2024年3月12日火曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その34

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(82)誹謗中傷の手紙(poison pen letters)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右下に、一人掛けのソファーが置かれているが、その上に座る彼女の飼い犬の前足が、誹謗中傷の手紙を押さえている。


これから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1942年に発表したミス・ジェーン・マープルシリーズ作品「動く指(The Moving Finger)」である。本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第33作目に該り、ミス・ジェーン・マープルシリーズの長編のうち、第3作目に該っている。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作ミス・ジェーン・マープルシリーズ
「動く指」のペーパーバック版の表紙
<イラスト:ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)>

戦時中の飛行機事故によって重傷を負ったジェリー・バートン(Jerry Burton)は、医者の勧めを受けて、妹のジョアナ(Joanna Burton)の介護の下、ロンドンからリムストック(Lymstock)へ静養にやって来て、丘の上の家を借りた。

それは、丘の上の家の静かな佇まいが二人の気に入ったこともあるが、二人とも、リムストックに来たのが初めてで、近所に知り合いが居ないことも、プラス要因だった。


ジェリーとジョアナの二人が丘の上の家に落ち着いて、まもなく、


*大家である老齢のエミリー・バートン(Miss Emily Barton)

*弁護士であるリチャード・シミントン(Mr. Richard Symmington)の妻のモナ・シミントン(Mrs. Mona Symmington)

*医師であるオーウェン・グリフィス(Dr. Owen Griffith)の妹のエメ・グリフィス(Aimee Griffith)

*牧師であるケイレブ・デイン・カルスロップ(Reverend Caleb Dane Calthrop)の妻のモード・デイン・カルスロップ(Mrs. Maud Dane Calthrop)

*修道院長の末裔であるパイ氏(Mr. Pye)


といった面々が、ジェリーとジョアナの二人の元を次々と訪れる。


彼らの訪問から1週間程が経った頃、ジェリーとジョアナの二人は、差出人不明の手紙を受け取った。その手紙には、「ジェリーとジョアナは、本当の兄弟ではない。」と言う内容が、下品な表現で書かれていた。所謂、誹謗中傷の手紙だった。

手紙の内容を読んだジョアナは、一旦は憤慨するものの、結局は面白がった。一方、ジェリーは、馬鹿馬鹿しいと思い、手紙を暖炉にくべた。ジェリーは、表面上は、平然とした風を装っていたが、内心は穏やかではなかった。

そこで、ジェリーは、オーウェン・グリフィス医師が往診に来た際、彼に匿名の手紙のことを打ち明ける。ジェリーから話を聞いたグリフィス医師によると、リムストック内では、以前から住民を誹謗中傷する怪文書が出回っている、とのことだった。グリフィス医師も、その怪文書の被害者だったし、シミントン弁護士も、その中に含まれていた。


そして、匿名の怪文書は、新たな悲劇を引き起こす。リムストックの住民達が恐れていたことが、遂に、手紙の受取人の自殺と言う形で、現実のものとなったのである。シミントン弁護士の妻であるモナが、服毒死を遂げたのだ。


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