2022年10月25日火曜日

コナン・ドイル作「赤毛組合」<英国 TV ドラマ版>(The Red-Headed League by Conan Doyle )- その3

英国で出版された「ストランドマガジン」
1891年8月号に掲載された挿絵(その9) -

フランス金貨を強奪するために、
ジェイベス・ウィルスンが営む質屋の地下室から掘ったトンネルを通って、
City and Suburban Bank のコーブルク支店の地下金庫室へと侵入した
ヴィンセント・スポールディングこと、ジョン・クレイを
待ち構えていたシャーロック・ホームズが捕らえる。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget 1860年 - 1908年)

ロンドンの経済活動の中心地であるシティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)近くにあるザクセンーコーブルクスクエア(Saxe-Coburg Square → 2016年1月1日付ブログで紹介済)において質屋(pawnbroker)を営む赤毛の初老の男性ジェイベス・ウィルスン(Jabez Wilson)が、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの二人に対して、「赤毛組合(The Red-Headed League)」に纏わる非常に奇妙な体験を話して、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)を辞去した後の話の流れであるが、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、TV ドラマとして映像化された「赤毛組合」は、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「赤毛組合(The Red-Headed League → 2022年9月25日 / 10月9日 / 10月11日付ブログで紹介済)」と、基本的に同じで、


(1)ホームズは、ワトスンに対して、「この問題を解き明かすには、優に三服分は必要だ。だから、50分は、僕に話し掛けないでほしい。」と頼むと、痩せた両膝を鷹のような鼻に近づけるように、椅子の上で身体を丸め、目を閉じ、黒いクレーパイプをある種の奇妙な鳥の嘴のように突き出して、ジェイベス・ウィルスンから聞いた奇妙な話について、考えをめぐらせる。


(2)その後、ホームズはワトスンを誘って、ジェイベス・ウィルスンが営む質屋へと向かった。ホームズは質屋のドアをノックし、応対に出て来た店員のヴィンセント・スポールディング(Vincent Spaulding)に対して、ストランド通り(Strand → 2015年3月29日付ブログで紹介済)への道を尋ねると、その場を立ち去る。その際、ホームズは、質屋の前の敷石をステッキで数回叩き、そして、ヴィンセント・スポールディングの膝の汚れを確認する。


(3)更に、セントジェイムズホール(St. James's Hallー2014年10月4日付ブログで紹介済)でサラサーテ(パブロ・マルティン・メリトン・デ・サラサーテ・イ・ナバスクエス Pablo Martin Meliton de Sarasate y Navascuez:1844年ー1908年 スペイン出身の作曲家兼ヴァイオリン奏者 → 2022年10月19日付ブログで紹介済)の演奏会を楽しむ。


という場面が描かれる。


そして、物語は、City and Suburban Bank のコーブルク支店(Coburg branch)地下金庫における捕り物へと移る。


コナン・ドイルの原作の場合、捕り物のために、ベーカーストリート221Bに集まった面々は、ホームズとワトスンの他には、(1)スコットランドヤードの警察官(official police agent / なお、階級は不明)であるピーター・ジョーンズ(Peter Jones)と(2)City and Suburban Bank の頭取であるメリーウェザー氏(Mr Merryweather)の2人だった。

一方、グラナダテレビ版の場合、メリーウェザー氏は同じものの、スコットランドヤードからやって来たのは、アセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones)だった。なお、アセルニー・ジョーンズ警部は、コナン・ドイルの「四つの署名(The Sign of the Four)」に登場する人物である。


ホームズ達4人は、ベーカーストリートからザクセンーコーブルクスクエアの質屋の裏側にある銀行へと向かうが、コナン・ドイルの原作の場合、時刻は夜だったが、グラナダテレビ版の場合、まだ昼間だった


コナン・ドイルの原作の場合、メリーウェザー氏は、銀行の地下金庫室内で、ホームズ達に対して、「We had occasion some months ago to strengthen our resources and borrowed for that purpose thirty thousand napoleons from the Bank of France. … The crate upon which I sit contains two thousand napoleons packed between layers of lead foil.(弊行は、数ヶ月前に、資産を強化する必要があり、そのために、フランス銀行から3万枚のナポレオン金貨を借り入れました。… 私が腰掛けている木箱の中には、鉛の薄板に挟まれた2000枚のナポレオン金貨が詰まっています。)」と説明した。

一方、グラナダテレビ版の場合、City and Suburban Bank フランス銀行から借り入れたナポレオン金貨の枚数が、3万枚から6万枚へと増えている。そのうちの3万枚のナポレオン金貨が、City and Suburban Bank のコーブルク支店の地下金庫室内に保管されている設定に変更されている。


英国 TV ドラマ版の場合、ホームズは、アセルニー・ジョーンズ警部に対して、City and Suburban Bank のコーブルク支店の地下金庫室からナポレオン金貨を強奪する計画を立案した人物は、ヴィンセント・スポールディングこと、ジョン・クレイ(John Clay)ではなく、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)だと説明するが、コナン・ドイルの原作では、勿論、このような場面は存在しない。また、アセルニー・ジョーンズ警部は、モリアーティー教授の名前だけは知っているという設定となっている。


英国 TV ドラマ版の場合、地下金庫室内に侵入して来たジョン・クレイは、ホームズに捕らえられるが、ジョン・クレイの相棒であるアーチー(Archie)は、地下通路を通って、逃亡しようとする。そして、ジェイベス・ウィルスンの質屋へと這い出たアーチーは、警官との格闘により、店の中をメチャクチャにしてしまう場面も追加されている。


そして、物語の終盤、ワトスンがジェイベス・ウィルスンの質屋を訪れ、ホームズが City and Suburban Bank から事件解決の報酬として受け取ったソブリン金貨50枚を渡す。ジョン・クレイの相棒であるアーチーによって、店の中をメチャクチャにされた迷惑料の意味合いである。

ソブリン金貨50枚を受け取って喜ぶジェイベス・ウィルスンに対して、ワトスンは、ホームズからのアドバイスを伝える。「Next time you engage an assistant, pay him the proper wage.(次から店員を雇う際には、必ず正当な賃金を支払った方がよい。)」と。


物語の最後、ベーカーストリート221Bの向かい側にある本屋の入口の前で、ホームズは、ワトスンに対して、事件の解説を行う。コナン・ドイルの原作の場合、ホームズが事件の解説をするのは、City and Suburban Bank のコーブルク支店の地下金庫室から出て来た時である。

英国 TV ドラマ版は、事件の解説を終えたホームズとワトスンの二人がベーカーストリート221Bへと入って行くのを、ナポレオン金貨の強奪を妨害されたモリアーティー教授が遠くから睨みつけている場面で終わり、次作の「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月15日付ブログで紹介済)」へと続いていく。


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