2023年5月27日土曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その7

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピアの同業者である劇作家である。


<クリストファー・マーロウ(Christopher Marlowe:1564年ー1593年)>


グローブ座(Globe Theatre)の右上にある居酒屋の外で、
クリストファー・マーロウ(画面右側の人物)が、
イングラム・フライザー(画面左側の人物)によって、
ナイフで刺し殺されそうになっている場面が描かれている。

クリストファー・マーロウは、英国の劇作家 / 詩人 / 翻訳家で、ウィリアム・シェイクスピアに先駆けて、エリザベス朝演劇の基礎を築いた人物の一人と見做されている。


クリストファー・マーロウは、靴屋を営む父親のジョン・マーロウ(John Marlowe)と母親のキャサリン・アーサー(Katherine Arthur)の下、1564年2月26日に、ケント州(Kent)のカンタベリー(Cantebury)に出生。

彼の家は貧しかったが、奨学金を得て、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)に入学。両親からは、聖職者となることを期待されたものの、彼自身は、興味を全く示さず、文学に傾倒して、大学入学直後より戯曲執筆を開始。

1587年7月の大学卒業時、度重なる長期休学や国家転覆(女王エリザベス1世打倒)の陰謀に関与したと言う噂の関係で、修士号授与を取り消される可能性があったが、政府高官のコネを使って、なんとか事無きを得た。


クリストファー・マーロウは、大学在学中に執筆したと言われる戯曲「カルタゴの女王ダイドー(Dido, Queen of Carthage)」に加え、大学卒業後、本格的に文筆活動を開始して、


(1)「タンバレイン大王(Tamburlaine the Great)」 - 中央アジアの征服者であるティムールの生涯を題材にした伝記悲劇

(2)「フォースタス博士(Doctor Faustus)」- ドイツのファウスト伝説を題材

(3)「マルタ島のユダヤ人(The Jew of Malta)」- 金銭欲の権化であるユダヤ人バラバスの策謀と破滅を描く

(4)「パリの虐殺(The Massacre at Paris)」- 1572年8月24日にフランスのカトリック教徒がプロテスタント教徒を大量虐殺した「聖バーソロミューの虐殺(St. Bartholomew’s Day Massacre)」を題材

(5)「エドワード2世(Edward II)」


等の戯曲を精力的に発表したが、これらの正確な執筆時期は、不明である。


大学卒業後のクリストファー・マーロウは、無頼な生活を送っており、1593年5月30日の夜、ケント州のデットフォード(Deptford)の居酒屋に居た彼は、他の3人の客との間で、勘定争いの喧嘩に巻き込まれ、3人の客の一人であるイングラム・フライザー(Ingram Frizer)により、眉間をナイフで突き刺されて、不慮の死を遂げ、29歳という非常に若い生涯を閉じた。


警察当局はこれを単なる事故として処理したが、現在では、何者かによる「謀殺」と言うのが、概ね定説になっており、


(1)クリストファー・マーロウは、度重なる大学長期休学中に、イングランド政府の諜報活動に携わっていたと言う説をベースにして、何らかの口封じのために殺害されたと考える説 → 彼を殺害したイングラム・フライザーが、女王エリザベス1世(Elizabeth I:1533年ー1603年 在位期間:1558年ー1603年)の重臣で、諜報機関の長であるサー・フランシス・ウォルシンガム(Sir Francis Walsingham:1532年頃ー1590年)に使えていた人物で、事件後の審理において、簡単に無罪とされたことを根拠としている。

(2)クリストファー・マーロウは、女王エリザベス1世の廷臣であるサー・ウォルター・ローリー(Sir Walter Raleigh:1554年ー1618年)が中心となった進歩思想サークル「夜の学派」と関係があり、その口封じのために殺害されたと考える説 → クリストファー・マーロウが、無神論的な言説を度々公言していたことを根拠としている。


等の説が唱えられている。


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