2022年10月12日水曜日

グラフィックノベル「シャーロック・ホームズの世界1 キーロッジ事件」(Sherlock Holmes Society 1 - L’Affaire Keelodge)- その2

フランスの Editions Soleil 社から2015年から出版されている
「シャーロック・ホームズの世界1 キーロッジ事件」の裏表紙


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆(3.0)


本作品は、「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」、3年間に及ぶ海外放浪、そして、「空き家の冒険(The Empty House → 2022年5月27日 / 7月1日 / 7月10日 / 7月17日 / 7月24日 / 7月29日 / 8月3日 / 8月6日付ブログで紹介済)」を経て、シャーロック・ホームズがロンドンに帰還した1894年4月から3ヶ月が経過した同年の夏(7月)に、物語が設定されている。

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作では、1894年の夏にホームズが取り扱った事件は、公式には記録 / 発表されていないので、ちょうどその谷間を埋める事件となっている。


(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)


一応、物語は収束を迎えるが、キーロッジ村(Keelodge)の住民が何故ゾンビ化したのか、その原因については、残念ながら、最後まで明らかにはされていない。

この「シャーロック・ホームズの世界(Sherlock Holmes Society)」シリーズは、第4巻まで発行されており、第2巻には、英国の Titan Publishing Group Ltd. から出版されている「シャーロック・ホームズの更なる冒険(The further adventures of Sherlock Holmes)」シリーズにおいて、ホームズと対決したある有名な人物が登場するので、今後、本シリーズが進む過程で、明らかにされるのではないかと期待する。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆半(3.5)


コナン・ドイルの原作で描かれているような「静」が主体のホームズではなく、「動」が主体のホームズが活躍する。

ジョン・H・ワトスンと兵士レベッカ・ジョーンズ夫人(Mrs. Rebecca Jones)の関係についても、まだ明らかにされていないが、レベッカの身を案じて苦悩するワトスンを気にかけるホームズの優しさが、よく描かれている。


兵士のレベッカ・ジョーンズ夫人が最早手の施しようが無い状態であることを知ったホームズは、
ワトスンに対して、別れを告げるように諭した。


物語の中盤、ホームズがワトスンに対してかける言葉「非常に申し訳ないが、我々には、まだ成し遂げなければならないことがある。(彼女に)別れを告げて、一緒に来るんだ。(Je suis sincerement desole, mais nous avons un devoir a accompir. Faites vos adieux at venez.)」が、非常に悲しい。


(4)総合評価 ☆☆☆(3.0)


本作品は、本格推理ものと言うよりは、ホラーめいたサスペンスもので、かつ、活劇ものと言う感じであり、コナン・ドイルの原作とは、やや趣きを異にしている。


全ての住民がゾンビ化されたキーロッジ村が、英国政府によって焼き払われるのを
一人静かに見つめるホームズ。

1巻では、いろいろな謎が未解決のまま残されており、おそらく、4巻全部を通して、一つの大きなストーリーになっているのではないかと思われるので、次巻以降に期待したい。 

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