2024年1月13日土曜日

シャーロック・ホームズのトランプ(Sherlock Holmes - Playing Cards)- その6

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2022年)に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプの各カードについて、前回に引き続き、紹介したい。


(17)5 ❤️ストラディヴァリウス(Stradivarius Violin)」



シャーロック・ホームズの愛器は、「ストラディヴァリウス」と呼ばれるヴァイオリンである。


「ストラディヴァリウス」は、イタリアのストラディヴァリ父子3人(父:アントニオ、子:フランチェスコ、子:オモボノ)が製作した弦楽器で、特に、父親の名工アントニオ・ストラディヴァリ(Antonio Stradivari:正確な誕生年は不明(1644年、1648年や1649年等、諸説あり)ー1737年)が17世紀後半から18世紀前半にかけて製作した弦楽器が有名である。

ストラディヴァリ父子は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、マンドリンやギター等の弦楽器を約1100-1300挺製作したとされているが、現存するのは、約600挺とのこと。


ホームズは、少なくとも500ギニー(現在の1000万円以上)の値打ちがあるこの愛器を、トッテナムコートロード(Tottenham Court Road → 2015年8月15日付ブログで紹介済)にあるユダヤ人の質屋において、僅か55シリング(現在の数万円)で手に入れたことが、自慢であった。


ホームズは、真夜中、事件がない暇な時、あるいは、考えに浸る際に、「ストラディヴァリウス」を手にして、演奏を行った。また、事件が解決した後、その解放感に浸る際にも、ホームズは愛器を手放さなかった。事件の解決までに高ぶった精神を静めるためなのであろう。


(18)5 ♠️チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンの金庫Charles Augustus Milverton’s Safe)」



チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(Charles Augustus Milverton)本人は「代理業(Agent)」と自称しているが、実際には、シャーロック・ホームズ曰く、「ロンドン一の恐喝王」である。

チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンは、ロンドンの特別区の一つであるカムデン区(London Borough of Camden)内のハムステッド地区(Hampstead → 2018年8月26日付ブログで紹介済)にあるアップルドアタワーズ(Appledore Towers:架空の場所 → 2015年4月12日付ブログで紹介済)という屋敷に住んでいる。


結婚を控えたある令嬢から依頼を受けたホームズは、彼女が田舎の貧乏貴族宛に以前送った手紙を取り返すべく、ベーカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンと直接交渉するものの、全く埒が明かなかった。

そこで、ホームズは、相棒のジョン・H・ワトスンを伴って、夜闇に紛れてミルヴァートンの屋敷に忍び込み、恐喝のネタとなっている手紙を盗み出そうとする。そして、ミルヴァートンの屋敷内で発生したある突発事件を契機に、ホームズとワトスンは、屋敷を逃げ出した後、ハムステッドヒース(Hampstead Heath → 2015年4月25日付ブログで紹介済)を疾走するのである。


挿絵画家であるシドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年ー1908年)が描く

チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン
(「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」
1904年4月号「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」より)


「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(Charles Augustus Milverton - 出版社によっては、「犯人は二人」や「恐喝王ミルヴァートン」等と訳しているケースあり)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、31番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1904年4月号に、また、米国では、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1904年3月26日号に掲載された。

また、同作品は、1905年に発行されたホームズシリーズの第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」に収録されている。


(19)5 ♦️「名馬シルヴァーブレイズ(Silver Blaze)」



名馬シルヴァーブレイズ」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、13番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1892年12月号に、また、米国では、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年2月25日号に掲載された。

また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。


挿絵画家であるシドニー・エドワード・パジェット(1860年ー1908年)が描く
名馬シルヴァーブレイズ
(「ストランドマガジン」1892年12月号の「名馬シルヴァーブレイズ」より)


(20)5 ♣️犬のトビー(Toby)



「四つの署名(The Sign of the Four)」事件では、若い女性メアリー・モースタン(Mary Morstan)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れて、風変わりな事件の調査依頼をする。


元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel → 2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、娘のモースタン嬢が彼を訪ねると、身の回り品や荷物等を残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。

彼女の依頼に応じて、ホームズとジョン・H・ワトスンの二人は彼女に同行して、待ち合わせ場所のライシアム劇場(Lyceum Theatre → 2014年7月12日付ブログで紹介済)へ向かった。そして、ホームズ達一行は、そこで正体不明の人物によって手配された馬車に乗り込むのであった。


ホームズ、ワトスンとモースタン嬢の三人は、ロンドン郊外のある邸宅へと連れて行かれ、そこでサディアス・ショルト(Thaddeus Sholto)という小男に出迎えられる。彼が手紙の差出人で、ホームズ達一行は、彼からモースタン嬢の父親であるアーサー・モースタン大尉と彼の父親であるジョン・ショルト少佐(Major John Sholto)との間に起きたインド駐留時代の因縁話を聞かされるのであった。

サディアス・ショルトによると、父親のジョン・ショルト少佐が亡くなる際、上記の事情を聞いて責任を感じた兄のバーソロミュー・ショルト(Bartholomew Sholto)と彼が、モースタン嬢宛に毎年真珠を送っていたのである。アッパーノーウッド(Upper Norwood)にある屋敷の屋根裏部屋にジョン・ショルト少佐が隠していた財宝を発見した彼ら兄弟は、モースタン嬢に財宝を分配しようと決めた。


しかし、ホームズ一行がサディアス・ショルトに連れられて、バーソロミュー・ショルトの屋敷を訪れると、バーソロミュー・ショルトはインド洋のアンダマン諸島の土着民が使う毒矢によって殺されているのを発見した。そして、問題の財宝は何者かによって奪い去られていたのである。

ホームズの依頼に応じて、ワトスンは、ランベス地区(Lambeth)の水辺近くにあるピンチンレーン3番地(No. 3 Pinchin Lane → 2017年10月28日付ブログで紹介済)に住む鳥の剥製屋シャーマン(Sherman)から、犬のトビー(Toby)を借り出す。そして、ホームズとワトスンの二人は、バーソロミュー・ショルトの殺害現場に残っていたクレオソートの臭いを手掛かりにして、トビーと一緒に、現場からロンドン市内を通り、犯人の逃走経路を追跡して行く。


なお、「四つの署名」は、ホームズシリーズの長編第2作目で、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年2月号に掲載された後、単行本化。


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