2023年1月7日土曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その5

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


(26)「愛の旋律(Giant’s Bread)」



1926年に発表した長編第6作目「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2022年11月7日付ブログで紹介済)」のフェア・アンフェア論争により、アガサ・クリスティーの知名度は大きく高まり、ベストセラー作家の仲間入りを果たしたが、同年、最愛の母親を亡くしたことに加えて、夫であるアーチボルド・クリスティー(Archibald Christie:1889年ー1962年)に、別に恋人が居ることが判明して、精神的に不安定な状態にあった。そして、同年12月3日、アガサ・クリスティーは、住み込みのメイドに対して、行き先を告げず、「外出する。」と伝えると、当時珍しかった自動車を自分で運転して、自宅を出たまま、行方不明となった。

上記の失踪事件を経て、1928年に、アガサ・クリスティーは、夫のアーチボルドと離婚することになる。


同年の秋、ディナーパーティーにおいて、他の出席者から勧められたオリエント急行に乗って、アガサ・クリスティーは、中東旅行へと出発した。

中東や考古学等に興味を抱いたアガサ・クリスティーは、翌年の1930年に、再度、中東旅行に出かけ、ウルの発掘現場において、レオナード・ウーリーの弟子として働いていた考古学者で、14歳年下のマックス・エドガー・ルシアン・マローワン(Max Edgar Lucien Mallowan:1904年ー1978年)と出会い、彼からプロポーズを受け、同年の9月11日に再婚する。


アガサ・クリスティーは、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)に続くシリーズ探偵となるミス・ジェーン・マープルの長編第1作目である「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月29日 / 10月30日付ブログで紹介済)」を、1930年に発表する。


アガサ・クリスティーは、同年、「メアリー・ウェストマコット(Mary Westmacott)」名義で、「愛の旋律」と言うロマンス小説も発表した。

その後、彼女は、


・「未完の肖像(Unfinished Portrait)」(1934年)

・「春にして君を離れ(Absent in the Spring)」(1944年)

・「暗い抱擁(The Rose and the Yew Tree)」(1947年)

・「娘は娘(A Daughter’s a Daughther)」(1952年)

・「愛の重さ(The Burden)」(1956年)


のロマンス小説を出版したが、最初のロマンス小説の発表から19年を経過するまで、メアリー・ウェストマコットが実はアガサ・クリスティーであることは伏せられていた。


(27)道化役の仮面(Harlequin Mask)



アガサ・クリスティーは、1930年に、エルキュール・ポワロ、トーマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))/ プルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence)- 初登場作品:長編「秘密機関(The Secret Adversary)」、そして、ミス・マープルに続く探偵役として、ハーリー・クィン(Harley Quin)を主人公にした短編集「謎のクィン氏(The Mysterious Mr. Quin)」も発表した。


イタリアの即興喜劇や英国の無言劇等、きまった性格を与えられたきまった名前の人物が、きまった衣装を身につけて登場する劇において、まだら服を着た道化役(Harlequin)が、人々を間違った方向へ導くように、ハーリー・クィンも、非常に変わった予想もつかない方法を以って、推理を展開するのである。


(28)日刊新聞の個人広告(Advertisement)



アガサ・クリスティーは、更に、1934年、パーカー・パイン(Parker Pyne)を主人公にした短編集「パーカー・パイン登場(Parker Pyne Investigates)<米題: Mr. Parker Pyne, Detective)」を発表した。


日刊新聞の第一面に、毎朝きまって、次のような個人広告が掲載される。


「あなたは、幸せですか?そうでなければ、リッチモンドストリート17番地のパーカー・パインまで御相談下さい。(Are you happy? If not, consult Mr. Parker Pyne, 17 Richmond Street.)」と。


このパイン氏の風変わりな呼びかけに応じて、彼の向かい側に座り、悩み事を打ち明けることから、物語が始まる。

英国官庁において、統計収集の仕事に従事した後、探偵業に転じたパイン氏は、手品師のように、依頼人達の悩みを解決して、彼らの夢を現実に変えていくのである。


(29)林檎(リンゴ)



探偵役ではないが、パーカー・パインシリーズに、女流推理作家であるアリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)が、協力者として登場する。

アリアドニ・オリヴァー夫人は、アガサ・クリスティーが自分自身をモデルにしていると言われている。


アリアドニ・オリヴァー夫人は、以降、ポワロシリーズの「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)等やノンシリーズの「蒼ざめた馬(The Pale Horse)」(1961年)にも登場する。


アリアドニ・オリヴァー夫人が大好物なのが、林檎であるが、ポワロシリーズの「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)で起きた事件後、一時期、林檎を食べることを躊躇するようになる。


(30)英国推理作家クラブ(The Detection Club)



英国推理作家クラブは、推理作家のアントニー・バークリー・コックス(Anthony Berkeley Cox:1893年ー1971年)が中心となって、1930年に設立された。同クラブは、第一次世界大戦後に新興した本格推理小説が、スリラー小説の中に埋没するのを防ぎ、一ジャンルとして発展させるベく、推理作家の親交を目的とした。


英国推理作家クラブは、伝統的なクラブに近く、招聘者のみが入会を許可された。当初は、入会時に、「フェアプレーの遵守」や「盗作盗用をしない」等の条件につき、秘密儀式めかして、本ジグソーパズルに描かれている骸骨(Eric the Skull)に手を置いて、誓約を行うという慣行を守っていた。


英国推理作家クラブの初代会長は、作家(+推理作家)、批評家、詩人、及び、随筆家であるギルバート・キース・チェスタトン(Gilbert Keith Chesterton:1874年ー1936年)が、1930年から1949年にかけて、務めた。

なお、アガサ・クリスティーも、1957年から1958年にかけて、第4代目の会長を務めている。


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