2022年10月28日金曜日

島田荘司作「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険」(’New 15 Fried Rats The Adventures of John H. Watson’ by Soji Shimada)- その1

日本の新潮社から2015年に出版された
島田荘司作「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトスンの冒険」
(ハードカバー版)のカバー表紙
(装幀:新潮社装幀室)-
コナンドイル作「バスカヴィル家の犬
(The Hound of the Baskervilles)」において、
ジョン・H・ワトスンが、
サー・ヘンリー・バスカヴィル(Sir Henry Baskerville)と
ジェイムズ・モーティーマー医師(Dr. James Mortimer)に帯同して、
バスカヴィル館(Baskerville Hall)へと馬車で向かう場面を描いた
シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget 1860年 - 1908年)の挿絵が使用されている。

新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険(New 15 Fried Rats The Adventures of John H. Watson)」は、日本の推理小説家 / 小説家である島田荘司氏(1948年ー)が2015年に発表した長編推理小説で、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編「赤毛組合(The Red-Headed League → 2022年9月25日 / 10月9日 / 10月11日 / 10月16日付ブログで紹介済)」をベースにしたホームズのパスティーシュ作品である。


なお、「赤毛組合」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、2番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1891年8月号にに掲載された。そして、ホームズシリーズの第1短編集である「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1892年)に収録されている。


ホームズ関係で言うと、島田荘司氏は、他にも、1984年に長編推理小説「漱石と倫敦ミイラ殺人事件(A Study in 61 : Soseki and the Mummy Murder Case in London → 2019年9月22日 / 9月29日 / 11月7日 / 12月7日付ブログで紹介済)」というパスティーシュ作品を発表しており、当該作品内において、島田荘司氏は、コナン・ドイルが生み出したホームズという架空のキャラクターの世界に、日本の小説家 / 評論家 / 英文学者である夏目漱石(本名:夏目金之助 / 1867年ー1916年)という実在の人物を客演させている。


島田荘司氏作「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険」の冒頭は、コナン・ドイルの原作とは全く異なり、非常に不思議な始まり方をする。


ロンドンの経済活動の中心地であるシティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)近くにあるザクセンーコーブルクスクエア(Saxe-Coburg Square → 2016年1月1日付ブログで紹介済)において、燃えるような赤毛の初老の男性ジェイベス・ウィルスン(Jabez Wilson)が営む質屋(pawnbroker)に、質屋の裏手にある City and Suburban Bank の頭取であるメリーウェザー氏(Mr Merryweather)が訪れる。


メリーウェザー氏によると、現在、銀行の地下金庫室内には、インド金貨3万枚が預けられている、とのこと。

インド北部のパンジャーブに、ルディヤーナーという藩王国があり、藩王は、王室財産である3万枚のインド金貨を、王宮の地下の床下に隠して、厳重に保管していた。長年の戦乱に乗じて、藩民が藩王を追放した際、藩民は。床下に隠された王室財産を発見することができなかった。その後、セポイの反乱を制圧するグレイト・マスカット将軍率いる平定軍が、王宮に入り、インド金貨3万名を発見の上、接収したのである。


英国に戻ったグレイト・マスカット将軍は、側近十数名を引き連れて、City and Suburban Bank のメリーウェザー氏の元を訪れ、「国家機密」として、インド金貨3万枚の保管を依頼したのであった。インド金貨は、2千枚ずつ鉛の薄板に挟んで、木箱に入れられ、全部で15箱が、地下金庫室の壁際に、天井まで積まれていた。


ただし、表向き、メリーウェザー氏は、City and Suburban Bank 内の他の人達には、銀行内の銀行の資金強化のために、フランス銀行から3万枚のナポレオン金貨を秘密裏に借り入れたということにしてあった。


そして、メリーウェザー氏は、ジェイベス・ウィルスンに対して、このインド金貨3万枚の強奪計画を持ち掛けた。

メリーウェザー氏の計画は、次の通りだった。他の銀行員達に対しては、「地下金庫室の拡張と内装の工事のため」と偽って、実際には、銀行の地下金庫室の床下から、裏手にあるジェイベス・ウィルスンの質屋の床下まで、トンネルを掘り、重量的に、15箱全てを持ち出すのは無理なので、3箱程、自分達のものにする予定なのだ。メリーウェザー氏としては、インド金貨3万枚は表に出せない財宝なので、たとえ3箱が盗まれたとしても、グレイト・マスカット将軍は何も言えないという腹づもりであった。


強奪計画の話に渋るジェイベス・ウィルスンに対して、メリーウェザー氏は、


(1)ジェイベス・ウィルスンの確固たるアリバイを確保するために、毎日 Pope’s Court へ通勤して、午前中、そこで勤務仕事をする状況を作り出す。

(2)ジェイベス・ウィルスンの質屋に店員として入り込んだ小悪党が、彼の留守を利用して、こっそりトンネルを掘ったという話で押し通す。

(3)この計画を成功させるために、スコットランドヤードの信頼が厚いベーカーストリート221B(221B Baker Street)のホームズのところへ相談に行って、彼に「道化役」を演じてもらう。


と断言した。


その話の中で、メリーウェザー氏は、ジェイベス・ウィルスンに対して、「新しい十五匹のネズミのフライ(New 15 Fried Rats)」という謎の言葉を発した。

「新しい十五匹のネズミのフライ」とは、一体、何のことだろうか?


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