2024年3月31日日曜日

天気予報(Weather Forecasting)記念切手 - その1

2024年2月1日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から、天気予報(Weather Forecasting)に関する8種類の記念切手が発行されたので、2回に分けて御紹介したい。


< Luke Howard, pinoeer meteorologist, classified clouds in 1803 >


< Storm barometer of Robert Fitzroy, founder of the Met Office in 1854 >

< Terra Nova Expedition studied extreme weather in 1910 - 1912 >

< Marine buoys collect data for the Shipping Forecast, first broadcast in 1924 > 

2024年3月30日土曜日

横溝正史作「本陣殺人事件」(The Honjin Murders by Seishi Yokomizo)- その4

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2019年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

横溝正史作「本陣殺人事件」の内扉
(Cover design by Anna Morrison)


1937年(昭和12年)11月25日、岡山県の旧本陣の末裔に該る一柳家(The Ichiyanagi Family)の屋敷において、

長男の一柳賢蔵(Kenzo Ichiyanagi)と小作農の出で、女学校の教師である久保克子(Katsuko Kubo)の婚礼が執り行われていた。

婚礼の式が午後9時半頃に終わると、続いて、婚礼の宴が始まった。午前1時頃に、婚礼の宴がお開きになると、新郎新婦の賢蔵と克子は、寝屋である離れ家(Annexe House)へと下がった。


明け方に近くなった時、新郎新婦の寝屋である離れ家から、悲鳴と琴を掻き鳴らす音が、突然、聞こえてきたのである。母屋で寝ていた久保銀造(Ginzo Kubo)が驚いて目を覚ますと、時計を見た。時刻は、午前4時15分だった。

久保克子の父親である久保林吉(Rinkichi Kubo)は既に亡くなっており、彼の弟で、果樹園の経営者(fruit farmer)である久保銀造(Ginzo Kubo)が、亡き兄の娘の克子を育て上げ、亡き兄に代わって、姪の克子の婚礼に出席していたのである。


雨戸を壊して、久保銀造達が離れ家の中へ入ると、賢蔵と克子の2人が、寝室の布団の上で、血塗れになって、死んでいたのである。状況が飲み込めない久保銀造達であったが、離れ家内には、布団の上で血塗れになって死んでいる賢蔵と克子の2人以外には、誰も居なかった。

不思議なことに、庭の石灯籠(stone lantern)の側の地面には、賢蔵と克子の殺害に使用したと思われる血に染まった凶器の日本刀(katana)が、突き刺さっていた。

更に、奇妙なことは、新郎新婦の賢蔵と克子が寝屋である離れ家へと下がる際に降り出して、離れ家の周囲に積もった雪の上には、賢蔵と克子の2人を殺害した犯人が逃げ出した足跡がなかったことである。


新郎新婦の賢蔵と克子の身に、一体、何が起きたのか?


久保銀造は、名探偵と見込み、自らが出資して、パトロンとなっている新進の私立探偵である金田一耕助(Kosuke Kindaichi)を呼び寄せて、事件の解明にあたらせることにした。

久保銀造は、金田一耕助が米国の大学に留学した際、その学資を出したり、日本へ戻って来た金田一耕助が探偵業を始めるにあたり、事務所の設備費や当面の生活費等を負担したりして、資金的な援助を行っていたのである。


一柳賢蔵と久保克子の殺害現場に駆け付けた磯川警部(Detective Inspector Isokawa)による指揮の下、岡山県警が捜査した結果、


(1)一柳賢蔵と久保克子の婚礼の直前に、顔を隠した上に手袋をした「3本指の男(Three-Fingered Man)」が一柳家を訪れて、一柳賢蔵宛に復讐を示唆した手紙を残したこと

(2)また、その手紙には、「君の所謂生涯の仇敵」と記してあったこと

(3)一柳賢蔵所有するアルバムの中に、「生涯の仇敵」と書かれた男の写真があったこと

(4)庭の石灯籠の側の地面に突き刺さっていた日本刀に付いていた指紋と事件の2日前に3本指の男が駅前で水を飲んだ際に使ったコップに付いていた指紋が一致したこと


等から、事件前に一柳家を訪れた3本指の男が、一柳賢蔵の「生涯の仇敵」であり、一柳賢蔵と久保克子を殺害した犯人であると考えられた。

しかし、夢遊病が疑われる次女の一柳鈴子(Suzuko Ichiyanagi - 17歳)が、一柳賢蔵と久保克子の婚礼の前夜に、死んだ愛猫の墓に参った時に、3本指の男に遭遇したと証言したが、それ以降、3本指の男の足取りは、杳としてしれなかったのである。


久保銀造に呼ばれて、一柳家へとやって来た金田一耕助は、三男の一柳三郎(Saburo Ichiyanagi - 28歳)が自分の本棚を探偵小説で一杯にしていることに非常に興味を持ち、三郎と一緒に、探偵小説における密室殺人について、議論を交わした。


奇しくも、その夜の同刻、一柳賢蔵と久保克子が殺害された離れ家で、琴の音が再び鳴り響き、重傷を負った一柳三郎が発見される。更に、一柳賢蔵と久保克子が殺害された時と同じように、庭のに、日本刀がまたもや突き立っていたのである。

離れ家から助け出された一柳三郎によると、「金田一耕助との探偵小説の談義の後、一柳賢蔵と久保克子が殺害された密室殺人の謎を解明するために、離れ家にやって来たところ、不審な男に日本刀で斬りつけられた。」とのことだった。


またしても、3本指の男による仕業なのだろうか?


日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの第1作目に該る「本陣殺人事件(The Honjin Murders)」は、1946年(昭和21年)4月から同年12月にかけて、雑誌「宝石」に連載された。

その後、明智小五郎シリーズや少年探偵団シリーズ等で有名な日本の推理作家である江戸川乱歩(1894年ー1965年)による評論の中で、「殺人の動機について、読者を納得させるところが不十分である。」との指摘を受ける。作者の横溝正史自身も、その点に関して、不満を感じていたので、江戸川乱歩による指摘部分を加筆し、現在の版が決定稿となっている。


「本陣殺人事件」は、降り積もった雪で周りを囲まれた日本家屋での密室殺人をテーマにしており、それまでは日本家屋では難しいと考えられてきた密室殺人を初めて描いた作品である。

そして、同作品は、1948年に第1回探偵作家クラブ賞を受賞している。


2024年3月29日金曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その38

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(88)ジギタリス(Digitalis)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の前にあるテーブルの上に、「キツネノテブクロ(Foxgloves)」とも呼ばれているジギタリスが入った花瓶が置かれている。


これから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1938年に発表したエルキュール・ポワロシリーズ作品「死との約束(Appointment with Death → 2021年3月13日付ブログで紹介済)」である。本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第23作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第16作目に該っている。また、本作品は、「メソポタミヤの殺人(Murder in Mesopotamia → 2020年11月8日付ブログで紹介済)」(1936年)と「ナイルに死す(Death on the Nile → 2020年10月4日付ブログで紹介済)」(1937年)に続く中近東を舞台にした長編第3作目でもある。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「死との約束」のペーパーバック版の表紙

エルキュール・ポワロは、休暇を兼ねて、エルサレム(Jerusalem)のキングソロモンホテル(King Solomon Hotel)に滞在していた。エルサレムは、三大宗教にとっての聖地であり、ユダヤ教文化、キリスト教文化、そして、イスラム教文化が入り混じる魅惑の地であった。


「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ。(You do see, don’t you, that she’s got to be killed ?)」

ポワロがホテルに宿泊した最初の晩、開け放った窓から、夜の静けさをぬって、男女の危険な囁き声をポワロは耳にした。どこへ行こうとも、彼には、犯罪が付いて回るのだろうか?


同じホテルに滞在しているボイントン一家は、行く先々で皆の注目を集めていた。家族の行動は、全て、母親であるボイントン夫人(Mrs. Boynton)中心に回っていて、全ての面において、彼女は家族の行動を監視するとともに、厳しい批判を行っていた。ボイントン夫人は、残酷な仕打ちそのものに非常な喜びを見出す精神的なサディストであり、可哀想なことに、彼女の家族全員がそのはけ口となっていたのである。


ヨルダン(Jordan)の古都ペトラ(Petra)にある遺跡等を見物するため、ボイントン一家が旅行に出かけた際、彼らが滞在しているキャンプ地において、殺人事件が発生する。家族が見物に行かせて、キャンプ地に一人残ったボイントン夫人が、洞窟の入口近くで、多量のジギトキシンを注射器で投与され、殺害されているのが見つかったのである。


ジギタリスの化学式(構造式)-
Bloomsbury Publishing Plc から出版された
キャサリン・ハーカップ作「アガサ・クリスティーと14の毒薬
(A is for Arsenic - The Poisons of Agatha Christie by Kathryn Harkup
→ 2020年5月17日 / 5月24日付ブログで紹介済)」の
ペーパーバック版から抜粋。

現地の警察署長で、ポワロの旧友でもあるカーバリー大佐(Colonel Carbury)は、偶然にも、現地に居合わせたポワロに助力を求める。


エルキュール・ポワロとカーバリー大佐を除く主な登場人物は、以下の通り。


*ボイントン夫人: 一家を支配する金持ちの老婦人

*レノックス・ボイントン(Lennox Boynton): ボイントン夫人の(義理の)長男

*ネイディーン・ボイントン(Nadine Boynton): レノックスの妻

*レイモンド・ボイントン(Raymond Boynton): ボイントン夫人の(義理の)次男

*キャロル・ボイントン(Carol Boynton): ボイントン夫人の(義理の)長女

*ジネヴラ・ボイントン(Ginevra Boynton): ボイントン夫人の次女

*ジェファーソン・コープ(Jefferson Cope): ネイディーンの友人(米国人)

*サラ・キング(Sarah King): 女医

*テオドール・ジェラール(Theodore Gerard): 心理学者(フランス人)

*ウエストホルム卿夫人(Lady Westholme): 英国下院議員

*アマベル・ピアス(Amabel Pierce): 保母


アガサ・クリスティーの小説版は、2部構成になっており、第一部については、ボイントン夫人が殺害されるまでが、そして、第2部においては、ボイントン夫人が殺害された後の顛末が描かれている。

ポワロは、全編にわたって登場する訳ではなく、キングソロモンホテルにおいて男女の危険な囁き声を耳にするプロローグと第2部のみである。


2024年3月27日水曜日

スパイス・ガールズ(Spice Girls)記念切手 - その3

2024年1月11日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から、スパイス・ガールズ(Spice Girls)に関する15種類の記念切手が発行されたので、前々回と前回に引き続き、御紹介したい。


< Spice Girls - Posh Spice >

< Spice Girls - Scary Spice >

< Spice Girls - Baby Spice >

< Spice Girls - Ginge Spice >

< Spice Girls - Sporty Spice >

< Spice Girls - Miniature Sheet >

2024年3月26日火曜日

横溝正史作「本陣殺人事件」(The Honjin Murders by Seishi Yokomizo)- その3

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2019年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

横溝正史作「本陣殺人事件」
に付されている
一柳家の離れ家の現場図 -
新郎新婦の一柳賢蔵と久保克子の2人が、
布団の上で、血塗れになって死んでいた。


1937年(昭和12年)11月25日、岡山県の旧本陣の末裔に該る一柳家(The Ichiyanagi Family)の屋敷において、

長男の一柳賢蔵(Kenzo Ichiyanagi)と小作農の出で、女学校の教師である久保克子(Katsuko Kubo)の婚礼が執り行われていた。


一柳家からは、以下の人物が、結婚式に参列していた。


(1)一柳糸子(Itoko Ichiyanagi):賢蔵の母(57歳)

(2)一柳三郎(Saburo Ichiyanagi):三男(28歳)

(3)一柳鈴子(Suzuko Ichiyanagi):次女(17歳)

(4)一柳良介(Ryosuke Ichiyanagi):賢蔵達の従兄弟(38歳)

(5)一柳秋子(Akiko Ichiyanagi):良介の妻

(6)一柳伊兵衛(Ihei Ichiyanagi):賢蔵達の父である一柳作衛(Sakue Ichiyanagi:故人)と良介の父である一柳隼人(Hayato Ichiyanagi:故人)の弟で、賢蔵達の大叔父


一柳家には、他に、


(7)一柳妙子(Taeko Ichiyanagi):長女 / 会社員と結婚して、現在、上海(Shanghai)に居住

(8)一柳隆二(Ryuji Ichiyanagi):次男(35歳) / 医者で、大阪の病院に勤務


が居るが、妙子と隆二の2人は、兄である賢蔵の婚礼には、出席していなかった。


一方、久保家の場合、久保克子の父親である久保林吉(Rinkichi Kubo)は既に亡くなっており、彼の弟で、果樹園の経営者(fruit farmer)である久保銀造(Ginzo Kubo)が、亡き兄の娘の克子を育て上げ、亡き兄に代わって、姪の克子の婚礼に出席していた。ただ、これから数時間後に、姪の克子の身に恐ろしい事件が発生するとは、久保銀造は、全く思ってもいなかったのである。


本来であれば、婚礼の席において、新婦である克子が琴を披露する習わしであったが、賢蔵の妹で、琴の演奏に卓越している鈴子が、克子に代わって、琴を披露した。


横溝正史作「本陣殺人事件」における事件関係者の系譜図
<筆者作成>


婚礼の式が午後9時半頃に終わると、続いて、婚礼の宴が始まった。

婚礼の宴の席において、賢蔵達の大叔父である伊兵衛が、酒を飲み過ぎて、泥酔してしまったため、賢蔵の弟である三郎が、伊兵衛を連れて、大叔父が住む川一村へと送って行った。その結果、三郎と伊兵衛の2人は、事件が発生した際、一柳家の屋敷には、不在だった。


午前1時頃に、婚礼の宴がお開きになると、新郎新婦の賢蔵と克子は、寝屋である離れ家(Annexe House)へと下がった。


明け方に近くなった時、新郎新婦の寝屋である離れ家から、悲鳴と琴を掻き鳴らす音が、突然、聞こえてきた。母屋で寝ていた久保銀造が驚いて目を覚ますと、時計を見た。午前4時15分だった。

久保銀造達が雨戸を壊して中へ入ると、賢蔵と克子の2人が、寝室の布団の上で、血塗れになって、死んでいたのである。

状況が飲み込めない久保銀造達であったが、離れ家内には、布団の上で血塗れになって死んでいる賢蔵と克子の2人以外には、誰も居なかった。

不思議なことに、庭の石灯籠(stone lantern)の側の地面には、賢蔵と克子の殺害に使用したと思われる血に染まった凶器の日本刀(katana)が、突き刺さっていた。

更に、奇妙なことは、新郎新婦の賢蔵と克子が寝屋である離れ家へと下がる際に降り出して、離れ家の周囲に積もった雪の上には、賢蔵と克子の2人を殺害した犯人が逃げ出した足跡がなかったことである。


新郎新婦の賢蔵と克子の身に、一体、何が起きたのか?


久保銀造は、名探偵と見込み、自らが出資して、パトロンとなっている新進の私立探偵である金田一耕助(Kosuke Kindaichi)を呼び寄せて、事件の解明にあたらせることにした。


2024年3月24日日曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その37

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(85)拳銃(pistol)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある本棚の一番上に、拳銃が置かれている。


(86)回転式連発拳銃(revolver)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の左下に、一人掛けのソファーが置かれているが、そのソファーの上に、回転式連発拳銃が置かれている。


(87)短剣(dagger)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の左側にある本棚の一番上の棚の右端に、短剣が置かれている。


アガサ・クリスティーの全作品を通して、拳銃、回転式連発拳銃や短剣は、凶器として、頻繁に使用されている。


2024年3月23日土曜日

スパイス・ガールズ(Spice Girls)記念切手 - その2

2024年1月11日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から、スパイス・ガールズ(Spice Girls)に関する15種類の記念切手が発行されたので、前回に引き続き、御紹介したい。


< Spice Girls (Baby Spice) - Wembley in 1998 >

< Spice Girls - Istanbul in 1997 >

< Spice Girls (Posh Spice) - New York in 2008 >

< Spice Girls - Dublin in 1998 >

< Spice Girls (Scary Spice) - Brit Awards in 1997 >

2024年3月22日金曜日

J・K・ローリング(J. K. Rowling)

英国のナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery → 2022年7月16日付ブログで紹介済)に
展示されている J・K・ローリングの肖像画 -
英国の肖像画家であるステュアート・ピアソン・ライト
(Stuart Pearson Wright:1975年ー)による作品で、
生活保護と住宅手当を受けながら、貧困と心労の中、
ハリー・ポッターシリーズの第1作目に該る
「ハリー・ポッターと賢者の石」を執筆した J・K・ローリングを
描いたものと思われる。
oil on board construction with coloured pencil on paper, 2005
972 mm x 720 mm (38 1/4 inches x 28 3/8 inches)


英国の作家 / 慈善家 / 映画プロデューサー / 脚本家である J・K・ローリング(J. K. Rowling)こと、ジョアン・ローリング(Joanne Rowling:1965年ー)は、ハリー・ポッター(Harry Potter)シリーズの原作者として有名である。


彼女は、25歳までに小説を2作品執筆したものの、全く日の目を見ず、生活保護と住宅手当を受けながら、貧困と心労の中、30歳(1995年)の時、エディバラ(Edinburgh)にあるカフェ「The Elephant House」において、ハリー・ポッターシリーズの第1作目「ハリー・ポッターと賢者の石(Harry Potter and the Philosopher’s Stone)」を書き上げた。

1996年に、同書が英国のブルームスベリー出版社から刊行されることが決まった。その際、同書のターゲットとなる少年にとって、女性作家による作品だと知られないために、ブルームスベリー出版社は、彼女に対し、ペンネームとして、イニシャルを用いるよう、求めた。生憎と、彼女は、ミドルネームがなかったため、祖母のキャスリーン(Kathleen)に因んで、「J・K・ローリング」をペンネームとしたのである。


1997年6月26日に、ハリー・ポッターシリーズの第1作目「ハリー・ポッターと賢者の石」が英国で発売されると、ハリー・ポッターシリーズは、世界中で大反響を呼び、全7作品で4億部以上を売り上げ、史上最も売れたシリーズ作品となっている。

2000年に、J・K・ローリングは、児童文学への貢献を評価されて、英国勲功章(OBE)を受章している。


J・K・ローリングの作品は、以下の通り。


<ハリー・ポッターシリーズ>

*「ハリー・ポッターと賢者の石」(1997年)

*「ハリー・ポッターと秘密の部屋(Harry Potter and the Chamber of Secrets)」(1998年)

*「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban)」(1999年)

*「ハリー・ポッターと炎のゴブレット(Harry Potter and the Goblet of Fire)」(2000年)

*「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(Harry Potter and the Order of the Phoenix)」(2003年)

*「ハリー・ポッターと謎のプリンス(Harry Potter and the Half-Blood Prince)」(2005年)

*「ハリー・ポッターと死の秘宝(Harry Potter and the Deathly Hallows)」(2007年)


*「カジュアル・ベイカンシー 突然の空席(The Casual Vacancy)」(2012年)


<私立探偵コーモラン・ストライクシリーズ>

*「カッコウの呼び声 私立探偵コーモラン・ストライク(The Cuckoo’s Calling)」(2013年)

*「カイコの紡ぐ嘘 私立探偵コーモラン・ストライク(The Silkworm)」(2014年)

*「Career of Evil」(2015年)

*「Lethal White」(2018年)

*「Troubled Blood」(2020年)

*「The Ink Black Heart」(2022年)

*「The Running Grave」(2023年)


私立探偵コーモラン・ストライクシリーズは、「J・K・ローリング」名義ではなく、「ロバート・ガルブレイス(Robert Galbraith)」名義で出版されている。


<ファンタスティック・ビーストシリーズ>

*「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(Fantastic Beasts and Where to Find Them)」(2016年)

*「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(Fantastic Beasts and The Crimes of Grindelwald)」(2018年)

*「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密(Fantastic Beasts and The Secrets of Dumbledore)」(2022年)


ファンタスティック・ビーストシリーズは、ハリー・ポッターシリーズのスピンオフ映画で、原作に加えて、脚本も担当している。 


2024年3月21日木曜日

横溝正史作「本陣殺人事件」(The Honjin Murders by Seishi Yokomizo)- その2

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2019年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

横溝正史作「本陣殺人事件」の裏表紙
(Cover design by Anna Morrison)


日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの第1作目に該る「本陣殺人事件(The Honjin Murders)」(1946年ー1947年)は、岡山県(Okayama Prefecture)に疎開した作者が、人伝てに聞いた話を纏めたと言う形式を採っている。

作者の横溝正史が、事件の舞台として、岡山県に設定したのは、彼の両親(父:宜一郎 / 母:波摩)が岡山県出身であるためだと思われる。なお、横溝正史は、1902年5月24日、兵庫県神戸市に出生している。


「本陣殺人事件」は、1946年(昭和21年)4月から同年12月にかけて、雑誌「宝石」に連載された。

出版社宛に送った第1回の原稿において、作者の横溝正史は、「本陣殺人事件」と言うタイトルでは、一般読者に判りづらいのではないかと考え、当初、「妖琴殺人事件」と言うタイトルを付けた。ただ、「妖琴殺人事件」と言うタイトルでは、第二次世界大戦(1939年ー1945年)/ 太平洋戦争(1941年ー1945年)前における自己の作風が連想される可能性があると思い直し、戦後の新たな出発のために、原稿を送った後、横溝正史は、出版社に対して、電報でタイトルの変更を伝えたのである。

そう言った経緯もあって、物語の第1章である「3本指の男(The Three-Fingered Man)」の冒頭に、「妖琴殺人事件(The Koto Murder Case)」と言う表現が残っている。


また、物語の冒頭、作者が人伝てに「本陣殺人事件」の話を聞いた際、以下の推理小説に出てきた事件に類似していると述べている。


(1)フランスの小説家 / 新聞記者であるガストン・ルイス・アルフレッド・ルルー(Gaston Louis Alfred Leroux:1868年ー1927年)作「黄色い部屋の謎」(原題:Le Mystere de la Chambre Jaune / 英題:The Mystery of the Yellow Room → 2017年9月23日付ブログで紹介済)


(2)フランスの小説家であるモーリス・マリー・エミール・ルブラン(Maurice Marie Emile Leblanc:1864年ー1941年)作「虎の牙(原題:Les Dents Du Tigre / 英題:The Teeth of the Tiger)


(3)米国の推理作家である S・S・ヴァン・ダイン(S. S. Van Dine)作「カナリア殺人事件(The Canary Murder Case)」(1927年)と「ケンネル殺人事件(The Kennel Murder Case)」(1931年)


なお、S・S・ヴァン・ダインはペンネームで、本名は、美術評論家のウィラード・ハンティントン・ライト(Willard Huntington Wright:1888年ー1939年)である。


(4)米国の推理作家であるカーター・ディクスン(Carter Dickson)作「黒死荘の殺人」(The Plague Court Murders → 2018年5月6日 / 5月12日付ブログで紹介済)(1934年)


なお、カーター・ディクスンは、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)による別のペンネームである。


(5)米国の推理作家である ロジャー・スカーレット(Roger Scarlett)作「エンジェル家の殺人(Murder Among the Angells)」(1932年)


なお、ロジャー・スカーレットは、実は、イヴリン・ペイジ(Evelyn Page:1902年ー1977年)とドロシー・ブレア(Drothy Blair:1903年ー1976年)と言う女性2人のペンネームである。


1937年(昭和12年)11月25日、岡山県の旧本陣の末裔に該る一柳家(The Ichiyanagi Family)の屋敷において、

長男の一柳賢蔵(Kenzo Ichiyanagi)と小作農の出で、女学校の教師である久保克子(Katsuko Kubo)の婚礼が執り行われていた。

久保克子の父親である久保林吉(Rinkichi Kubo)は既に亡くなっており、彼の弟で、果樹園の経営者(fruit farmer)である久保銀造(Ginzo Kubo)が、亡き兄の娘の克子を育て上げ、亡き兄に代わって、姪の克子の婚礼に出席していた。ただ、これから数時間後に、姪の克子の身に恐ろしい事件が発生するとは、久保銀造は、全く思ってもいなかったのである。

 

2024年3月19日火曜日

スパイス・ガールズ(Spice Girls)記念切手 - その1

2024年1月11日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から、スパイス・ガールズ(Spice Girls)に関する15種類の記念切手が発行されたので、3回に分けて御紹介したい。


スパイス・ガールズは、1994年に結成された英国の女性アイドルグループで、オリジナルメンバーは、以下の5人。


(1)ジェリ・ハリウェル=ホーナー(Geri Halliwell-Horner:1972年ー)- 愛称:ジンジャー・スパイス(Ginger Spice)

(2)メラニー・チズム(Melanie Jayne Chisholm:1974年ー)- 愛称:スポーティー・スパイス(Sporty Spice)/ 通称:メル  C(Mel C)

(3)ヴィクトリア・キャロライン・ベッカム(Victoria Caroline Beckham / 旧姓:アダムス(Adams):1974年ー)- ポッシュ・スパイス(Posh Spice)

(4)メラニー・ブラウン(Melanie Janine Brown:1975年ー)- 愛称:スケアリー・スパイス(Scary Spice)/ 通称:メル  B(Mel B)

(5)エマ・バントン(Emma Lee Bunton:1976年ー)- 愛称:ベイビー・スパイス(Baby Spice)


スパイス・ガールズは、英国のレコードレーベルであるヴァージンレコード(Virgin Records)と契約して、1996年7月8日に「ワナビー(Wannabe)」でデビュー、全英1位を獲得し、世界的な成功を収める。


スパイス・ガールズには、2度の活動休止 / 再結成があり、活動期間は、「1994年ー2001年」、「2007年ー2008年」と「2018年ー」の3つに分かれている。


< Spice Girls - Brit Awards in 1997 >

< Spice Girls (Sporty Spice) - Brit Awards in 1998 >

< Spice Girls - Olympic Ceremony in 2012 >

< Spice Girls (Ginger Spice) - Brit Awards in 1997 >

< Spice Girls - San Jose in 2007 >

2024年3月18日月曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その36

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(84)チュニジアの短剣(Tunisian dagger)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある本棚の一番上の棚に、チュニジアの短剣が置かれている。


これから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1926年に発表したエルキュール・ポワロシリーズ作品「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」である。本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第6作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第3作目に該っている。

本作品の場合、元々、1925年7月16日から同年9月16日にかけて、「ロンドン イーヴニング ニュース(London Evening News)」紙上、「Who Killed Ackroyd?」というタイトルで、54話の連載小説として掲載され、その後、1冊の書籍として刊行された。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「アクロイド殺し」のペーパーバック版の表紙

本作品では、キングスアボット村(King's Abbot)に住むジェイムズ・シェパード医師(Dr. James Sheppard)が「わたし」という語り手になって、事件を記録している。

同村のキングスパドック館(King's Paddock)に住むドロシー・フェラーズ夫人(Mrs. Dorothy Ferrars)は、裕福な未亡人で、村のもう一人の富豪であるロジャー・アクロイド(Roger Ackroyd)との再婚が噂されていたが、9月17日(金)の朝、亡くなっているのが発見された。

検死を実施した結果、「わたし」は睡眠薬の過剰摂取と判断したが、噂好きな姉のキャロライン・シェパード(Caroline Sheppard)は、夫人の死を自殺だと出張するのであった。何故ならば、同村では、ドロシー・フェラーズ夫人が、酒好きで、だらしのない夫アシュリー・フェラーズ(Ashley Ferrars)を殺害したという噂も流布していたからである。


外出した「わたし」は、偶然出会ったロジャー・アクロイドから「相談したいことがある。」と言われ、彼が住むフェルンリーパーク館(Fernly Park)での夕食に招待された。

その日の午後7時半に、彼の屋敷を訪ねた「わたし」は、(1)ロジャー・アクロイド、(2)彼の義理の妹で、未亡人のセシル・アクロイド夫人(Mrs. Cecil Ackroyd)、(3)セシル・アクロイド夫人の娘フローラ・アクロイド(Flora Ackroyd)、(4)ロジャー・アクロイドの旧友ヘクター・ブラント少佐(Major Hector Blunt)、そして、(5)ロジャー・アクロイドの秘書ジェフリー・レイモンド(Geoffrey Raymond)と食事をした際、その席上、フローラ・アクロイドが、ロジャー・アクロイドの養子ラルフ・ペイトン大尉(Captain Ralph Paton)との婚約を発表する。


食事の後、書斎へ移動した「わたし」は、ロジャー・アクロイドから悩みを打ち明けられる。

彼によると、昨日(9月16日)、再婚を考えていたドロシー・フェラーズ夫人から「夫のアシュリー・フェラーズを毒殺した。」と告白された、と言うのである。その上、彼女はそのことで正体不明の何者かに強請られていた、とのことだった。

ちょうどそこに、ドロシー・フェラーズ夫人からの手紙が届く。ロジャー・アクロイドは、その手紙を開封しようとしたが、彼女を強請っていた恐喝者の名前を知らせる内容が書かれているものと考えた彼は「落ち着いて、後で一人でゆっくりと読むつもりだ。」と告げると、「わたし」に帰宅を促すのであった。


徒歩での帰宅途中、「わたし」は見知らぬ男性にフェルンリーパーク館、即ち、ロジャー・アクロイド邸への道を尋ねられる。

「わたし」が自宅に戻ると、急に電話の音が鳴り響く。「わたし」が受話器をとると、それは、ロジャー・アクロイドの執事ジョン・パーカー(John Parker)だった。彼によると、ロジャー・アクロイドが部屋で亡くなっている、とのことだった。

「わたし」は、姉のキャロラインにそのことを知らせると、車に飛び乗り、ロジャー・アクロイド邸へと戻った。


ロジャー・アクロイド邸に着いた「わたし」を出迎えたジョン・パーカーに電話のことを尋ねると、彼は「そんな電話をした覚えはない。」と答えるのであった。

ロジャー・アクロイドのことが心配になった「わたし」が、ジョン・パーカーと一緒に、彼の部屋へ赴くと、彼は刺殺されていて、ドロシー・フェラーズ夫人から届いた手紙も消えていた。


フローラ・アクロイドの婚約者で、ロジャー・アクロイドの遺産を相続することになるラルフ・ペイトン大尉が姿を消したため、地元警察は、彼を有力な容疑者と考え、彼の行方を追う。

ラルフ・ペイトン大尉の身を案じたフローラ・アクロイドは、私立探偵業から隠退し、キングスアボット村の「わたし」の隣りに引っ越して、カボチャ栽培に精を出していたエルキュール・ポワロに、事件の真相解明を依頼するのであった。