2023年5月30日火曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その8

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピア作の喜劇「ヴェニスの商人(The Merchant of Venice)」(1596年-1598年)である。

「ヴェニスの商人」では、中世イタリアのヴェニス(Venice)と架空の都市ベルモント(Belmont)を舞台にして、商取引と恋の喜劇が繰り広げられる。


グローブ座(Globe Theatre)の右斜め後ろの広場において、
悪名高い高利貸しのシャイロック(画面中央に立つ赤い服を着て、赤と黒の帽子を冠った人物)が、
お金を貸した人から返済を受けている場面が描かれている。


ヴェニスに住む高等遊民であるバサーニオ(Bassanio)は、莫大な財産を相続した美貌の貴婦人であるポーシャ(Portia)との結婚を望んでいるが、先立つものがないため、彼の友人でもある貿易商人のアントーニオ(Antonio)からお金を借りようとする。

生憎と、アントーニオの財産は、現在航海中の商船にあるため、彼はバサーニオにお金を貸すことができず、悪名高い高利貸しのユダヤ人であるシャイロック(Shylock)の元を訪れる。


正義感が強いアントーニオに自分の商売を邪魔されて、彼に対する恨みを募らせていた強欲なシャイロックは、「アントーニオが、指定された日付までに、借りたお金を返済することができない場合、自分(シャイロック)に対して、彼の肉1ポンドを与えなければならない。(If Antonio were unable to repay the sum at the specified date, Shylock may take a pound of Antonio’s flesh.)」と言う条件を提示し、アントーニオは、その条件を承諾する。


不幸なことに、アントーニオの商船は難破して、彼は全財産を失ってしまう。シャイロックは、アントーニオに対して復讐できる機会が訪れたことを非常に喜ぶ。


アントーニオが借金の返済ができなくなったことを聞いたバサーニオは、ベルモントのポーシャの元を訪れ、彼女から必要なお金を受け取ると、ヴェニスへと戻った。

ところが、シャイロックは、バサーニオのお金を頑として受け取らず、裁判に訴えて、当初の契約通り、アントーニオの肉1ポンドを要求した。


若い法学者に扮したポーシャが、この裁判を担当し、シャイロックに対して、慈悲の心を見せるように促すものの、シャイロックがこれを拒否したため、ポーシャは、シャイロックに対して、アントーニオの肉を切り取ってもよいと言う判決を下す。

シャイロックは、アントーニオの肉を喜んで切り取ろうとすると、若い法学者に扮したポーシャは、シャイロックに対して、「アントーニオの肉を切り取ってもよいが、血を流してはいけない。契約書に記載されていない血を1滴でも流した場合、契約違反として、シャイロックの全財産を没収する。(The contract allows Shylock to remove only the flesh, not the blood, of Antonio. Thus, if shylock were to shed any drop of Antonio’s blood, his lands and goods would be forfeited under Venetian law.)」と告げたのである。

対応に困ったシャイロックは、代わりにバサーニオからの返済を受けようとするが、一度拒否していたため、これは認められなかった。また、アントーニオの命を奪おうとしたことを罪に問われ、シャイロックの全財産は没収されてしまう。

アントーニオは、キリスト教徒の慈悲心から、若い法学者に扮したポーシャに対して、シャイロックの全財産没収を免じること、また、彼の財産の半分を、彼の強欲さを嫌って、婚約者のロレンゾ(Lorenzo)と駆け落ちをした彼の娘であるジェシカ(Jessica)に与えることを懇願した。更に、アントーニオの命を奪おうとした罪で、死刑になるところだったシャイロックは、キリスト教徒へと改宗させられることになる。

(20世紀初頭以降、ユダヤ人人権団体は、「本作品は、反ユダヤ主義を煽っている。」と唱え、学校教材や舞台演劇等に使用することに反対する運動を展開しており、その結果、学校教材や舞台演劇等から避けられる傾向がある、とのこと。)


ポーシャの変装に気付かなかったバサーニオは、ベルモントへと戻ったポーシャから話を聞いて、非常に驚く。

また、アントーニオの商船は、実際には難破しておらず、無事だったことが判明して、物語は終わりを迎える。


なお、タイトルの「ヴェニスの商人」とは、悪名高い高利貸しの「シャイロック」を指していると思われる傾向があるが、実際には、貿易商人の「アントーニオ」を指している。


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