2024年1月31日水曜日

アガサ・クリスティー エルキュール・ポワロ 2024年カレンダー(Agatha Christie - Hercule Poirot - Calendar 2024)- 「雲をつかむ死(Death in the Clouds)」

英国とフランスの間に横たわる大空と海を背景にした表紙が、

エルキュール・ポワロがパリからロンドンへと戻る飛行機の中で飛び回ったスズメバチの形に切り取られている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2024年カレンダーのうち、9番目を紹介したい。


(9)長編「雲をつかむ死(Death in the Clouds)」(1935年)


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第17作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第10作目に該っている。



名探偵エルキュール・ポワロは、パリ(Le Bourget Airfield)からロンドン(Croydon Airport)へと戻る飛行機の機上の人となっていた。ポワロは、飛行機の後部区画の座席に座っていたが、この後部区画には、彼以外に、10名の搭乗客が居た。


(1)ダニエル・クランシー(Daniel Clancy - 推理作家)

(2)アルマン・デュポン(Armand Dupont - 考古学者)

(3)ジャン・デュポン(Jean Dupont - 考古学者アルマン・デュポンの息子)

(4)ノーマン・ゲイル(Norman Gale - 歯科医)

(5)ブライアント医師(Dr. Bryant - 耳鼻咽喉科医)

(6)マダム・ジゼル(Madame Giselle - フランス人の金貸し / 本名:マリー・モリソー(Marie Morisot))

(7)ジェイムズ・ライダー(James Ryder - セメント会社の支配人)

(8)シシリー・ホーバリー(Cicely Horbury - 伯爵夫人)

(9)ヴェニーシャ・カー(Venetia Kerr - 貴族の令嬢)

(10)ジェーン・グレイ(Jane Grey - 美容院の助手)


機内では、ポワロは、ほとんどの時間、眠っていたが、飛行機が英国側に着陸する間近になると、後部区画内をスズメバチが飛び回り始めたため、スチュワードがそのスズメバチを捕まえようとしたところ、乗客の一人であるマダム・ジゼルが死んでいるのを発見する。

目が覚めたポワロは、マダム・ジゼルが亡くなっていることを聞くと、彼女がスズメバチに刺されたショックで死亡したとういう説を否定する。ポワロの指摘通り、亡くなったマダム・ジゼルが座っていた座席の近くの床の上に、毒が塗られた矢の先端が落ちており、その矢で首を刺されたことが、マダム・ジゼルの死亡原因であることが判明する。


更に、驚くことには、ポワロが座っていた座席の脇から、毒が塗られた矢の先端を発射したと思われる小さな吹き矢の筒が見つかった。

マダム・ジゼル殺害の容疑者とされたことに立腹したポワロは、汚名を返上するべく、事件を解決することを誓う。そして、ポワロは、ジェーン・グレイの協力を得ると、英国側のジャップ警部(Inspector Japp)/ フランス側のフルニエ警部(Inspector Fournier)と協力して、捜査を進めていくのであった。


吹き矢の筒は、マダム・ジゼル殺害に使用された毒矢の先端を発射したものと考えられ、ポワロが座っていた座席の脇から発見された。飛行機は、ポワロやマダム・ジゼル達がパリからロンドンへと向かう際に使った乗機である。スズメバチは、飛行機が英国側に着陸する間近になると、後部区画内を飛び回り始めた虫で、当初は、スズメバチに刺されたショックにより、マダム・ジゼルは亡くなったものと考えられていた。


2024年1月30日火曜日

ピーター・スワンスン作「8つの完璧な殺人」(Rules for Perfect Murders by Peter Swanson) - その1

英国の Faber & Faber Limited から
2020年に刊行されている

ピーター・スワンスン作「8つの完璧な殺人」のペーパーバック版の表紙
(Design by Faber +
Cover image by Kasia Baumann / Getty.Shutterstock)


本作品「8つの完璧な殺人(Rules for Perfect Murders)」は、米国の小説家であるピーター・スワンスン(Peter Swanson:1968年ー)が2020年に発表したものである。


1968年5月26日、マサチューセッツ州(Commonwealth of Massachusetts)のコンコード(Concord)に生まれたピーター・スワンスンは、コネチカット州のトリニティーカレッジ、マサチューセッツ大学アマースト校やエマースンカレッジで学んだ後、2014年に作家デビュー。


ピーター・スワンスンの著作は、以下の通り。


(1)「時計仕掛けの恋人(The Girl with a Clock for a Heart)」(2014年)

(2)「そしてミランダを殺す(The Kind Worth Killing)」(2015年)

(3)「ケイトが恐れるすべて(Her Every Fear)」(2017年)

(4)「アリスが語らないことは(All the Beautiful Lies)」(2018年)

(5)「だからダスティンは死んだ(Before She Knew Him)」(2019年)

(6)「8つの完璧な殺人」(2020年)

(7)「Every Vow You Break: A Novel」(2021年)

(8)「Nine Lives: A Novel」(2022年)

(9)「The Kind Worth Saving」(2023年)


本作品「8つの完璧な殺人」は、彼の第6作目に該る推理小説で、日本語翻訳版が、2023年8月に、東京創元社から刊行されている。

なお、本作品は、


*第6位<週刊文春>2023ミステリーベスト10 海外部門

*第8位「このミステリーがすごい!2024年版」海外編

*第8位<ハヤカワ・ミステリマガジン>ミステリが読みたい!2024年版 海外篇

*第9位「2024本格ミステリ・ベスト10」海外篇


に選出された。


2024年1月29日月曜日

アガサ・クリスティーのトランプ(Agatha Christie - Playing Cards)- その6

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、昨年(2023年)に発行されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)をテーマにしたトランプの各カードについて、引き続き、紹介したい。


(17)5 ♠️「フェリシティー・レモン(Felicity Lemon)」



フェリシティー・レモンは、エルキュール・ポワロの有能な秘書である。彼女には、ヒッコリーロード26番地(26 Hickory Road)にある学生寮で寮母をしている未亡人のハバード夫人(Mrs. Hubbard)と言う姉が居る。

不思議なことだが、エルキュール・ポワロシリーズにおいて、彼女が登場する作品は、長編3作と中短編4作と非常に少ない。

一方で、フェリシティー・レモンは、パーカー・パイン(Parker Pyne)シリーズにおいて、彼の秘書も務めている。


登場作品

<長編>

*「ヒッコリーロードの殺人(Hickory Dickory Dock)」(1955年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「第三の女(Third Girl)」(1966年)- エルキュール・ポワロシリーズ

<短編集>

*「パーカー・パイン登場(Parker Pyne Investigates)」(1934年)- パーカー・パインシリーズ

*「レガッタデーの事件(The Regatta Mystery)」(1939年)

 ・「あなたの庭はどんな庭?(How Does Your Garden Grow ?)」- エルキュール・ポワロシリーズ

*「ヘラクレスの冒険(The Labours of Hercules)」(1947年)

 ・「ケルベロスの捕獲(The Capture of Cerberus)」- エルキュール・ポワロシリーズ


(18)5 ❤️「チェスのビショップの駒(Bishop Chess Piece)」



長編「ビッグ4(The Big Four)」(1927年)において、チェスの名人であるサヴァロノフ医師(Dr. Savaronoff)に、米国人の青年で、チェスのチャンピオンであるギルモア・ウィルスン(Gilmour Wilson)が挑戦する。ところが、チェスの試合中、ギルモア・ウィルスンが、突然、死亡した。彼が手に握っていたのが、ビショップの駒だった。

当初、彼の死は自然死と思われていたが、エルキュール・ポワロは、「ビッグ4」のナンバー4によって、殺害されたものと考えるのであった。


「ビッグ4」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第7作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第4作目に該っている。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ビッグ4」のペーパーバック版の表紙


(19)5 ♣️「リンゴが浮かべられたバケツ(Apple-bobbing Bucket)」



長編「ハロウィーン・パーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)において、女性推理作家として有名なアリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)は、ロンドンから30ー40マイル程離れた町ウッドリーコモン(Woodleigh Common)に住む友人のジュディス・バトラー(Judith Butler)宅に滞在していた。

ウッドリーコモンの中心的な存在であるロウィーナ・ドレイク夫人(Mrs. Rowena Drake)が、学校の生徒達のために、ハロウィーンパーティーを主催することになり、オリヴァー夫人も参加する運びとなった。


ハロウィーンパーティーを晩に控えた午後、ドレイク夫人宅「リンゴの木荘(Apple Trees House)」において、学校の生徒達が準備の手伝いをしていた。その際、生徒の一人である13歳のジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)が、突然、「ずっと前に殺人を目撃したことがある。ただ、当時は、それが殺人だと判らなかった。(I witnessed a murder once, when I was little. I didn’t understand what was going on at the time.)」と言い出した。

ジョイスの話を聞いた他の生徒達は、日頃からジョイスが人の関心を惹くために、いろいろと嘘をつくので、彼女を全く相手にしない。ドレイク夫人宅に準備の手伝いに来ていたオリヴァー夫人も、ジョイスが推理作家である自分の気を引こうとしているものと思い、彼女の話を本気にしなかった。


ドレイク夫人宅において、ハロウィーンパーティーが行われた日の翌日の晩、オリヴァー夫人が、ロンドンのエルキュール・ポワロ宅に電話をかけてきた後、慌ててやって来る。オリヴァー夫人は、ポワロに対して、ヒステリー気味に話を始める。

ハロウィーンパーティーが終わった後、以前殺人を目撃したことがあると言っていたジョイスが、ドレイク夫人宅の図書室において、リンゴが浮かぶブリキのバケツに頭を押し込まれて、溺死しているのが見つかったのである。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ハロウィーンパーティー」のペーパーバック版の表紙


「ハロウィーン・パーティー」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第60作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第31作目に該っている。


(20)5 ♦️「ルーベンスの絵画(Rubens Painting)」



短編集「ヘラクレスの冒険」(1947年)に収録されている短編「ヒッポリュテの帯(The Girdle of Hyppolita)」において、暴動とともに行方が判らなくなったピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens:1577年ー1640年 / バロック期のフランドルの画家で、外交官)の絵画が、物語の主題となる。

ルーベンスの絵画の行方を追って、エルキュール・ポワロがフランスへ旅立とうとしたところ、列車から少女が蒸発した事件の情報が、彼の元にもたらされた。

行方不明となったルーベンスの絵画と少女の蒸発事件の間に、何か関連性があるのだろうか?


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ヘラクレスの冒険」のペーパーバック版の表紙


2024年1月28日日曜日

シャーロック・ホームズのトランプ(Sherlock Holmes - Playing Cards)- その9

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2022年)に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプの各カードについて、前回に引き続き、紹介したい。


(29)8 ❤️「ビリー(Billy)」



ビリーは、ベーカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)の給仕である。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1921年10月号「マザリンの宝石」に掲載された挿絵 -
ある夏の晩7時頃、ジョン・H・ワトスンがシャーロック・ホームズの元を訪れるところから、物語が始まる。
 給仕のビリーによると、ホームズは現在ある事件にかかりきりだと言う。
ホームズは、昨日、職探しの職人に、そして、今日は老婆に変装して出かけた、とのこと。
ビリーがワトスンにこっそり教えてくれたところでは、
「マザリンの宝石(Mazarin Stone)」という10万ポンドもする王冠のダイヤモンド盗難事件のためのようだ。また、窓辺には、(「空き家の冒険(The Empty House)」でも使われた)ホームズの蝋人形が置かれていた。その時、寝室のドアが開いて、ホームズが姿を見せたのであった。
ホームズ曰く、「自分には、危険が迫っている。」と言う。
画面左側から、ホームズの蝋人形、ビリー、そして、ワトスン。

登場作品

<長編>

*「恐怖の谷(The Valley of Fear  → 2023年5月12日 / 5月17日 / 5月21日 / 5月26日 / 5月29日 / 6月5日付ブログで紹介済))」- シャーロック・ホームズシリーズの長編小説4作のうち、4番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1914年9月号から1915年5月号にかけて掲載された。また、米国でも、「ニューヨーク トリビューン(The New-York Tribune)」の日曜版に連載された。

<短編>

*「マザリンの宝石(The Mazarin Stone)」- ホームズシリーズの短編小説56作のうち、45番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1921年10月号に、また、米国では、「ハーツ インターナショナル(Heart's International)」の1921年11月号 に掲載された。

また、同作品は、1927年に発行されたホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿(The Case-Book of Sherlock Holmes)」に収録されている。

「ソア橋の謎(The Problem of Thor Bridge)」- ホームズシリーズの短編小説56作のうち、46番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1922年2月号 / 3月号に、また、米国では、「ハーツ インターナショナル」の1922年2月号 / 3月号に掲載された。

また、同作品は、ホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿」(1927年)に収録されている。


(30)8 ♠️マギンティー支部長(Bodymaster McGinty)



マギンティー支部長は、「恐怖の谷」の第2部「スカウラーズ(The Scowrers)」に登場する人物で、米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷(Vermissa Valley)にある炭鉱街において、表現上は、労働者の秘密結社であるが、実質的には、マフィアの集団となっている「スカウラーズ(The Scowrers)」を牛耳っていた。


英国で出版された「ストランドマガジン」の
「恐怖の谷」に掲載された挿絵 -
米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷にある炭鉱街において、
表現上は、労働者の秘密結社であるが、実質的には、マフィアの集団となっている
「スカウラーズ」を牛耳る
マギンティー支部長(画面中央の人物)は、
炭鉱街を「恐怖の谷」へと化せていた。


「恐怖の谷」は、ホームズシリーズの長編第4作目で、英国では、「ストランドマガジン」の1914年9月号から1915年5月号にかけて連載された後、単行本化。また、米国でも、「ニューヨーク トリビューン」の日曜版に連載された。


(31)8 ♦️「パーシー・フェルプス(Percy Phelps)」



パーシー・フェルプスは、「海軍条約文書(The Naval Treaty)」に登場する人物で、ジョン・H・ワトスンの古い学友で、現在、外務省の要職に就いており、事件の依頼人となる。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1893年10月号「海軍条約文書」に掲載された挿絵 -
ジョン・H・ワトスンと一緒に、
ウォーキング(Working)のブライアブレイ屋敷(Briarbrae)を訪れたシャーロック・ホームズは、
アニー・ハリスン(Annie Harrison)の同席の下、
外務省において責任ある職に就いているパーシー・フェルプスから、事件の詳細な説明を受ける。
画面左側から、ホームズ、ワトスン、アニー・ハリスン、そして、パーシー・フェルプス。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)


「海軍条約文書」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、23番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年10月号に、また、米国でも、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年10月14日号 / 10月21日号に掲載された。

また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。


(32)8 ♣️スタンリー・ホプキンス警部(Inspector Athelney Jones)



スタンリー・ホプキンス警部は、アセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones → 2024年x月x日付ブログで紹介済)と同じく、スコットランドヤードの警察官である。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1904年7月号「金縁の鼻眼鏡」に掲載された挿絵 -
1894年11月も終わりに近付いた激しい嵐の夜、
スタンリー・ホプキンス警部(Inspector Stanley Hopkins)が、
ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れる。
ケント州(Kent)チャタム(Chatham)に所在する
コーラム教授(Professor Coram)の
ヨクスリーオールドプレイス屋敷(Yoxley Old Place)の書斎の床で、
教授の秘書であるウィロビー・スミス(Willoughby Smith)青年が
虫の息で発見された事件について、相談に来たのである。
画面手前左側の人物がホームズで、画面手前右側の人物がホプキンス警部。
そして、画面奥の人物が、ジョン・H・ワトスン。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット(1860年 - 1908年)


登場作品

<短編>

「ブラック・ピーター(Black Peter)」- ホームズシリーズの短編小説56作のうち、30番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1904年3月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1904年2月27日号に掲載された。

また、同作品は、1905年に発行されたホームズシリーズの第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」に収録されている。

*「金縁の鼻眼鏡(The Golden Pince-Nez)」- ホームズシリーズの短編小説56作のうち、34番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1904年7月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー」の1904年10月29日号に掲載された。

また、同作品は、ホームズシリーズの第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還」(1905年)に収録されている。

*「アビー屋敷(The Abbey Grange)」- ホームズシリーズの短編小説56作のうち、36番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1904年9月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー」の1904年12月31日号に掲載された。

また、同作品は、ホームズシリーズの第3短編集である「シャーロック・ホームズの帰還」(1905年)に収録されている。


2024年1月27日土曜日

アガサ・クリスティー エルキュール・ポワロ 2024年カレンダー(Agatha Christie - Hercule Poirot - Calendar 2024)- 「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」

表紙が、ブリッジで使われるトランプ(playing cards)のハートの形に切り取られている。

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2024年カレンダーのうち、8番目を紹介したい。


(8)長編「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第20作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第13作目に該っている。



アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ」は、エルキュール・ポワロが、美術展で出会った謎多き裕福な蒐集家であるシャイタナ氏(Mr. Shaitana)から、ブリッジパーティーへの招待を受けるところから、物語が始まる。「まだ告発されていない殺人犯を招いた上でのパーティーだ。」と言うシャイタナ氏の趣旨に興味を覚えたポワロは、パーティーへの参加を決める。


シャイタナ氏の自宅で行われたパーティーに招待されたのは、以下の8人だった。


(1)探偵組

*エルキュール・ポワロ

*バトル警視(Superintendent Battle)- スコットランドヤードの警察官

*ジョン・レイス大佐(Colonel John Race)- 英国秘密情報局の情報部員

*アリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)- 女流推理作家


(2)容疑者組

*ロバーツ医師(Dr. Roberts)- 成功をおさめた中年の医師

*ロリマー夫人(Mrs. Lorrimer)- ブリッジ好きな初老の女性

*デスパード少佐(Major Despard)- 未開地を探索する探検家

*アン・メレディス(Anne Meredith)- 内気で若く麗しい女性


食事の最中、シャイタナ氏は、パーティーの出席者達に対して、謎めいた告発を行う。

そして、食事が済むと、容疑者組の4人は、メインルーム(客間)で、また、探偵組の4人は、別の部屋で、ブリッジを始めることとなった。シャイタナ氏は、メインルームの暖炉の側に置かれた椅子を自分の居場所として、ブリッジへの参加を辞退する。

ブリッジが終わり、ポワロとレイス大佐が、シャイタナ氏に対して、暇を告げようとした際、彼らは、シャイタナ氏が彼の蒐集品であるナイフで胸を刺されて死んでいるのを発見する。


果たして、シャイタナ氏が謎めいた告発をした対象の人物は、誰だったのか?そして、その人物が、シャイタナ氏を刺殺したのだろうか?


名探偵、警察官や情報部員等が同席しているパーティーの最中、大胆にも行われた犯行を解き明かすべく、ポワロの灰色の脳細胞が、ブリッジの点数表の内容にその糸口を見いだすのであった。


2024年1月26日金曜日

ロビン・スティーヴンス作「グッゲンハイムの謎」(The Guggenheim Mystery by Robin Stevens) - その2

2018年に英国の Penguin Random House UK 社から出版された
シヴォーン・ダウド原案 / ロビン・スティーヴンス作
「グッゲンハイムの謎」の
ペーパーバック版の裏表紙
(Cover illustration : David Dean


米国カリフォルニア州出身で、現在、英国オックスフォード(Oxford)在住の作家であるロビン・スティーヴンス(Robin Stevens: 1988年ー)が2017年に発表したグッゲンハイムの謎(The Guggenheim Mystery)」は、以下のように展開していく。


主人公のテッド・スパーク(Ted Spark)は、12歳の少年で、


父:ベン(Ben)- ビル解体業

母:フェイス(Faith)- 看護師

姉:カトリーナ(Katrina)- 愛称:カット(Kat)


の3人と一緒に、ロンドンのテムズ河(River Thames)南岸に住んでいた。


母の妹で、「ハリケーングロリア(Hurricane Gloria)」と呼ばれている叔母のグロリア・マククラウド(Gloria McCloud)は、夫のラシッド(Rashid - インド人の医師)と離婚した後、息子のサリム(Salim - 13歳)と2人で、マンチェスター(Manchester)に住んでいたのだが、今回、ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)の学芸員(curator)の職を得た。

叔母のグロリアは、サリムを連れて、ニューヨークへ向かう前に、ロンドンに寄ったのだが、その翌日(5月24日)、観光に出かけたロンドンアイ(London Eye - テムズ河の南岸に建つ巨大な観覧車)のカプセルから、サリムの姿が消失してしまうと言う「ロンドンアイの謎(The London Eye Mystery → 2024年1月11日 / 1月15日 / 1月19日付ブログで紹介済)」事件が発生する。

テッドの推理により、無事に戻ったサリムは、グロリアと一緒に、ニューヨークへと旅立って行ったのである。


同じ年の8月、夏休みを迎えたテッドは、母のフェイス / 姉のカットと一緒に、叔母のグロリアと従兄弟のサリムが住むニューヨークを訪れた。旅行費用の節約のため、残念ながら、父のベンは、ロンドンで留守番を務めることとなった。

実は、テッドとしては、ニューヨーク行きには、あまり乗り気ではなく、父のベンと一緒に、ロンドンに残りたかったが、母のフェイスに無理矢理連れていかれる羽目となったのである。また、夏場にもかかわらず、少し「変わった」テッドは、学校の制服(スクール用のジャケット、シャツとズボン)で出かけることに拘った。


叔母のグロリアは、グッゲンハイム美術館の主任学芸員に就いており、テッド達がニューヨークに到着した翌日の8月9日(木)が美術館の休館日に該るため、フェイス / カット / テッドの3人とサリムを特別に入館させてくれたのである。

翌週の8月17日(金)から始まる展開会のために改装中の館内をテッド達が見学していると、突然、何かのきつい臭いがするとともに、白くて濃い煙が館内に充満する。

火事だと思ったテッド達は、慌てて美術館の外へと避難した。ところが、火事は見せ掛けで、テッド達を含む館内の全員が外へ出た隙に、美術館が保有しているワシリー・カンディンスキー(Vassily Kandinsky)の名画「黒い正方形の中に(In the Black Square)」が、何者かによって盗み出された後、美術館の裏側から、ヴァンで運び出されてしまったのである。


美術館の裏側から、カンディンスキーの名画を運び出したのは、「Effortless Light Removals」と言う会社であったが、警察が調べたところ、その会社への連絡には、美術館内のグロリアの座席の電話が使用されていた上に、その会社への支払には、グロリアのクレジットカードが使われていたのである。

その結果、叔母のグロリアは、カンディンスキーの名画盗難を計画した犯人だと疑われて、警察に逮捕されてしまう。


母親が逮捕されて、愕然とするサリム。

なんとしても、カンディンスキーの名画を無事に取り戻すとともに、叔母のグロリアの無実を立証する必要があった。


ロンドンアイのカプセルと言う密室からサリムが消失した謎を解明した実績を買われて、姉のカット / 従兄弟のサリムから、テッドは、再度の活躍を求められる。

気象学の知識は専門家並みと言う少し「変わった」頭脳を持つテッドが、「ロンドンアイの謎」事件に続いて、カンディンスキーの名画の行方とそれを盗難した真犯人を探すために、謎の解明に挑むのであった。


2024年1月25日木曜日

アガサ・クリスティーのトランプ(Agatha Christie - Playing Cards)- その5

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、昨年(2023年)に発行されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)をテーマにしたトランプの各カードについて、引き続き、紹介したい。


(13)4 ♠️「ジョン・レイス大佐(Colonel John Race)」



彼は、元陸軍情報部員で、現在は、英国政府の情報機関に勤務。力強く、寡黙な人物である。


登場作品

<長編>

*「茶色の服を着た男(The Man in the Brown Suit)」(1925年)

*「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「ナイルに死す(Death on the Nile)」(1937年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「忘られぬ死(Sparkling Cyanide)」(1945年)


(14)4 ❤️「赤い着物(Scarlet Kimono)」



長編「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」(1934年)において、オリエント急行の1号室(一等寝台席)、つまり、エルキュール・ポワロの部屋を突然ノックして、彼の安眠を妨害し、立ち去って行く謎の女性が羽織っているのが、赤い着物である。


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第14作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第8作目に該っている。


英国の HarperCollinsPublishers 社から発行されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「オリエント急行の殺人」の表紙


(15)4 ♣️「皮下注射器(Hypodermic Syringe)」



皮下注射器は、長編「死との約束(Appointment with Death)」(1938年)において、ボイントン夫人(Mrs. Boynton)の殺害に、「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)において、エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent)の殺害に、そして、「ねじれた家(Crooked House)」(1949年)において、アリスタイド・レオニデス(Aristide Leonides)の殺害に、使用されている。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「死との約束」のペーパーバック版の表紙


「死との約束」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第23作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第16作目に該っている。

「そして誰もいなくなった」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては第26作目に該る。アガサ・クリスティーの作品の中でも、代表作に挙げられているのが、本作品である。

「ねじれた家」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第39作目に該る。アガサ・クリスティーは、自伝において、本作品を自作の推理小説の中で最も満足している2作のうちの1作として挙げている。ちなみに、もう1作は、「無実はさいなむ( Ordeal by Innocence)」(1958年)である。


(16)4 ♦️「翡翠の小立像(Jade Fogurines)」



長編「ビッグ4(The Big Four)」(1927年)において、中国通の退職公務員であるジョン・イングルス(John Ingles)に対して、世界征服を企む国際犯罪組織「ビッグ4(The Big Four)」の件で、元船乗りであるジョナサン・ホェイリー(Jonathan Whalley)がコンタクトしてきた。

エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)が、ジョナサン・ホェイリーが住むダートムーア(Dartmoor)のホッパトン(Hoppaton)を訪れると、彼は何者かによって惨殺されていた。そして、ジョナサン・ホェイリーの殺害犯として、彼の使用人であるロバート・グラント(Robert Grant)が警察に逮捕されてしまう。ロバート・グラントが、ジョナサン・ホェイリーが所有する翡翠の小立像(Jade Fogurines)を盗んだことが、逮捕の決め手となった。

一方、ポワロは、凍ったマトン肉から、ジョナサン・ホェイリーは、ロバート・グラントではなく、「ビッグ4」のナンバー4によって、殺害されたものと考えるのであった。


「ビッグ4」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第7作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第4作目に該っている。 


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ビッグ4」のペーパーバック版の表紙


2024年1月24日水曜日

<第1400回> シャーロック・ホームズのトランプ(Sherlock Holmes - Playing Cards)- その8

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2022年)に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプの各カードについて、前回に引き続き、紹介したい。


(25)7 ❤️「鹿撃帽(Deerstalker)」



キャラバッシュ型パイプ(Curved Pipe → 2024年1月x日付ブログで紹介済)と合わせて、鹿撃帽も、シャーロック・ホームズのトレードマークとなっているが、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作上、鹿撃帽のことに関しては、言及されていない。


英国で出版された「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」
1891年10月号「ボスコム谷の謎(The Boscombe Valley Mystery)」に掲載された挿絵 -
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、事件捜査のため、
パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)から
イングランド西部(West of England)のボスコム谷(Boscombe Valley)へと向かう。
画面左側の人物がワトスンで、画面右側の人物がホームズ。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward p Paget:1860年 - 1908年)


ホームズに鹿撃帽を冠らせたのは、挿絵画家のシドニー・エドワード・パジェット(1860年ー1908年)による発案で、鹿撃帽を冠ったホームズが初登場するのは、短編4作目の「ボスコム谷の謎」である。


(26)7 ♠️「ジョン・クレイ(John Clay)」



ジョン・クレイは、「赤毛組合(The Red-Headed League → 2022年9月25日 / 10月9日 / 10月11日 / 10月16日付ブログで紹介済)」に登場する人物で、City and Suburban Bank のコーブルク支店(Coburg branch)の地下金庫室から、同銀行がフランス銀行より借り入れた3万枚のナポレオン金貨を強奪する計画を立案した。そして、彼は、ヴィンセント・スポールディング(Vincent Spaulding)と言う偽名を用い、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)近くにあるザクセンーコーブルクスクエア(Saxe-Coburg Square → 2016年1月1日付ブログで紹介済)において質屋(pawnbroker)を営む赤毛の初老の男性ジェイベス・ウィルスン(Jabez Wilson)の店員として、潜り込むのであった。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1891年8月号「赤毛組合」に掲載された挿絵
 -

フランス金貨を強奪するために、
ジェイベス・ウィルスンが営む質屋の地下室から掘ったトンネルを通って、
City and Suburban Bank のコーブルク支店の地下金庫室へと侵入した
ヴィンセント・スポールディングこと、ジョン・クレイを
待ち構えていたシャーロック・ホームズが捕らえる。
画面奥の人物がホームズで、画面手前の人物がジョン・クレイ。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット(1860年 - 1908年)


「赤毛組合」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、2番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1891年8月号にに掲載された。

また、同作品は、1892年に発行されたホームズシリーズの第1短編集である「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」に収録されている。


(27)7 ♦️「ヴァイオレット・ハンター(Violet Hunter)」



ヴァイオレット・ハンターは、「ぶな屋敷(The Copper Beeches → 2022年7月31日 / 8月15日 / 8月21日 / 8月25日付ブログで紹介済)」に登場する人物で、事件の依頼人として、シャーロック・ホームズの元を訪れる若い家庭教師である。


英国で出版社された「ストランドマガジン」
1892年6月号「ぶな屋敷」に掲載された挿絵
 -

推理に必要なデータが不足しているシャーロック・ホームズとしては、
事件の依頼人であるヴァイオレット・ハンターがぶな屋敷へ赴くことを止めることはできなかったが、
彼女に対して、「昼でも夜でも構わないので、何かあれば、
電報で知らせてほしい。」と頼むのであった。
画面左側から、ヴァイオレット・ハンター、ジョン・H・ワトスン、
そして、ホームズ。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(1860年 - 1908年)


「ぶな屋敷」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、12番目に発表された作品で、「ストランドマガジン」の1892年6月号に掲載された。

また。同作品は、1892年に発行されたホームズシリーズの第1短編集である「シャーロック・ホームズの冒険」に収録されている。


(28)7 ♣️アセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones)



アセルニー・ジョーンズ警部は、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」事件に登場するスコットランドヤードの警察官である。


なお、「四つの署名」は、ホームズシリーズの長編第2作目で、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年2月号に掲載された後、単行本化。