2025年8月4日月曜日

アガサ・クリスティー作「鳩のなかの猫」<小説版(愛蔵版)>(Cat Among the Pigeons by Agatha Christie )- その2

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「鳩のなかの猫」の
愛蔵版(ハードカバー版)の裏表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. ) -
表紙側の小説のタイトルの上に留まっていた鳩達の数羽が、
猫の餌食になったものと思われる。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1959年に発表した「鳩のなかの猫(Cat Among the Pigeons)」(1959年)の場合、中東のラマット王国(Ramat)において、国王に対する革命が勃発するところから、物語が始まる。


若き国王であるアリ・ユースフ(Prince Ali Yusuf)は民主化を進めていたが、自身に迫る危機を事前に察した彼は、親友で、お抱え飛行士でもあるボブ・ローリンスン(Bob Rawlinson)に対して、数十万ポンドの価値にもなる王家に伝わる宝石を密かに国外へ運び出すことを依頼。

アリ・ユースフ国王からの依頼を受けたボブ・ローリンスンは、咄嗟に姉のジョアン・サットクリフ(Joan Sutcliffe)と姪のジェニファー・サットクリフ(Jennifer Sutcliffe)が滞在しているホテルの部屋を訪ねたが、生憎と、彼女達は留守だった。そこで、ボブ・ローリンスンは、姪のジェニファーが使っているテニス用のラケットの握り部分に宝石が入った包みを隠すと、ホテルの部屋を出た。ボブ・ローリンスンとしては、自分の行動を誰にも見られていないつもりでいたが、実際には、彼の行動は、何者かに見られていたのである。


母親のジョアン・サットクリフと娘のジェニファーは、数十万ポンドにものぼる宝石が自分達の目と鼻の先にあるとは夢にも思わず、ジェニファーの学校入学に合わせて、ラマット王国から英国へと帰国した。

その後、アリ・ユースフ国王は、ボブ・ローリンスンと一緒に、飛行機でラマット王国を脱出しようと試みたが、途中で事故により墜落した結果、2人とも亡くなってしまう。


英国の Harper Collins Publishers 社から以前に出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「鳩のなかの猫」のペーパーバック版の表紙


それから3ヶ月後、ボブ・ローリンスンの姪であるジェニファー・サットクリフは、ロンドンにある有名な私立女子校であるメドウバンク校(Meadowbank School)へと通っていた。

メドウバンク校は、英国屈指の名門校で、王族の子女達が学ぶ一方で、革新的な教育システムも採り入れていた。亡くなったアリ・ユースフ国王の従姉妹で、彼の婚約者でもあったラマット王国のシャイスタ王女(Princess Shaista)も、新入生として、メドウバンク校に入学していた。


メドウバンク校の創設者で、校長も務めるオノリア・バルストロード(Honoria Bulstrode)は、夏季学期の始業日の行事を滞りなく進める中、引退と自分の後継者の選定を考えていた。

オノリア・バルストロードにとって、数学の教師であるミス・チャドウィック(Miss Chadwick)は、メドウバンク校創設以来の彼女の盟友であったが、学校を率いるタイプではないと考えており、事実上、彼女の後継者候補からは外されていた。そのため、彼女は、歴史とドイツ語の教師であるエレノア・ヴァンシッタート(Eleanor Vansittart)を、後継者の最有力候補として考えていたのである。


そんな最中、夏季学期が始まる前に完成したばかりの室内競技場(Sports Pavilion)において、深夜、銃声が鳴り響き、体育の教師であるグレイス・スプリンガー(Grace Springer)が殺害される。

後日、ラマット王国のシャイスタ王女が誘拐される事件が発生すると、更に、オノリア・バルストロードの後継者の最有力候補であるエレノア・ヴァンシッタートが、後頭部を砂袋で強打され、第2の被害者となると、続いて、フランス語の教師であるアンジェール・ブランシュ(Angele Blanche)も、後頭部を砂袋で強打され、第3の被害者となった。


こうして、一見関係ないように見えたラマット王国での出来事とメドウバンク校の出来事の2つが、次第に深く絡み合って行くのであった。


なお、本作品の場合、推理小説と言うよりは、サスペンス小説に近く、探偵役を務めるエルキュール・ポワロは、物語の終盤に入ってから(全体の 2/3 辺りを過ぎたあたりから)登場して、事件を解決する役目を担うにとどまっている。


2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「鳩のなかの猫」の
愛蔵版(ハードカバー版)の見返し部分(裏表紙側) -
画面右手から画面左手へ向かって歩いている猫の足跡でデザインされている。


アガサ・クリスティー作「鳩のなかの猫」(1959年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第59話(第11シリーズ)として、2008年9月21日に放映されている。英国の俳優であるサー・デイヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。ちなみに、日本における最初の放映日は、2010年9月14日である。


英国の TV 会社 ITV 社が制作した TV ドラマ版は、アガサ・クリスティーの原作対比、いろいろと差異が見られるが、それらについては、2023年3月5日 / 3月17日 / 3月19日 / 3月23日付ブログを御参照願います。


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