2023年1月3日火曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その4

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


(21)オリエント急行(Orient Express)


緑色の列車が、オリエント急行の車輌。


アガサ・クリスティーは、1920年の推理作家デビュー以降、長編5作と短編集1作を既に発表していたが、推理作家としての彼女の知名度は、今ひとつだった。しかしながら、1926年に発表した長編第6作目「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2022年11月7日付ブログで紹介済)」のフェア・アンフェア論争により、アガサ・クリスティーの知名度は大きく高まり、ベストセラー作家の仲間入りを果たした。

一方で、同年、アガサ・クリスティーは、最愛の母親を亡くしたことに加えて、夫であるアーチボルド・クリスティー(Archibald Christie:1889年ー1962年)に、別に恋人が居ることが判明して、精神的に不安定な状態にあった。

当時、ロンドン近郊の田園都市であるサニングデール(Sunningdale)に住んでいたアガサ・クリスティーは、同年12月3日、住み込みのメイドに対して、行き先を告げず、「外出する。」と伝えると、当時珍しかった自動車を自分で運転して、自宅を出たまま、行方不明となってしまう。

「アクロイド殺し」がベストセラー化したことにより、有名人となった彼女の失踪事件は、世間の興味を非常に掻き立てた。警察は、彼女の行方を探すとともに、彼女が事件に巻き込まれた可能性も視野に入れて、捜査を進め、夫のアーチボルドも疑われることになった。マスコミは格好のネタに飛び付き、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-193年)やピーター・デス・ブリードン・ウィムジイ卿(Lord Peter Death Bredon Wimsey)シリーズの作者であるドロシー・L・セイヤーズ(Dorothy Leigh Sayers:1893年ー1957年)等が、マスコミから求められて、コメントを出している。

11日後、彼女は、保養地(Harrogate)のホテル(The Swan Hydropathic Hotel)に別人(夫アーチボルドの愛人であるナンシー・ニール(Nancy Neele)と同じ姓のテレサ・ニール(Teresa Neele))の名義で宿泊していたことが判り、保護された。


上記の通り、1926年に、アガサ・クリスティーは、キャリア面において、ベストセラー作家の仲間入りを果たすとともに、プライベート面においても、失踪事件を起こして、世間からの脚光を浴びてしまう。

上記の失踪事件を経て、1928年に、アガサ・クリスティーは、夫のアーチボルドと離婚することになる。


同年の秋、ディナーパーティーにおいて、他の出席者から勧められたオリエント急行に乗って、アガサ・クリスティーは、中東旅行へと出発して、トリエステ(Trieste)、ベオグラード(Belgrade)、イスタンブール(Istanbul)、アレッポ(Aleppo)、ダマスカス(Damascus)、そして、バグダッド(Baghdad)まで足を伸ばした。その後、メソポタミア文明の首都と見做されていたウル(Ur)の発掘現場(1925年-1931年)も訪問して、考古学者のレオナード・ウーリー(Leonard Woolley)夫妻と知り合う。

この時の経験が、後に「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」(1934年)に結実するのである。 


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」の
ペーパーバック版の表紙


中東や考古学等に興味を抱いたアガサ・クリスティーは、翌年の1930年に、再度、中東旅行に出かけ、ウルの発掘現場において、レオナード・ウーリーの弟子として働いていた考古学者で、14歳年下のマックス・エドガー・ルシアン・マローワン(Max Edgar Lucien Mallowan:1904年ー1978年)と出会い、彼からプロポーズを受け、同年の9月11日に再婚する。

(22)ミス・ジェーン・マープル(Miss Jane Marple)


アガサ・クリスティーの左腕の後ろにあるのが、
ミス・ジェーン・マープル像。


アガサ・クリスティーは、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)に続くシリーズ探偵となるミス・ジェーン・マープルの長編第1作目である「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月29日 / 10月30日付ブログで紹介済)」を、1930年に発表する。

「牧師館の殺人」は、書籍として出版された順番で言うと、ミス・マープルの初登場作品である。ただし、厳密には、1927年12月から雑誌に掲載された短編の方が、ミス・マープルの初登場作品であるものの、「牧師館の殺人」に遅れること、10年後の1930年に短編集「The Thirteen Problems(ミス・マープルと13の謎)<米題: The Tuesday Club Murders(火曜クラブ)」として出版されている。


(23)野鳥観察(Birdwatching)


ミス・マープルが、野鳥観察に使う双眼鏡(ピンク色)

(24)編み物(Knitting)


ミス・マープルが編み物に使う編み物棒(赤色)


ロンドン郊外のセントメアリーミード村(St. Mary Mead)に住む白毛の老嬢であるミス・マープルは、ガーデンニング、野鳥観察や編み物等を趣味としており、それらを隠れ蓑にして、「人間の本性の観察」を行い、村で起きることは何でも御見通しで、最も名探偵らしくない名探偵なのである。


(25)キバナノクリンザクラ酒(Cowslip Wine)


オリエント急行の車両の前にあるのが、
ミス・マープルが友人達をもてなす際に出す
自家製のキバナノクリンザクラ酒が入った瓶。


ミス・マープルは、カモミールティー(camomile tea)や自家製のキバナノクリンザクラ酒等を以って、自宅を訪問する友人達をもてなすのである。

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