2023年5月31日水曜日

アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」<戯曲版>(Five Little Pigs by Agatha Christie )- その2

1960年3月23日にロンドンのダチェス劇場において初演された
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」の戯曲版である
「殺人をもう一度」の配役表
(2011年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「The Mousetrap and Other Plays」から抜粋)


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1942年に発表した長編で、エルキュール・ポワロシリーズの第21作目に該る「五匹の子豚(Five Little Pigs)」は、彼女の手により戯曲版となり、1960年3月23日にロンドンのダチェス劇場(Duchess Threatre)において、「殺人をもう一度(Go Back for Murder)」と言うタイトルで初演された。


彼女の戯曲版は、以下の通り、2幕構成となっている。


<第1幕(場所:ロンドン)>

・シーン1(場所:法律事務所のオフィス(A lawyer’s office))

 登場人物:ジャスティン・フォッグ(Justin Fogg)/ ターンボール(Turnball - ジャスティン・フォッグと彼の父親であるアンドリュー・フォッグ(Andrew Fogg)を40年間支えた事務員)/ カーラ・ルマルション(Carla Le Marchant)/ ジェフ・ロジャース(Jeff Rogers)

・シーン2(場所:シティー地区にある株式仲買人オフィス(A City office))

 登場人物:カーラ・ルマルション / フィリップ・ブレイク(Philip Blake)

・シーン3(場所:カーラ・ルマルションが宿泊しているホテルの部屋(A room in an hotel suite))

 登場人物:ジャスティン・フォッグ / カーラ・ルマルション / メレディス・ブレイク(Meredith Blake)→ カーラ・ルマルション / エルサ・グリヤー(Elsa Greer)

・シーン4(場所:セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams)が住む屋根裏部屋(A bed-sitting-room))

 登場人物:カーラ・ルマルション / セシリア・ウィリアムズ

・シーン5(場所:レストランのテーブル(A table in a restaurant))

 登場人物:カーラ・ルマルション / アンジェラ・ウォレン(Angela Warren)


<第2幕(場所:オルダーベリーにあるアミアス・クレイル(Amyas Crale)が毒殺された屋敷(Alderbury, a house in the West of England))>


第2幕では、「現在」、「16年前」、そして、「現在」と、場面が展開する。


(1)登場人物(現在):ジャスティン・フォッグ / カーラ・ルマルション / メレディス・ブレイク

(2)登場人物(16年前):カロリン・クレイル(Caroline Crale)/ アミアス・クレイル / フィリップ・ブレイク / メレディス・ブレイク / エルサ・グリヤー / セシリア・ウィリアムズ / アンジェラ・ウォレン

(3)登場人物(現在):ジャスティン・フォッグ / カーラ・ルマルション / フィリップ・ブレイク / メレディス・ブレイク / エルサ・グリヤー / セシリア・ウィリアムズ / アンジェラ・ウォレン


なお、舞台上、「カーラ・ルマルション」と彼女の母親である「カロリン・クレイル」は、同じ女優が演じている。


アガサ・クリスティーは、自伝の中で、「ホロー荘の殺人(The Hollow)」(1946年)に関連して、「いつも思っていたことだったが、『ホロー荘の殺人』では、ポワロを登場させたことが失敗だった。私は自分の小説にポワロを出すことに慣れっこになっていたので、当然、この小説にも彼が入ってきたが、ここでは、それが失敗だった。」と述べているが、ファンの立場から言うと、非常に残念なことに、彼女は、処女作である「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)」(1920年)に登場させたベルギー人の名探偵であるエルキュール・ポワロをあまり好いていなかった。

そのため、「五匹の子豚」の戯曲版である「殺人をもう一度」において、ポワロは登場せず、代わりに、カーラ・ルマルションが自分の母親の事件の再調査を依頼したジャスティン・フォッグが探偵役を務める。


第2幕の終盤、ジャスティン・フォッグが、アミアス・クレイルの殺害犯人として、エルサ・グリヤー(現在は、メルクシャム卿夫人(Lady Melksham))を指摘すると、彼女は罪を認めて、退席する。

彼女が姿を消した後、フィリップ・ブレイク、アンジェラ・ウォレン、セシリア・ウィリアムズ、そして、メレディス・ブレイクの順で、舞台から退席していく。


第2幕の最後、ジャスティン・フォッグとカーラ・ルマルションの間で、以下の会話が交わされる。


カーラ・ルマルション:She’s been sentenced already, hasn’t she ?

ジャスティン・フォッグ:Sentenced ?

カーラ・ルマルション:To life imprisonment - inside herself.


ジャスティン・フォッグが、カーラ・ルマルションに対して、「カナダ(モントリオール)へ戻るのか?」と尋ねると、彼女は、「カナダへは戻らない。ここ(オルダーベリー)に残る。」と答える。

更に、カーラ・ルマルションは、ジャスティン・フォッグに対して、「ジェフ・ロジャースとの婚約は、既に解消済。あなた(ジャスティン)には、私と一緒に、ここに残ってほしい。」と伝える。

ちょうどそこへ、メレディス・ブレイクが戻って来て、ジャスティン・フォッグとカーラ・ルマルションの二人の様子を見て、微笑みながら、舞台上から退席して、物語は終わりを迎えるのである。


2023年5月30日火曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その8

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピア作の喜劇「ヴェニスの商人(The Merchant of Venice)」(1596年-1598年)である。

「ヴェニスの商人」では、中世イタリアのヴェニス(Venice)と架空の都市ベルモント(Belmont)を舞台にして、商取引と恋の喜劇が繰り広げられる。


グローブ座(Globe Theatre)の右斜め後ろの広場において、
悪名高い高利貸しのシャイロック(画面中央に立つ赤い服を着て、赤と黒の帽子を冠った人物)が、
お金を貸した人から返済を受けている場面が描かれている。


ヴェニスに住む高等遊民であるバサーニオ(Bassanio)は、莫大な財産を相続した美貌の貴婦人であるポーシャ(Portia)との結婚を望んでいるが、先立つものがないため、彼の友人でもある貿易商人のアントーニオ(Antonio)からお金を借りようとする。

生憎と、アントーニオの財産は、現在航海中の商船にあるため、彼はバサーニオにお金を貸すことができず、悪名高い高利貸しのユダヤ人であるシャイロック(Shylock)の元を訪れる。


正義感が強いアントーニオに自分の商売を邪魔されて、彼に対する恨みを募らせていた強欲なシャイロックは、「アントーニオが、指定された日付までに、借りたお金を返済することができない場合、自分(シャイロック)に対して、彼の肉1ポンドを与えなければならない。(If Antonio were unable to repay the sum at the specified date, Shylock may take a pound of Antonio’s flesh.)」と言う条件を提示し、アントーニオは、その条件を承諾する。


不幸なことに、アントーニオの商船は難破して、彼は全財産を失ってしまう。シャイロックは、アントーニオに対して復讐できる機会が訪れたことを非常に喜ぶ。


アントーニオが借金の返済ができなくなったことを聞いたバサーニオは、ベルモントのポーシャの元を訪れ、彼女から必要なお金を受け取ると、ヴェニスへと戻った。

ところが、シャイロックは、バサーニオのお金を頑として受け取らず、裁判に訴えて、当初の契約通り、アントーニオの肉1ポンドを要求した。


若い法学者に扮したポーシャが、この裁判を担当し、シャイロックに対して、慈悲の心を見せるように促すものの、シャイロックがこれを拒否したため、ポーシャは、シャイロックに対して、アントーニオの肉を切り取ってもよいと言う判決を下す。

シャイロックは、アントーニオの肉を喜んで切り取ろうとすると、若い法学者に扮したポーシャは、シャイロックに対して、「アントーニオの肉を切り取ってもよいが、血を流してはいけない。契約書に記載されていない血を1滴でも流した場合、契約違反として、シャイロックの全財産を没収する。(The contract allows Shylock to remove only the flesh, not the blood, of Antonio. Thus, if shylock were to shed any drop of Antonio’s blood, his lands and goods would be forfeited under Venetian law.)」と告げたのである。

対応に困ったシャイロックは、代わりにバサーニオからの返済を受けようとするが、一度拒否していたため、これは認められなかった。また、アントーニオの命を奪おうとしたことを罪に問われ、シャイロックの全財産は没収されてしまう。

アントーニオは、キリスト教徒の慈悲心から、若い法学者に扮したポーシャに対して、シャイロックの全財産没収を免じること、また、彼の財産の半分を、彼の強欲さを嫌って、婚約者のロレンゾ(Lorenzo)と駆け落ちをした彼の娘であるジェシカ(Jessica)に与えることを懇願した。更に、アントーニオの命を奪おうとした罪で、死刑になるところだったシャイロックは、キリスト教徒へと改宗させられることになる。

(20世紀初頭以降、ユダヤ人人権団体は、「本作品は、反ユダヤ主義を煽っている。」と唱え、学校教材や舞台演劇等に使用することに反対する運動を展開しており、その結果、学校教材や舞台演劇等から避けられる傾向がある、とのこと。)


ポーシャの変装に気付かなかったバサーニオは、ベルモントへと戻ったポーシャから話を聞いて、非常に驚く。

また、アントーニオの商船は、実際には難破しておらず、無事だったことが判明して、物語は終わりを迎える。


なお、タイトルの「ヴェニスの商人」とは、悪名高い高利貸しの「シャイロック」を指していると思われる傾向があるが、実際には、貿易商人の「アントーニオ」を指している。


2023年5月29日月曜日

コナン・ドイル作「恐怖の谷」<小説版>(The Valley of Fear by Conan Doyle )- その5

サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)のバールストン館(Birlstone House)の玄関に一番近い部屋(書斎)において、館の主人であるジョン・ダグラス(John Douglas)らしき男性が、銃身が切り詰められた散弾銃で至近距離から射殺された事件現場を詳細に調べたシャーロック・ホームズは、食堂を使って、まず最初に、執事のエイムズ(Ames)による証言を聞いた。

国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第5章「事件の関係者達(The People of the Drama)」
サセックス州バールストンのバールストン館の書斎において、
ジョン・ダグラスらしき男性が殺害されているのを発見した
セシル・ジェイムズ・バーカーは、
階段を降りて来たダグラス夫人に対して、
自分の部屋へと戻るよう、懇願した。
画面左側の人物がダグラス夫人で、
画面右側の人物がセシル・バーカー。
挿絵:フランク・ワイルズ

エイムズの証言は、以下の通り。


ジョン・ダグラスがバールストン館を買い入れた5年前に、エイムズは執事として雇われた。

ジョン・ダグラスは、常日頃、バールストンを離れることは、ほとんどなかった。

・ジョン・ダグラスは、事件があった日(1月6日)の前日(1月5日)、タンブリッジウェルズ(Tunbridge Wells)へ買い物に出かけたが、戻って来ると、日頃の彼にしては珍しく、落ち着きを失って、イライラしているように見えた。

・事件があった当夜、館の裏にある食器室において、エイムズが銀食器の片付けをしていた際、玄関のベルが激しく鳴ったため、自分の部屋から出て来た家政婦のアレン夫人(Mrs. Allen)と一緒に、玄関へと向かった。特に、銃声は聞かなかった。

・書斎から出て来たセシル・ジェイムズ・バーカー(Cecil James Barker)が、階段を降りて来たダグラス夫人(Mrs. Douglas)を制止すると、アレン夫人に付き添わせて、彼女の部屋へと戻らせた。

・その後、セシル・バーカーとエイムズの二人は、書斎の中で、ジョン・ダグラスらしき男性が、銃身が切り詰められた散弾銃で至近距離から撃たれて、亡くなっているのを発見した。


家政婦のアレン夫人も、エイムズの証言を補強した。

また、セシル・バーカーに指示された通り、アレン夫人は、ダグラス夫人に付き添い、彼女の部屋へと戻ると、一晩中、その部屋に居た、とのこと。


次の証言者は、セシル・バーカーだった。


・セシル・バーカーは、米国カリフォルニア州(California)において、ジョン・ダグラスと知り合い、ベニート・キャニオン(Benito Canyon)と言う鉱山の共同経営者となって、非常に成功を収めた。この時点で、ジョン・ダグラスは、最初の妻とは死別していた。

・5年後(今から6年前)、ジョン・ダグラスは、突然、鉱山の権利を全て売却すると、英国へと向かった。

・その後(今から5年前)、セシル・バーカーも、資産を現金化すると、英国へと戻り、ジョン・ダグラスとの旧交を再び温めなおすこととなった。

・ジョン・ダグラスには、何か危険が付き纏っているような感じがあり、秘密結社か、執念深い組織に、彼は追われているのではないかと、セシル・バーカーには、思われた。

・バールストンに隠遁した後も、ジョン・ダグラスは、外出時、いつも武器を携帯していた。


スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)は、当初、ダグラス夫人の体調を考慮して、彼女の部屋で証言を聞こうとしたが、勇敢にも、ダグラス夫人は、食堂へと姿を見せた。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第5章「事件の関係者達(The People of the Drama)」
事件の捜査を進めるシャーロック・ホームズ達は、
バールストン館の食堂において、
ダグラス夫人の証言を聞くことになった。
画面左側から、ダグラス夫人、ジョン・H・ワトスン、
サセックス州刑事部長のホワイト。メイスン、ホームズ、
そして、スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部。
挿絵:フランク・ワイルズ

ダグラス夫人によると、ジョン・ダグラスと結婚して、5年になるが、彼から米国での出来事にかかる話を聞いたことはない、とのことだった。ただし、夫の身辺に付き纏っている危険については、感じていたと告げた。

ある時、ジョン・ダグラスが、「俺は、恐怖の谷に居たんだ。そこからまだ抜け出せていない。(I have been in the Valley of Fear. I am not out of it yet.)」と言う謎の言葉を発していた、と証言した。

また、3年前、狩猟中に事故に遭遇して、熱を出した際、ジョン・ダグラスは、怒りと恐怖が交じった表情をして、「マギンティー支部長(Bodymaster McGinty)」と言う名前を呟いていた、と付け加えた。


ダグラス夫人の美しさに感嘆するマクドナルド警部は、彼女に横恋慕したセシル・ベーカーが、彼の友人でもあるジョン・ダグラスを殺害したのではないかと推測しているようだ。


マクドナルド警部から意見を求められたホームズは、執事のエイムズを呼ぶと、書斎でジョン・ダグラスらしき男性の死体を発見した際、セシル・バーカーが何を履いていたのかを尋ねた。

エイムズによると、セシル・バーカーは、寝室の室内履き(a pair of bedroom slippers)を履いており、それは、玄関ホールの椅子の下にまだ置いてある、とのことだった。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第5章「事件の関係者達(The People of the Drama)」
食堂から書斎へと戻ったシャーロック・ホームズは、
事件発見時にセシル・ジェイムズ・バーカーが履いていた室内履きを
玄関ホールの椅子の下から持って来ると、
窓枠の血の跡に当てると、奇しくも、
それはぴたりと一致したのである。
挿絵:フランク・ワイルズ

エイムズの話を聞いたホームズは、ジョン・H・ワトスン、マクドナルド警部とサセックス州刑事部長(chief Sussex detective)のホワイト・メイスン(White Mason)の3人を伴うと、殺害現場である書斎へと向かった。

ホームズが、玄関ホールの椅子の下から持って来た室内履きの片方を、窓枠の血の跡に当てると、奇しくも、それはぴたりと一致したのである。


マクドナルド警部が推測した通り、美しいダグラス夫人に横恋慕したセシル・ベーカーが、彼の友人でもあるジョン・ダグラスを殺害したのであろうか?


2023年5月28日日曜日

アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」<戯曲版>(Five Little Pigs by Agatha Christie )- その1


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1942年に発表した長編で、エルキュール・ポワロシリーズの第21作目に該る「五匹の子豚(Five Little Pigs)」は、彼女の手により戯曲版となって、1960年3月23日にロンドンのダチェス劇場(Duchess Threatre)において初演された。なお、「五匹の子豚」の戯曲版のタイトルは、「殺人をもう一度(Go Back for Murder)」へ変更されている。


2011年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「The Mousetrap and Other Plays」の表紙
(Cover Design : HarperCollinsPublishers 2011)


「殺人をもう一度」における主な登場人物以下の通り。なお、登場人物の順番は、舞台上の出演順である。


(1)ジャスティン・フォッグ(Justin Fogg):法律事務所の弁護士(現在 - 35歳)

(2)カーラ・ルマルション(Carla Le Marchant):事件の依頼人(現在 - 21歳 / 事件当時 - 5歳)

(3)ジェフ・ロジャース(Jeff Rogers):カーラ・ルマルションの婚約者


(4)フィリップ・ブレイク(Philip Blake):アミアス・クレイルの親友 / 現在は、株式仲買人

(5)メレディス・ブレイク(Meredith Blake):-フィリップ・ブレイクの兄 / 現在は、隠居の上、薬草の研究に没頭

(6)エルサ・グリヤー(Elsa Greer):アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人 / 現在は、メルクシャム卿夫人(Lady Melksham)(現在 - 35歳 / 事件当時 - 19歳)

(7)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams):アンジェラ・ウォレンの家庭教師(現在 - 60歳台) 

(8)アンジェラ・ウォレン(Angela Warren):カロリン・クレイルの異母妹 / 現在は、考古学者(現在 - 30歳 / 事件当時 - 14歳)


(9)カロリン・クレイル(Caroline Crale):アミアス・クレイルの妻 / 夫を毒殺した罪で起訴される

(10)アミアス・クレイル(Amyas Crale):画家で、カロリン・クレイルの夫


2011年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「The Mousetrap and Other Plays」の裏表紙
(Cover Design : HarperCollinsPublishers 2011)-
「殺人をもう一度」の戯曲版も、一番最後に含まれている。


アガサ・クリスティーの原作(小説版)に比べると、彼女の戯曲版における登場人物には、以下の違いが見受けられる。


(1)

<小説版>

カーラ・ルマルションが自分の母親の事件の再調査を依頼する相手は、「エルキュール・ポワロ」である。

<戯曲版>

カーラ・ルマルションが自分の母親の事件の再調査を依頼する相手が、「ジャスティン・フォッグ」へ変更されている。

なお、ジャスティン・フォッグの名前は、小説版の「クェンティン・フォッグ(Quentin Fogg - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、検察側を担当)」をベースにしているものと思われる。


(2)

<小説版>

カーラ・ルマルションの婚約者の名前は、「ジョン・ラッテリー(John Rattery)」である。

<戯曲版>

カーラ・ルマルションの婚約者の名前が、「ジェフ・ロジャース」へ変更されている。


(3)

<小説版>

カーラ・ルマルションの婚約者であるジョン・ラッテリーは、ポワロに対して、事件の再調査を取り止めるよう、働き掛けるようなことはしない。

<戯曲版>

カーラ・ルマルションの婚約者であるジェフ・ロジャースは、ジャスティン・フォッグに対して、「事件の再調査を適当に済ませて、彼女には穏便な結果だけを伝えればよい。」と働き掛けている。


(4)

<小説版>

ポワロによる事件の再調査の結果、アミアス・クレイルを殺害した本当の真犯人が明らかになり、カロリン・クレイルの無実が判ったカーラ・ルマルションとジョン・ラッテリーの二人は、安心して、結婚へと進むことになる。

<戯曲版>

物語の最後、カーラ・ルマルションは、ジャスティン・フォッグに対して、「ジェフ・ロジャースとの婚約は、既に解消済。カナダへは戻らず、英国に残るつもり。」と告げる。


(5)

<小説版>

エルサ・グリヤーの現在の肩書きは、「ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)」である。

<戯曲版>

エルサ・グリヤーの現在の肩書きは、「メルクシャム卿夫人」へと変更されている。


(6)

<小説版>

事件後、アンジェラ・ウォレンは、ドイツ(ミュンヘン)の学校へ留学させられている。

<戯曲版>

事件後、アンジェラ・ウォレンは、スイス(チューリッヒ)の学校へ留学させられている。


2023年5月27日土曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その7

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピアの同業者である劇作家である。


<クリストファー・マーロウ(Christopher Marlowe:1564年ー1593年)>


グローブ座(Globe Theatre)の右上にある居酒屋の外で、
クリストファー・マーロウ(画面右側の人物)が、
イングラム・フライザー(画面左側の人物)によって、
ナイフで刺し殺されそうになっている場面が描かれている。

クリストファー・マーロウは、英国の劇作家 / 詩人 / 翻訳家で、ウィリアム・シェイクスピアに先駆けて、エリザベス朝演劇の基礎を築いた人物の一人と見做されている。


クリストファー・マーロウは、靴屋を営む父親のジョン・マーロウ(John Marlowe)と母親のキャサリン・アーサー(Katherine Arthur)の下、1564年2月26日に、ケント州(Kent)のカンタベリー(Cantebury)に出生。

彼の家は貧しかったが、奨学金を得て、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)に入学。両親からは、聖職者となることを期待されたものの、彼自身は、興味を全く示さず、文学に傾倒して、大学入学直後より戯曲執筆を開始。

1587年7月の大学卒業時、度重なる長期休学や国家転覆(女王エリザベス1世打倒)の陰謀に関与したと言う噂の関係で、修士号授与を取り消される可能性があったが、政府高官のコネを使って、なんとか事無きを得た。


クリストファー・マーロウは、大学在学中に執筆したと言われる戯曲「カルタゴの女王ダイドー(Dido, Queen of Carthage)」に加え、大学卒業後、本格的に文筆活動を開始して、


(1)「タンバレイン大王(Tamburlaine the Great)」 - 中央アジアの征服者であるティムールの生涯を題材にした伝記悲劇

(2)「フォースタス博士(Doctor Faustus)」- ドイツのファウスト伝説を題材

(3)「マルタ島のユダヤ人(The Jew of Malta)」- 金銭欲の権化であるユダヤ人バラバスの策謀と破滅を描く

(4)「パリの虐殺(The Massacre at Paris)」- 1572年8月24日にフランスのカトリック教徒がプロテスタント教徒を大量虐殺した「聖バーソロミューの虐殺(St. Bartholomew’s Day Massacre)」を題材

(5)「エドワード2世(Edward II)」


等の戯曲を精力的に発表したが、これらの正確な執筆時期は、不明である。


大学卒業後のクリストファー・マーロウは、無頼な生活を送っており、1593年5月30日の夜、ケント州のデットフォード(Deptford)の居酒屋に居た彼は、他の3人の客との間で、勘定争いの喧嘩に巻き込まれ、3人の客の一人であるイングラム・フライザー(Ingram Frizer)により、眉間をナイフで突き刺されて、不慮の死を遂げ、29歳という非常に若い生涯を閉じた。


警察当局はこれを単なる事故として処理したが、現在では、何者かによる「謀殺」と言うのが、概ね定説になっており、


(1)クリストファー・マーロウは、度重なる大学長期休学中に、イングランド政府の諜報活動に携わっていたと言う説をベースにして、何らかの口封じのために殺害されたと考える説 → 彼を殺害したイングラム・フライザーが、女王エリザベス1世(Elizabeth I:1533年ー1603年 在位期間:1558年ー1603年)の重臣で、諜報機関の長であるサー・フランシス・ウォルシンガム(Sir Francis Walsingham:1532年頃ー1590年)に使えていた人物で、事件後の審理において、簡単に無罪とされたことを根拠としている。

(2)クリストファー・マーロウは、女王エリザベス1世の廷臣であるサー・ウォルター・ローリー(Sir Walter Raleigh:1554年ー1618年)が中心となった進歩思想サークル「夜の学派」と関係があり、その口封じのために殺害されたと考える説 → クリストファー・マーロウが、無神論的な言説を度々公言していたことを根拠としている。


等の説が唱えられている。


2023年5月26日金曜日

コナン・ドイル作「恐怖の谷」<小説版>(The Valley of Fear by Conan Doyle )- その4

国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第4章「暗闇(Darkness)」
サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)の
バールストン館(Birlstone House)に到着した
シャーロック・ホームズは、
跳ね橋を渡る前に、堀の端へと歩いて行った。
そして、彼は、堀を歩いて渡った犯人が通ったと思われる
石造りの角とその向こうの草の境界を、ステッキで調べた。
挿絵:フランク・ワイルズ


1月6日の午後11時45分、バールストン館(Birlstone House)の主人であるジョン・ダグラス(John Douglas)の友人で、ハムステッド(Hampstead)のヘイルズ荘(Hales Lodge)に住むセシル・ジェイムズ・バーカー(Cecil James Barker)が、突然、地元の交番に駆け込んで来て、対応したサセックス州警察(Sussex Constabulary)のウィルスン巡査部長(Sergeant Wilson)に対して、「バールストン館において、ジョン・ダグラスが殺害された。(A terrible tragedy had occurred at the Manor House, and John Douglas had been murdered.)」と告げた。


バールストン館へと駆け付けたウィルスン巡査部長と開業医のウッド医師(Dr. Wood)は、玄関に一番近い部屋の真ん中に、男が手足を伸ばし、仰向けに倒れて、死んでいるのを発見した。

彼は、寝間着の上に、ピンク色のガウンを羽織っただけで、足には、室内用スリッパを履いていた。凶器は、男の胸の上に置かれており、それは、銃身が切り詰められた散弾銃で、至近距離から発射されたため、頭部がほとんど粉々に吹き飛んであり、判別の仕様がなかった。

死体の身元は不明だったが、状況的に、バールストン館の主人であるジョン・ダグラスであると思われた。


セシル・バーカー / ジョン・ダグラスの執事であるエイムズ(Ames)立会いの下、ウィルスン巡査部長とウッド医師が現場を調べたところ、不可解な点が、いくつかあった。


(1)死体の側の床の上に、「V.V. 341」と書かれたカードが落ちていたが、何を意味するのかは不明。

(2)死体の右前腕に、非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)があった。

(3)死体の左手の小指から、金の結婚指輪が抜き取られていた。何故か、結婚指輪の上に嵌めていた天然金塊が付いた指輪と薬指に嵌めていたスネークリングは、盗まれず、そのままになっていた。


翌1月7日の午前3時、ウィルスン巡査部長からの緊急連絡を受けて、サセックス州刑事部長(chief Sussex detective)のホワイト・メイスン(White Mason)が、バールストン館に到着すると、午前5時40分の列車で、スコットランドヤード宛に救援を要請する手紙を送った。

そして、昼の12時、彼は、バールストン駅(Birlstone station)において、シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスンとスコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)の3人を出迎えたのである。


ホワイト・メイスンは、ホームズ達3人が宿泊する予定の宿屋「ウェストヴィル アームズ(Westville Arms)」へ案内すると、事件の経緯について、3人に説明した。

ホワイト・メイスンから概略の説明を受けたホームズ達は、早速、バールストン館へと歩いて向かった。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第4章「暗闇」
サセックス州バールストンのバールストン館に到着した
シャーロック・ホームズは、
死体の右前腕にある非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)に興味を示して、
ジョン・ダグラス(John Douglas)の執事であるエイムズ(Ames)に尋ねる
被害者を除くと、画面左側から、ホームズ、
スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)、
サセックス州刑事部長(chief Sussex detective)のホワイト・メイスン(White Mason)、
執事のエイムズ、そして、ジョン・H・ワトスン。
死体を間に挟んで、ホームズの反対側に、
銃身を切り落として短くした散弾銃が置かれている。
挿絵:フランク・ワイルズ


殺害現場を調べたホームズは、以下の点に興味が引かれたようだった。


(1)死体の右前腕にある非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)

(2)死体の顎のえらのところに貼ってある小さい絆創膏

(3)死体の側の床の上に落ちていた「V.V. 341」と書かれたカード

(4)殺害に使用された銃身が切り詰められた散弾銃

(5)死体の左手の小指から、金の結婚指輪のみが抜き取られて、他の指輪が盗まれていないこと

(6)地元警察による必死の捜索にもかかわらず、午後2時になっても、濡れ鼠の不審者が未だに見つからないこと

(7)窓枠にある血が付いた靴跡(扁平足)と床の隅に付いている泥に汚れた靴跡(バランスが取れた足)が一致していないこと

(8)サイドテーブルの下に、ダンベル(鉄亜鈴)が一つしかないこと


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第4章「暗闇」
サセックス州バールストンの
バールストン館に到着した
シャーロック・ホームズは、
殺害現場の部屋の窓のところまで歩いて行くと、
拡大鏡を用いて、窓枠に付いた血の跡を調べた。
画面左側から、ホームズ、
スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部、
サセックス州刑事部長のホワイト・メイスン、そして、ジョン・H・ワトスン。
挿絵:フランク・ワイルズ

ホームズの話は、突然のノックによって中断され、セシル・バーカーが室内へと入って来た。

彼によると、犯人が乗って来たと思われる自転車が見つかった、とのこと。

それは、屋敷の玄関扉から100ヤードもない常緑樹の茂みの中に隠されていた。見つかった自転車は、泥だらけで、かなり使い古されたもので、スパナと油差しが入ったサドルバッグはあったものの、残念ながら、所有者が判るような手掛かりはなかったのである。


2023年5月25日木曜日

アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」<英国 TV ドラマ版>(Five Little Pigs by Agatha Christie )- その3

第50話「五匹の子豚」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 5 ケースの表紙 -
画面左側から、
サー・デイヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet)が演じるエルキュール・ポワロ、
Marc Warren が演じる兄メレディス・ブレイク( Meredith Blake)、
そして、Toby Stephens が演じる弟フィリップ・ブレイク(Philip Blake)の
3人が並んでいる。


英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第50話(第9シリーズ)として、2003年12月14日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1942年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。


遥々、カナダから英国へとやって来たルーシー・ルマルション(Lucy Lemarchant)こと、本名ルーシー・クレイル(Lucy Crale)から、自分の母親であるカロリン・クレイル(Caroline Crale - アミアス・クレイル(Amyas Crale - 画家)の妻 / 夫を毒殺した罪で起訴され、有罪となる)の事件の再調査を依頼されたエルキュール・ポワロは、図書館を訪れて、当時の新聞で、事件の下調べを行った。

なお、ポワロが訪れた図書館として、当時、大英博物館(British Museum → 2014年5月26日付ブログで紹介済)内にある「円形閲覧室(Round Reading Room)」が、撮影に使用されている。


大英博物館の建物前面


大英博物館の図書部門は、他の管理部門から分離の上、
1973年にロンドン国立中央図書館等と機能統合され、「大英図書館」が新たに編成。
1997年秋に、セントパンクラス駅(St. Pancras Station)に隣接した場所に大英図書館の新館が完成し、
書庫と図書館機能は大英博物館から移転。
それに伴って、旧大英博物館図書館は、円形閲覧室のみを残して、
フォスター・アンド・パートナー事務所のノーマン・フォスター卿のデザインによる
屋根付きの中庭「グレート・コート(Great Court)」へ改築。

現在、図書館機能は、大英博物館内にはなく、大英図書館(British Library → 2014年5月31日付ブログで紹介済)として独立して、別の場所に所在している。


1997年秋、ユーストンロード(Euston Road)の北側で、
セントパンクラス駅(St. Pancras Station)の西側に「大英図書館」の新館が完成し、
書庫と図書館機能は大英博物館から同新館へ移転。
なお、1857年に一般にオープンした円形閲覧室のみが、
大英博物館内に残ることとなった。


(7)

<原作>

原作の場合、ポワロは、五匹の子豚達に会いに行く前に、


*サー・モンタギュー・ディプリーチ(Sir Montague Depleach - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、弁護側を担当)

*クェンティン・フォッグ(Quentin Fogg - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、検察側を担当)

*ジョージ・メイヒュー(George Mayhew - 事務弁護士 / カロリン・クレイル事件において、弁護側を担当した事務弁護士の息子)

*クレイブ・ジョナサン(Caleb Jonathan - クレイル家の事務弁護士)


と面談して、カロリン・クレイル事件に関する情報を更に収集する。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、時間の制約の関係上、ポワロが面談するのは、サー・モンタギュー・ディプリーチだけに留まり、他の3人は登場しない。

なお、ポワロがサー・モンタギュー・ディプリーチが面談した場所として、ユニヴァーシティー・カレッジ・ロンドン(University College London → 2015年8月16日付ブログで紹介済)が、撮影に使用されている。


ユニヴァーシティー・カレッジ・ロンドンの入口から見た主要校舎ウィルキンスビル(Wilkins Building)


(8)

<原作>

原作の場合、ポワロは、五匹の子豚のうち、最初の子豚に該るフィリップ・ブレイク(Philip Blake - アミアス・クレイルの親友 /   現在は、株式仲買人)と面談する。

フィリップ・ブレイクは、アミアス・クレイルと結婚する前のカロリン・クレイルに対して求婚したが、振られた過去があり、カロリン・クレイルに好意を抱いていた。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、フィリップ・ブレイクは、カロリン・クレイルではなく、アミアス・クレイルに対して、少年の頃から、好意を抱いていたと言う人物設定に変更されている。


(9)

<原作>

原作の場合、物語の終盤、ポワロは、アミアス・クレイルの毒殺犯人として、エルサ・グリヤー(Elsa Greer - アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人 / ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham))を指摘する。

そして、ポワロは、事件再調査の依頼人であるカーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)こと、本名カロリン・クレイル(Caroline Crale)と彼女の婚約者であるジョン・ラッテリー(John Rattery)に対して、「全てが状況証拠に基づくものである関係上、母親のカロリン・クレイルの恩赦やエルサ・グリヤー(現ディティシャム卿夫人)の有罪を得られる可能性は低いものの、自分の再調査結果を警察宛に提出するつもりだ。」と語り、物語は終わりを迎える。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ポワロが、アミアス・クレイルの毒殺犯人として、エルサ・グリヤー(現ディティシャム卿夫人)を指摘した際、ルーシー・ルマルションは、ピストルを取り出すと、エルサ・グリヤーに対して、銃口を向ける。エルサ・グリヤーも、ルーシー・ルマルションに対して、「自分は、アミアス・クレイルを毒殺した14年前に、既に死んでいる。」と語り、ピストルを撃つように挑発する。それを見たポワロが、ルーシー・ルマルションに対して、


‘If you (Lucy Lemarchant) do, she (Elsa Greer) will have won.’

‘If you kill her, you kill yourself.’

‘Spare her, Mademoiselle, and justice may still be done.’


と説得して、彼女がエルサ・グリヤーを撃つことを止めさせる展開となっている。


個人的には、原作対比、英国 TV ドラマ版の結末の方が、より劇的な展開に脚色されていると思う。


2023年5月24日水曜日

アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」<英国 TV ドラマ版>(Five Little Pigs by Agatha Christie )- その2

第50話「五匹の子豚」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 5 の裏表紙 -
右側から2番目の場面が「五匹の子豚」のシーン。
なお、前面の人物がエルキュール・ポワロで、
背後の人物がメレディス・ブレイク( Meredith Blake - 左側)と
フィリップ・ブレイク(Philip Blake - 右側)である。


英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第50話(第9シリーズ)として、2003年12月14日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1942年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。


英国 TV ドラマ版の冒頭、刑務所内において、カロリン・クレイル(Caroline Crale - アミアス・クレイル(Amyas Crale - 画家)の妻 / 夫を毒殺した罪で起訴され、有罪となる)が、娘宛に手紙を書いているシーンから始まる。


(1)

<原作>

原作の場合、カロリン・クレイルは、夫のアミアス・クレイル毒殺の罪状により、「終身刑」に処せられ、1年後に獄中で死亡している。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、カロリン・クレイルは、夫のアミアス・クレイル毒殺の罪状により、「絞首刑」に処せられている。


(2)

<原作>

原作の場合、カロリン・クレイルの娘が、エルキュール・ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼するのは、「事件から16年後」である。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、カロリン・クレイルの娘が、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼するのは、「事件から14年後」である。


(3)

<原作>

原作の場合、ポワロに事件の調査を依頼するのは、カーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)こと、本名カロリン・クレイル(Caroline Crale)で、母親と名前が同じである。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、事件の依頼人の名前が、ルーシー・ルマルション(Lucy Lemarchant)こと、本名ルーシー・クレイル(Lucy Crale)へと変更されている。これは、母親との同姓同名を避けるための措置だと思われる。


ストランド通り(Strand)の反対側から見たサヴォイホテル


(4)

<原作>

原作の場合、ルーシー・ルマルションが、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼する場所は、ポワロのフラット / 事務所である。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ルーシー・ルマルションが、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼する場所は、サヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)のレストランである。


ストランド通りに面したサヴォイホテルの玄関上部

(5)

<原作>

原作の場合、カーラ・ルマルションには、ジョン・ラッテリー(John Rattery)と言う名前の婚約者が居る。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ルーシー・ルマルションには、婚約者は居ない。


(6)

<原作>

原作の場合、カーラ・ルマルションとしては、犯罪を行う傾向が、母親から、彼女本人を介して、自分の子供達へと遺伝するのではないかと非常に懸念しており、その疑念を払拭するため、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼している。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ルーシー・ルマルションは、自分の母親の無実を確信しており、純粋に、自分の母親の無罪を立証するため、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼している。