自体は、第2次世界大戦(1939年ー1945年)中であるが、)ポワロの最終作である「カーテン ポワロ最後の事件」において、ポワロによる絶対的な正義は、結実するのである。


英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「カーテン:ポワロ最後の事件」の
ペイパーバック版の表紙

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