2024年1月3日水曜日

ボニー・マクバード作「シャーロック・ホームズのクリスマス冒険 / 御使いうたいて」(A Sherlock Holmes Christmas / What Child Is This? by Bonnie MacBird) - その3

2つの事件が解決した後、
ジョン・H・ワトスンは妻のメアリーの元へと帰り、
ベーカーストリート221Bに一人残されたシャーロック・ホームズは、
ストラディヴァリウスを奏でるのであった。
(Illustrations by Frank Cho /

1971年に韓国のソウル生まれのイラストレーター)


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆半(2.5)


ボニー・マクバード(Bonnie MacBird)作「シャーロック・ホームズのクリスマス冒険 / 御使いうたいて(A Sherlock Holmes Christmas / What Child Is This?)」(2022年)は、原作の「青いガーネット(The Blue Carbuncle)」と同様に、クリスマスの頃に発生した事件である。

なお、違いを言えば、「御使いうたいて」については、クリスマス前からクリスマスイブにかけての話で、「青いガーネット」に関しては、クリスマス以降の話である。


御使いうたいて」の場合、


*フィリップ・エンディコット卿(Lord Philip Endicott)とレディー・アンドロメダ・エンディコット(Lady Andromeda Endicott)の子供であるジョナサン(Jonathan - 3歳)の誘拐事件

*ブランベリー侯爵ヘンリー・ウェザーリング(Henry Weathering, Marquis of Blanbury)の三男であるレジナルド(Reginald - 21歳)の失踪事件


の2つの事件が発生する。

両方の事件とも、根底にあるのは、現代的な事柄だと言える。

筆者が読み始めた時、両方の事件が途中で一つに繋がるのではないかと予想したが、残念ながら、両方の事件は最後まで並行したままで終わってしまったのが、やや難点である。


(2)物語の展開について ☆☆半(2.5)


上記(1)について、既に述べた通り、筆者が読み始めた時、両方の事件が途中で一つに繋がるものと期待したが、結局のところ、両方の事件は、最後まで並行したまま進み、別々の異なる事件で終わってしまった。


また、物語自体、冒頭のオックスフォードストリート(Oxford Street → 2016年5月28日付ブログで紹介済)におけるジョナサンの誘拐未遂事件を除くと、終盤まで大きな展開もなく、そのまま最後を迎えており、カタルシスを得づらい。


クリスマスリース
(Illustrations by Frank Cho

(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆半(2.5)


両方の事件とも、個人的には、物語のかなり早い段階で、真相が推測できてしまった。それぞれの真相および結末は、現代的ではあるものの、驚く程の内容ではないので、ホームズ / ワトスンによる活躍を経て、判明しても、申し訳ないが、平凡としか言えない。


また、第1作目の「シャーロック・ホームズの冒険 / 芸術家の血(A Sherlock Holmes Adventure / Art in the Blood → 2022年4月17日 / 4月23日 / 4月30日付ブログで紹介済)」(2015年)から、ホームズ達との因縁が続くフランス人探偵のジャン・ヴィドック(Jean Vidocq)が今回も登場する。

ただし、第2作目の「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒(A Sherlock Holmes Adventure / Unquiet Spirits → 2022年5月22日 / 5月28日 / 6月3日 / 11月29日付ブログで紹介済)」(2017年)以降、彼の出番はほんの少しで、所謂、チョイ役であり、大した活躍をする訳でもなく、単なる嫌味な役回りのままで終わっている。

作者のボニー・マクバードとしては、自分で創作したキャラクターであることに加えて、第1作目でそれなりの登場場面があり、活躍(悪い意味で)もさせているので、毎回登場させたいのかもしれないが、第2作目以降の扱いでは、キャラクターとして、どんどんしょぼい人物になっていってしまうのではないかと心配してしまう。


(4)総合評価 ☆☆半(2.5)


本作品の場合、両方の事件について、シャーロック・ホームズは、原作のホームズとは異なり、事件の謎を解明することよりも(実際のところ、事件の謎自体は、それ程難しくなかったが)、事件の犯人達に対して、人間としての指導を行い、クリスマスの話として、ハッピーエンドへと導いている。

個人的には、両方の事件の犯人達に対して、人としての道を諭す本作品のホームズは、筆者が思う原作のホームズとは、異質な感じがしてしまい、正直ベース、やや入り込めなかった。

作者のボニー・マクバードとしては、クリスマスの良い話を書こうとして、そちらが主体となってしまい、本来のホームズとは、少しばかり軸線がずれてしまったのではないかと思われる。



0 件のコメント:

コメントを投稿