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ジェーン・フィンの従兄弟であるジュリアス・P・ハーシャイマーが宿泊しているリッツ ロンドン - ピカデリー通り(Piccadilly)を間に挟んで、通りの反対側から見上げたところ。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」の場合、1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island)に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれるところから、物語が始まる。
彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。
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招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、 謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 (HarperCollins Publishers 社から2009年に出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋) |
招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。謎の声による告発を聞いたの10人は戦慄する。
雇い主のオーウェン氏から執事のトマス・ロジャーズ(Thomas Rogers)宛の手紙は、ロンドン中心部のピカデリー通り(Piccadilly)沿いで、グリーンパーク(Green Park)に面して建つ高級ホテルの「リッツ ロンドン(The Ritz London → 2025年7月2日 / 7月14日付ブログで紹介済)」から出されていた。
雇い主のオーウェン氏から執事のトマス・ロジャーズ宛の手紙が出された「ホテル・リッツ」とは、ロンドン中心部のピカデリー通り(Piccadilly)沿いで、グリーンパーク(Green Park)に面して建つ高級ホテルの「リッツ ロンドン(The Ritz London)」のことで、1906年5月24日に開業し、開業後、約120年が経っている。
「リッツ ロンドン」は、ピカデリーライン(Piccadilly Line)、ジュビリーライン(Jubilee Line)とヴィクトリアライン(Victoria Line)の3線が乗り入れる地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の直ぐ真横に建っており、徒歩1分と言う利便性を誇る。
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ジェーン・フィンの行方を探している米国人の富豪である ジュリアス・P・ハーシャイマーは、リッツ ロンドンに宿泊している。 (HarperCollins Publishers 社から2008年に出ている アガサ・クリスティー作「秘密機関」のグラフィックノベル版から抜粋) |
アガサ・クリスティーの長編第2作目である「秘密機関(The Secret Adversary)」(1922年)において、米国人の富豪で、ジェーン・フィン(Jane Finn)の行方を探している30台前半の男性であるジュリアス・P・ハーシャイマー(Julius P. Hersheimmer)が、「リッツ ロンドン」に宿泊しており、物語では、ホテルが何度も出てくる。
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右側の人物がトマス・ベレズフォード(愛称:トミー)で、 左側の人物がプルーデンス・カウリー(愛称:タペンス)。 (HarperCollins Publishers 社から2008年に出ている アガサ・クリスティー作「秘密機関」のグラフィックノベル版から抜粋) |
「秘密機関」は、トマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))とプルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence))の記念すべきシリーズ第1作目に該っている。
友人達の間で「タペンス」と言う愛称で通っているプルーデンス・カウリーは、昔馴染みのトマス・ベレズフォード(愛称:トミー)に、5年ぶりにロンドンで再会した。トミーは、第一次世界大戦大戦中に負傷して、除隊。一方、タペンスは、大戦中、ボランティアとして、ずーっと働いていたが、現在、2人共、戦後の就職難に悩まされていた。
久々の再会を果たしたトミーとタペンスは、「青年冒険家商会(The Young Adventurers, Ltd.)」を設立して、二人で報酬を獲得するために、活動を始める。
トミーとタペンスは、シリーズ第1作目に該る長編「秘密機関」(1922年)を皮切りに、「おしどり探偵」として、少ないながらも、
*短編集「おしどり探偵(Partners in Crime)」(1929年)
(収録作品)
(1)「アパートの妖精(A Fairy in the Flat)」(1924年)
(2)「お茶をどうぞ(A Pot of Tea)」(1924年)
(3)「桃色真珠紛失事件(The Affair of the Pink Pearl)」(1924年)
(4)「怪しい来訪者(The Adventure of the Sinister Stranger)」(1924年)
(5)「キングを出し抜く(Finessing the King / The Gentleman Dressed in Newspaper)」(1924年)
(6)「婦人失踪事件(The Case of the Missing Lady)」(1924年)
(7)「目隠しごっこ(Blindman’s Buff)」(1924年)
(8)「霧の中の男(The Man in the Mist)」(1924年)
(9)「パリパリ屋(The Crackler)」(1924年)
(10)「サニングデールの謎(The Sunningdale Mystery)」(1924年)
(11)「死のひそむ家(The House of Lurking Death)」(1924年)
(12)「鉄壁のアリバイ(The Unbreakable Alibi)」(1928年)
(13)「牧師の娘(The Clergyman’s Daughter / The Red House)」(1923年)
(14)「大使の靴(The Ambassador’s Boots)」(1924年)
(15)「16号だった男(The Man Who Was No. 16)」(1924年)
*長編「NかMか(N or M ?)」(1941年)
*長編「親指のうずき(By the Pricking of My Thumbs)」(1968年)
*長編「運命の裏木戸(Postern of Fate)」(1973年)
において、活躍する。
「秘密機関」において、トミーとタペンスが、「リッツ ロンドン」でジュリアス・P・ハーシャイマーと食事をしている際、エルキュール・ポワロシリーズに登場するスコットランドヤードのジャップ警部(Inspector Japp)が訪ねて来る場面があるが、HarperCollins Publishers 社から2008年に出ているアガサ・クリスティー作「秘密機関」のグラフィックノベル版においても、別添の通り、その場面がキチンと挿入されている。
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なお、ジャップ警部が訪ねて来るのは、アガサ・クリスティーの原作では、3人が食事をしている際であるが、グラフィックノベル版の場合、3人がジュリアス・P・ハーシャイマーの部屋で会話をしている際に、アレンジされている。

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