2023年1月11日水曜日

アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー(Agatha Christie - Marple - Calendar 2023)- 「復讐の女神(Nemesis)」

ビル・ブラッグ氏が描く
ミス・マープルシリーズの長編第11作目である
「復讐の女神」の一場面


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェーン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、12番目を紹介したい。


(12)「復讐の女神(Nemesis)」(1971年)


「復讐の女神」は、1971年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第11作目である。

ミス・マープルシリーズの長編の発表順としては、次の「スリーピングマーダー(Sleeping Murder → 2022年12月1日付ブログで紹介済)」(1976年)が最後の作品であるが、同作は、アガサ・クリスティーにより、ずーっと以前に執筆されているため、執筆順としては、実質的に、「復讐の女神」が最後の作品となる。


ミス・マープルが、以前、体調を崩したため、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West)の手配により、カリブ海のサントノーレ島(St. Honore)にあるリゾートホテル「ゴールデンパーム(Golden Palm)」において転地療養していた際に遭遇した殺人事件(カリブ海の秘密(A Caribbean Mystery → 2023年1月4日付ブログで紹介済)」(1964年))を通して知り合いになった実業家であるジェイスン・ラフィール(Jason Rafiel)が、最近亡くなった。

まもなく、ミス・マープルの元に、ジェイスン・ラフィールの弁護士経由、彼からの手紙が届く。ジェイスン・ラフィールとしては、ミス・マープルに、ある犯罪を調べてほしい、とのことだったが、彼がミス・マープルに調べてほしい犯罪がどういったものなのかについて、具体的な手掛かりをほとんど残していなかった。

仮に、ミス・マープルが、ジェイスン・ラフィールの希望通り、その犯罪を解決することができた場合、彼から2万ポンドを相続できることになっていた。


ジェイスン・ラフィールの依頼通りに、犯罪を調べるにしても、具体的な手掛かりに乏しいミス・マープルは、彼が生前に手配した英国の有名な邸宅や庭園を巡るツアーに参加することから始めるしか、他にも手がなかった。

このツアーには、ミス・マープル以外に、15名の参加者が居り、その中には、エリザベス・テンプル(Elizabeth Temple)やミス・クック(Miss Cooke)が含まれていた。エリザベス・テンプルは、引退した学校の校長で、その学校の生徒で、ジェイスン・ラフィールにとって不名誉な息子であるマイケル・ラフィール(Michael Rafiel)と婚約していたヴェリティー・ハント(Verity Hunt)の話について、ミス・マープルに対して、聞かせてくれる。また、ミス・クックは、ミス・マープルが住むロンドン郊外のセントメアリーミード村(St. Mary Mead)において最近見かけたことがある女性だった。


更に、ジェイスン・ラフィールは、生前、知り合いの未亡人であるラヴィニア・グリン(Lavinia Glynne)に対して、手紙を書いていて、英国の有名な邸宅や庭園を巡るツアーの中で、最も体力的に厳しい数日間を、ミス・マープルが彼女の住むマナーハウスにおいて過ごすことができるよう、依頼していたのであった。どうやら、これが、ジェイスン・ラフィールがミス・マープルに残した2番目の手掛かりであると言えた。


ラヴィニア・グリンからの招待を受けて、ミス・マープルは、彼女が住むマナーハウスに滞在する。そして、そこで、ミス・マープルは、ラヴィニア、彼女の姉であるクロチルド・ブラッドベリースコット(Clotilde Bradbury-Scott)と妹であるアンシア・ブラッドベリースコット(Anthea Bradbury-Scott)の3姉妹に出会うことになる。


マナーハウスに滞在するミス・マープルが、屋敷の敷地内を見学していた際、崩れた温室を覆っているポリゴナム・バルドシュアニカム(polygonum baldschuanicum)の花が今にも咲こうとしていることに気付いた

ミス・マープルが尋ねると、屋敷の使用人が、


・マイケル・ラフィールの婚約者だったヴェリティー・ハントは、彼女の両親が亡くなった後、ブラッドベリースコット3姉妹が住むこのマナーハウスに引き取られて、生活しており、特に長女のクロチルドに非常に懐いていた。

・しかし、その後、ヴェリティーは惨殺されてしまい、マイケルが、彼女を殺害した犯人として逮捕されて、刑務所に収監されている。


という話を聞かせてくれた。


屋敷の使用人から話を聞いたミス・マープルは、ジェイスン・ラフィールが彼女に調べてほしい犯罪とは、正にこのことだと理解したのである。



カレンダーには、マナーハウスの敷地内を見学していたミス・マープルが、温室内を覆い、今にも咲こうとしているポリゴナム・バルドシュアニカムの花を眺めているシーンが描かれている。

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストでは、ポリゴナム・バルドシュアニカム(日本名は、「ナツユキカズラ」だと思われる)の花の色は「黄色」で描かれているが、実際には、「白色」が正当である。


筆者が保有する株式会社北隆館発行の「学生版原色牧野日本植物図鑑」には、
残念ながら、ポリゴナム・バルドシュアニカム(日本名:「ナツユキカズラ」)は記載されていないが、
同じ
ポリゴナム属で、花が白いものを抜粋。


Harper Collins Publishers 社から出版されている「復讐の女神」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏によるイラストが、物語の終盤、ヴェリティー・ハントを殺害した真犯人が、ミス・マープルを殺害しようとして、彼女が飲む牛乳に混入させた毒薬の瓶の形に切り取られているものが使用されている。


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