2022年10月27日木曜日

サム・シチリアーノ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Venerable Tiger by Sam Siciliano)- その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2020年に出版された
サム・シチリアーノ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」の表紙

本作品「尊い虎(The Venerable Tiger)」は、米国ユタ州ソルトレークシティー出身の作家であるサム・シチリアーノ(Sam Siciliano:1947年ー)によって、2020年に発表された。

本作品は、(1)1994年に発表された「オペラ座の天使(The Angel of the Opera → 2015年1月24日付ブログで紹介済)」、(2)2012年に発表された「陰謀の糸を紡ぐ者(The Web Weaver → 2016年11月13日付ブログで紹介済)」、(3)2013年に発表された「グリムスウェルの呪い(The Grimswell Curse → 2021年9月12日 / 9月19日 / 9月26日付ブログで紹介済))」、(4)2016年に発表された「白蛇伝説(The White Worm → 2021年10月17日 / 10月21日付ブログで紹介済))」および(5)2017年に発表された「月長石の呪い(The Moonstone’s Curse → 2022年8月28日 / 9月28日 / 10月1日付ブログで紹介済)」の続編に該り、シャーロック・ホームズの相棒を務めるのは、彼の従兄弟で、友人でもあるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)で、本来の事件記録者であるジョン・H・ワトスンは、前5作と同様に、本作品には登場しない。


ある年の4月の火曜日の朝、ヘンリー・ヴェルニール医師が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)に住む従兄弟のシャーロック・ホームズの元を訪れたところ、玄関口に立っていた小柄ながら、美しい若い女性が、突然、気を失ってしまう現場に遭遇する。近くに居た人に玄関のベルを鳴らしてもらうと、ヘンリー・ヴェルニール医師は、その女性を建物の中へ運び込んだ。

ヘンリー・ヴェルニール医師が、ホームズの居間のソファーの上に、女性を横たえ、診察しようとして、彼女の左手首をとると、彼女の白い手首には、まだ新しい青痣があった。それを見たホームズが、眉を顰める。「彼女は、虐待されているな。」

気がついた女性は、イザベル・ストーン(Isabel Stone:21歳)と名乗り、ホームズのところに相談に訪れた、とのこと。ホームズが気付け用にブランデーのグラスを渡して、飲ませると、彼女の青白い顔に、色みが戻ってきた。

そして、イザベル・ストーンは、自分の身の上話を始めた。


彼女は、ヒューバート・ストーン少佐(Major Hubert Stone)を父に、メーベル・ストーン(Mabel Stone)を母にして、インドで出生。

父親のヒューバート・ストーン少佐は、インドに20年程駐在していたが、次第に健康を害して、娘のイザベルが5歳の時に、この世を去ってしまう。そのため、母親のメーベルと娘のイザベルは、英国へと戻ることになった。


母親のメーベルと娘のイザベルは、ロンドンに住むメーベルの両親の下に身を寄せたが、そこへグリムボルド・プラット大尉(Captain Grimbold Pratt)が訪ねて来る。

グリムボルド・プラット大尉は、ヒューバート・ストーン少佐と一緒に、1857年にインドで起きたセポイの乱(Sepoy Rebellion)を戦った同僚であった。二人は、性格は正反対だったにもかかわらず、仲の良い友人だった。ただし、グリムボルド・プラット大尉は、酒、喧嘩、ギャンブルや女性に目が無い人物で、そのために、ヒューバート・ストーン少佐程には昇進できなかった。

グリムボルド・プラット大尉は、メーベル・ストーンに対して、数年前に、インドのボンベイにおいて、妻のアラベラ(Arabella)と娘のスーザン(Susan)の二人をコレラで亡くした、と告げる。

不思議なことに、妻と娘を亡くしたグリムボルド・プラット大尉と夫を亡くしたメーベル・ストーンの二人は、後に再婚することになる。


グリムボルド・プラット大尉は、年老いた父親が亡くなると、妻のメーベルと義理の娘のイザベルを連れて、ロンドンから列車で1時間位のところにあるサリー州(Surrey)レザーヘッド(Leatherhead)の近くのストークロイヤル(Stoke Royal)の地所へと引っ越した。

グリムボルド・プラット大尉は、年とともに、短気が激しくなってきた。また、彼は、自分の地所において、猿、鸚鵡や孔雀等のインドに生息する動物を飼い始めた。更に、彼は、虎(名前:ルドラ(Rudra))と狼(名前:カンハ(Kanha))も飼っていて、虎と狼が周辺に放牧されている羊達を狙ったため、地元の住民達との間で、大きなトラブルの種となっていたのである。


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