2022年10月24日月曜日

キャロル・ブッゲ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Haunting of Torre Abbey)- その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2018年に出版された
キャロル・ブッゲ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」の表紙

本作品「トーア寺院に出没する幽霊(The Haunting of Torre Abbey)」は、米国出身の推理作家であるキャロル・ブッゲ(Carole Bugge:1953年ー)によって、2000年に発表された。

上記以外にも、彼女によって、シャーロック・ホームズのパスティーシュ作品である「インドの星(The Star of India → 2022年6月19日 / 7月13日 / 9月22日付ブログで紹介済)」が、1997年に発表されている。


「Watson, do you believe in ghosts?(ワトスン、君は幽霊の存在を信じるかい?)」と言うシャーロック・ホームズのセリフから、この物語は始まる。

霧が深い10月のある晩のことだった。ベーカーストリート221B(221B Baker Street)の居間の燃えさかる暖炉の火を前にしたホームズからジョン・H・ワトスンへの質問だった。


ホームズは、ワトスンに対して、デヴォン州(Devon)トーキー(Torquay)に所在する元修道院だったトーア寺院(Torre Abbey)に住むチャールズ・ケアリー卿(Lord Charles Cary)から受け取った手紙を見せる。


チャールズ・ケアリー卿は、現在、オックスフォード(Oxford)において、医学を学んでいるのだが、緊急の電報を受け取り、10月7日(金)の夜、急いで実家のトーア寺院へと戻った。

ケアリー家は、既に2世紀にわたり、トーア寺院に住んでおり、先代のケアリー卿であるヴィクター・ケアリー(Victor Cary - チャールズの父親)が最近亡くなったため、長男であるチャールズ・ケアリーが爵位を継いでいた。先代のヴィクター・ケアリー卿は、トーア湾(Torre Bay)への泳ぎに出かけたが、海で溺死したものと思われていた。彼の衣服については、海岸で見つかったものの、彼の遺体に関しては、残念ながら、発見されなかったのである。

そのため、ケアリー家には、現在、チャールズ・ケアリー卿しか、男性は居らず、彼がトーア寺院に戻ると、母親のレディー・マリオン・ケアリー(Lady Marion Cary)と妹のエリザベス・ケアリー(Elizabeth Cary)の二人は、今にも気を失いそうな状態だった。


話は、14世紀後半に遡る。

トーア修道院長(Abbot of Torre)であるウィリアム・ノートン(William Norton)は、修道士(monk)の一人であるシモン・ヘイスティーリッジェス(Symon Hastyriges)を殺害したものと疑われていた。ウィリアム・ノートン修道院長は、被害者であるシモン・ヘイスティーリッジェスによく似た人物を仕立て上げて、疑惑を逃れようとしたが、周囲の人間は、ウィリアム・ノートン修道院長が、首を切断したシモン・ヘイスティーリッジェスの遺体を、教会付属の墓地に隠しているのだと考えていた。

ウィリアム・ノートン修道院長に対する疑惑は、遂に明らかにされなかったが、それ以来、トーア修道院のホールで、首のない修道士が彷徨い歩いているのを見かけたという報告が相次ぐ。更に、トーア修道院へと続く道を、幽霊の馬に乗った首のない修道士が駆けているのを見かけたという人達まで現れたのである。


トーア寺院に戻ったチャールズ・ケアリー卿の問い掛けに対して、母親と妹は、驚くべき話をする。

2日前の10月5日(水)の夜、妹のエリザベスが、自分の寝室で眠っていると、ホールでネズミが走り回る音を聞いたように感じた。ベッドから降りた彼女は、火をつけたロウソクを持って、ホールへ出たところ、そこに、首のない修道士の姿を見かけたのである。この修道士は、一体、どこから現れたのだろうか?首のない修道士の姿を見た彼女は、直ぐに気を失ってしまい、気がついた時には、その姿はどこにもなかった。しかし、彼女は、建物の外で、馬の蹄の音を聞いたと断言した。

娘から話を聞いた母親のレディー・マリオン・ケアリーは、息子のチャールズ・ケアリー卿宛に、緊急の電報を打ったのであった。


軽い夕食をとったチャールズ・ケアリー卿は、塔の3階(3rd Floor)にある自室へと下がった。そこからは、かつて僧院の裏庭で、現在は、ケアリー家の中庭となっている場所を見下ろせる部屋だった。

ある音を聞いて、チャールズ・ケアリー卿が、窓のカーテンを開けて、中庭を見下ろすと、そこには、首のない修道士が立っていたのである。チャールズ・ケアリー卿が階段を駆け降りて、中庭まで出てみると、残念ながら、修道士の姿は既に掻き消えていた。


チャールズ・ケアリー卿は、ホームズとワトスンの二人に、デヴォン州トーキーのトーア寺院まで来て、首のない修道士が現れた件について、捜査してほしいと、手紙で依頼してきたのである。


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