2022年12月13日火曜日

サム・シチリアーノ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Venerable Tiger by Sam Siciliano)- その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2020年に出版された
サム・シチリアーノ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」の裏表紙


ある年の4月の火曜日の朝、彼の従兄弟で、友人でもあるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)に住む従兄弟のシャーロック・ホームズの元を訪れたところ、玄関口に立っていた美しい若い女性が、突然、気を失ってしまう現場に遭遇する。

近くに居た人に玄関のベルを鳴らしてもらい、ヘンリー・ヴェルニール医師は、その女性を建物の中へ運び込み、ホームズの居間のソファーの上に、彼女を横たえた。そして、診察のために、彼が彼女の左手首をとると、彼女の白い手首には、まだ新しい青痣があった。それを見たホームズが、「彼女は、虐待されているな。」と、眉を顰める。

気がついた女性は、イザベル・ストーン(Isabel Stone:21歳)と名乗り、「ホームズ氏のところに相談に訪れた。」と話すと、まず最初に、自分の身の上話を始めるのであった。


彼女は、ヒューバート・ストーン少佐(Major Hubert Stone)を父に、メーベル・ストーン(Mabel Stone)を母にして、インドで出生したが、5歳の時に、健康を害した父親を亡くした。

イザベルを連れて、ロンドンの両親の元へと戻った母親のメーベル・ストーンは、インドのボンベイにおいて、妻子を亡くしたため、そこから英国へと戻った夫の戦友だったグリムボルド・プラット大尉(Captain Grimbold Pratt)と再会。妻と娘を亡くしたグリムボルド・プラット大尉と夫を亡くしたメーベル・ストーンの二人は、後に再婚する。


グリムボルド・プラット大尉は、年老いた父親が亡くなると、妻のメーベルと義理の娘のイザベルを連れて、ロンドンから列車で1時間位のところにあるサリー州(Surrey)レザーヘッド(Leatherhead)の近くのストークロイヤル(Stoke Royal)の地所へと引っ越す。

グリムボルド・プラット大尉は、年齢とともに、短気が激しくなってきた。また、彼は、自分の地所において、猿、鸚鵡や孔雀等のインドに生息する動物を飼い始めた。更に、彼は、虎(名前:ルドラ(Rudra))と狼(名前:カンハ(Kanha))も飼っていて、虎と狼が周辺に放牧されている羊達を狙ったため、地元の住民達との間で、大きなトラブルの種となっていた。


イザベルは、ロンドンの近くにある寄宿学校へと送られ、その後、パリへ留学して、そこで4年間を過ごした。彼女の留学が終わりかけた頃、母親のメーベルが、鉄道事故で亡くなった。

イザベルがパリから戻ると、義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉の短気は、更に酷くなっていた。メーベルを鉄道事故で亡くした彼は、同じく、インド帰りの未亡人であるエディス(Edith)と再々婚した。イザベルにとって、エディスは良い義理の母親であったが、1年前に胃炎(Gastritis)が原因で死去した。


義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉の妻となった人には、次々と亡くなるため、何か呪いでもあるのではないかと心配するイザベルであったが、それを聞いたヘンリー・ヴェルニール医師は、「胃炎と心臓麻痺は、不審死が疑われる二大要因です。その場合、ヒ素による毒殺が考えられます。」と答える。

「何故、疑わしい義理の父親の元を出て行かないのか?」と尋ねるヘンリー・ヴェルニール医師に対して、イザベルは、「自分の自由になるお金がないのです。」と返した。


そして、イザベルは、懐から折り畳んだ書類を取り出した。彼女によると、つい最近、母親であるメーベルの遺品を整理していた際に、それらの中から偶然見つけた、とのことだった。その書類には、驚くべき内容が書かれていた。


インドにおけるセポイの反乱の際、イザベルの実の父親であるヒューバート・ストーン少佐と義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉は、倒した相手兵士の胸元に隠されていたルビー、エメラルドとダイヤモンドを見つけて、二人で山分けにしたという内容だった。ヒューバート・ストーン少佐は、宝石を二人で山分けすることについて、非常に消極的だったが、戦友のグリムボルド・プラット大尉が、強引に山分けを納得させた、とのことだった。


それらの宝石は、その後、どうなったのか?書類の内容は、更に続くのであった。


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