2024年3月26日火曜日

横溝正史作「本陣殺人事件」(The Honjin Murders by Seishi Yokomizo)- その3

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2019年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

横溝正史作「本陣殺人事件」
に付されている
一柳家の離れ家の現場図 -
新郎新婦の一柳賢蔵と久保克子の2人が、
布団の上で、血塗れになって死んでいた。


1937年(昭和12年)11月25日、岡山県の旧本陣の末裔に該る一柳家(The Ichiyanagi Family)の屋敷において、

長男の一柳賢蔵(Kenzo Ichiyanagi)と小作農の出で、女学校の教師である久保克子(Katsuko Kubo)の婚礼が執り行われていた。


一柳家からは、以下の人物が、結婚式に参列していた。


(1)一柳糸子(Itoko Ichiyanagi):賢蔵の母(57歳)

(2)一柳三郎(Saburo Ichiyanagi):三男(28歳)

(3)一柳鈴子(Suzuko Ichiyanagi):次女(17歳)

(4)一柳良介(Ryosuke Ichiyanagi):賢蔵達の従兄弟(38歳)

(5)一柳秋子(Akiko Ichiyanagi):良介の妻

(6)一柳伊兵衛(Ihei Ichiyanagi):賢蔵達の父である一柳作衛(Sakue Ichiyanagi:故人)と良介の父である一柳隼人(Hayato Ichiyanagi:故人)の弟で、賢蔵達の大叔父


一柳家には、他に、


(7)一柳妙子(Taeko Ichiyanagi):長女 / 会社員と結婚して、現在、上海(Shanghai)に居住

(8)一柳隆二(Ryuji Ichiyanagi):次男(35歳) / 医者で、大阪の病院に勤務


が居るが、妙子と隆二の2人は、兄である賢蔵の婚礼には、出席していなかった。


一方、久保家の場合、久保克子の父親である久保林吉(Rinkichi Kubo)は既に亡くなっており、彼の弟で、果樹園の経営者(fruit farmer)である久保銀造(Ginzo Kubo)が、亡き兄の娘の克子を育て上げ、亡き兄に代わって、姪の克子の婚礼に出席していた。ただ、これから数時間後に、姪の克子の身に恐ろしい事件が発生するとは、久保銀造は、全く思ってもいなかったのである。


本来であれば、婚礼の席において、新婦である克子が琴を披露する習わしであったが、賢蔵の妹で、琴の演奏に卓越している鈴子が、克子に代わって、琴を披露した。


横溝正史作「本陣殺人事件」における事件関係者の系譜図
<筆者作成>


婚礼の式が午後9時半頃に終わると、続いて、婚礼の宴が始まった。

婚礼の宴の席において、賢蔵達の大叔父である伊兵衛が、酒を飲み過ぎて、泥酔してしまったため、賢蔵の弟である三郎が、伊兵衛を連れて、大叔父が住む川一村へと送って行った。その結果、三郎と伊兵衛の2人は、事件が発生した際、一柳家の屋敷には、不在だった。


午前1時頃に、婚礼の宴がお開きになると、新郎新婦の賢蔵と克子は、寝屋である離れ家(Annexe House)へと下がった。


明け方に近くなった時、新郎新婦の寝屋である離れ家から、悲鳴と琴を掻き鳴らす音が、突然、聞こえてきた。母屋で寝ていた久保銀造が驚いて目を覚ますと、時計を見た。午前4時15分だった。

久保銀造達が雨戸を壊して中へ入ると、賢蔵と克子の2人が、寝室の布団の上で、血塗れになって、死んでいたのである。

状況が飲み込めない久保銀造達であったが、離れ家内には、布団の上で血塗れになって死んでいる賢蔵と克子の2人以外には、誰も居なかった。

不思議なことに、庭の石灯籠(stone lantern)の側の地面には、賢蔵と克子の殺害に使用したと思われる血に染まった凶器の日本刀(katana)が、突き刺さっていた。

更に、奇妙なことは、新郎新婦の賢蔵と克子が寝屋である離れ家へと下がる際に降り出して、離れ家の周囲に積もった雪の上には、賢蔵と克子の2人を殺害した犯人が逃げ出した足跡がなかったことである。


新郎新婦の賢蔵と克子の身に、一体、何が起きたのか?


久保銀造は、名探偵と見込み、自らが出資して、パトロンとなっている新進の私立探偵である金田一耕助(Kosuke Kindaichi)を呼び寄せて、事件の解明にあたらせることにした。


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