2022年10月22日土曜日

グレアム・ムーア作「シャーロック・ホームズ殺人事件」(The Holmes Affairs by Graham Moore)- その3

Arrow Books から2011年に出版されている
グレアム・ムーア作「シャーロック・ホームズ殺人事件」の表紙(部分)
(Cover image : Arcangel Images)

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆半(2.5)


本作品は、2つのストーリーが並行して進む構造となっている。

一つは、「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」を発表した後、シャーロック・ホームズシリーズを再会するまでのホームズ不在時期に、アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)が、友人のブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)と一緒に、ロンドンのイーストエンド(East End)で発生した若い女性の連続殺人事件を独自に捜査する話で、コナン・ドイルとブラム・ストーカーの二人は実在の人物の上、実際、二人は友人同士であったが、事件自体は実際の話ではない。

もう一つは、現代(2010年)の話で、行方不明であったコナン・ドイルの日記帳(ちょうど上記の頃が対象)と、それに纏わる事件を解明しようとするシャーロキアンであるハロルド・ホワイト(Harold White)の捜査が、主体となっている。勿論、ハロルド・ホワイトは架空の人物であるが、実は、事件自体は、ロンドンで実際にあった話(未解決)がモデルとなっている。筆者も、本編を読み終わった後、巻末にある作者であるグレアム・ムーア(Graham Moore)の後書きで知ったのだが、本件自体の内容に納得できなかったこともあり、余計に後味が悪かった。


(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)


二つのストーリーが、短いページで入れ替わっていて、ある意味で読み易いが、一方では、あまり話が進展しないうちに、もう一つのストーリーへ移行してしまうため、読んでいて、もどかしい気持ちが強くなる。


(3)コナン・ドイル / ブラム・ストーカーとハロルド・ホワイトの活躍について ☆☆半(2.5)


コナン・ドイルとブラム・ストーカーのペアにしろ、ハロルド・ホワイトにしろ、当然のことながら、事件捜査のプロではないので、ホームズ並みの華々しい活躍をするまでには、残念ながら、至っていない。

両方のストーリーで描かれる事件自体が、なんとなく、気色が悪い感じが強く、それが前面に出てしまっていて、正直ベース、ほとんど楽しめなかった。

また、二つのストーリーが交互に入れ替わるのが早く、それも良い印象に繋がっていない。


(4)総合評価 ☆☆半(2.5)


コナン・ドイル / ブラム・ストーカーが主人公となるストーリーについて言うと、読み終わった後、あまり後味が良くなかった。また、事件的に、その内容を記した日記帳が、コナン・ドイルにとって、どうしても他人の目に触れないように処分したくなる程なのか、やや疑問である。

一方、シャーロキアンであるハロルド・ホワイトが主人公となるストーリーに関しては、上記の事件にかかる記述がある日記帳を巡る事件が主体となるが、ロンドンで起きた実際の事件(未解決)をモデルにしていることもあるのかもしれないが、スッキリとしない結末になっていて、「そのために、数百ページを費やしているのか?」と思う位、納得し難いものがある。このようなストーリーでは、ホームズの研究を行う世界的な団体「ベーカーストリート不正規隊(The Baker Street Irregulars)」の有名人であるアレックス・ケール(Alex Cale)の死に対する説明に、合理性がないと言える



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