2025年8月5日火曜日

ロンドン ドーヴァーストリート5-7番地(5-7 Dover Street)

ドーヴァーストリート5−7番地の建物外観
<筆者撮影>

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の長編第2作目で、かつ、トマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))とプルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence))の記念すべきシリーズ第1作目に該る「秘密機関(The Secret Adversary)」(1922年)は、英国の海運会社であるキュナードライン(Cunard Line)が所有する当時世界最大の旅客船で、米国ニューヨーク(New York)から英国リヴァプール(Liverpool)へと向かっていたルシタニア号(RMS Lusitania → 2025年7月22日 / 7月23日付ブログで紹介済)が、1915年5月7日の午後2時、アイルランド(Ireland)沖15㎞ の地点で、ドイツ帝国海軍(Imperial Germany Navy)の潜水艦 Uボート(U-boat)から2発の魚雷攻撃を受けて、沈没したところから、その物語が始まる。


第一次世界大戦(1914年ー1918年)が終わり、世界が復興へと向かう中、ロンドンの地下鉄ドーヴァーストリート駅(Dover Street Tube Station)のドーヴァーストリート(Dover Street → 2025年7月28日 / 7月29日付ブログで紹介済)出口において、昔馴染みのトミーとタペンスは、偶然出くわした。

HarperCollins Publishers 社から2008年に出ている
アガサ・クリスティー作「秘密機関」のグラフィックノベル版 -
第一次世界大戦後、タペンスこと、プルーデンス・カウリーと
トミーこと、トマス・ベレズフォードの2人は、
ロンドンの地下鉄ドーヴァーストリート駅のドーヴァーストリート出口において、数年ぶりに再会する。


二人は、お互いに戦後の就職難に悩まされていた。トミーの方は、大戦中の1916年に負傷しており、一方、タペンスの方は、大戦中ずーっと、ボランティアとして、様々な形で働いていたのである。


アガサ・クリスティー作「秘密機関」に出てくる
地下鉄ドーヴァーストリート駅のドーヴァーストリート出口は、
ドーヴァーストリート5−7番地に所在した駅ビルにあった。
<筆者撮影>


トミーとタペンスが再会した地下鉄ドーヴァーストリート駅とは、現在の地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station → 2025年7月30日付ブログで紹介済)のことで、ロンドンの中心部であるシティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)メイフェア地区(Mayfair)内に所在している。


ドーヴァーストリート5−7番地の建物の右側には、現在、パブが建っている。
画面奥で左右に延びる通りが、ピカデリー通り。
<筆者撮影>


地下鉄ドーヴァーストリート駅(現地下鉄グリーンパーク駅)は、1906年12月15日に開業。開業当初は、ピカデリーライン(Piccadilly Line)が乗り入れた。

英国の建築家であるレスリー・ウィリアム・グリーン(Lesile William Green:1875年ー1908年)が設計した駅ビルがドーヴァーストリート沿いに建設されたため、地下鉄の駅は、ドーヴァーストリート駅と命名。


アガサ・クリスティー作「秘密機関」において、
トミーとタペンスは、ドーヴァーストリート5−7番地の駅ビルにあった
地下鉄ドーヴァーストリート駅のドーヴァーストリート出口で再会した。
<筆者撮影>


1910年代後半になると、地下鉄ドーヴァーストリート駅は、利用者の増加に対応できなくなったため、近代化が図られた。

地上とプラットフォームを結ぶリフトの代わりに、エスカレーターが導入。

また、チケットホールは、ピカデリー通り(Piccadilly - ピカデリーラインベイカールーライン(Bakerloo Line)の2線が乗り入れる地下鉄ピカデリーサーカス駅(Piccadilly Circus Tube Station)とピカデリーラインが停まる地下鉄ハイドパークコーナー駅(Hyde Park Corner Tube Station → 2015年6月14日付ブログで紹介済)を東西に結ぶ通り)の地下に新たに設置され、1933年9月18日にオープン。

チケットホールへの出入口(北側)は、ピカデリー通り側とストラットンストリート(Stratton Street - ドーヴァーストリートよりも2つ西に所在する通り)側に、また、出入口(南側)は、リッツ ロンドン(The Ritz London → 2025年7月2日 / 7月25日付ブログで紹介済)の西側に隣接するグリーンパーク(Green Park)側に設けられた。

その結果、地下鉄の名前は、「ドーヴァーストリート駅」から「グリーンパーク駅」へと改名。

これに伴い、ドーヴァーストリート沿いの駅ビルは、閉鎖の憂き目に遭う。


ドーヴァーストリートの北側から
ドーヴァーストリート5−7番地の建物を見たところ。
<筆者撮影>


閉鎖の憂き目に遭ったドーヴァーストリート沿いの駅ビルは、現在の「ドーヴァーストリート5-7番地(5-7 Dver Street, London W1S 4LD)」に所在していた。

つまり、アガサ・クリスティー作「秘密機関」に出てくる地下鉄ドーヴァーストリート駅のドーヴァーストリート出口は、この駅ビルのところにあり、トミーとタペンスはここで数年ぶりに再会した訳である。

残念ながら、現在の「ドーヴァーストリート5-7番地」の建物は、ギャラリー(1階)とフラット(2階以上)に改装されており、当時の外観は留めてはいないと思われる。


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