2022年12月2日金曜日

キャロル・ブッゲ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Haunting of Torre Abbey)- その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2018年に出版された
キャロル・ブッゲ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」の裏表紙

霧が深い10月のある晩、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)の居間の燃えさかる暖炉の火を前にしたシャーロック・ホームズが、ジョン・H・ワトスンに対して、デヴォン州(Devon)トーキー(Torquay)に所在する元修道院だったトーア寺院(Torre Abbey)に住むチャールズ・ケアリー卿(Lord Charles Cary)から受け取った手紙の内容を説明していた。


彼からの手紙には、以下のようなことが書かれていた。


チャールズ・ケアリー卿は、現在、オックスフォード(Oxford)において、医学を学んでいるのだが、緊急の電報を受け取り、10月7日(金)の夜、急いで実家のトーア寺院へと戻った。

ケアリー家は、既に2世紀にわたり、トーア寺院に住んでいるのだが、先代のケアリー卿であるヴィクター・ケアリー(Victor Cary - チャールズの父親)が最近亡くなった(トーア湾(Torre Bay)へ泳ぎに行った際、海で溺死)ため、ケアリー家には、現在、チャールズ・ケアリー卿しか、男性は居らず、彼がトーア寺院に戻ると、母親のレディー・マリオン・ケアリー(Lady Marion Cary)と妹のエリザベス・ケアリー(Elizabeth Cary)の二人は、今にも気を失いそうな状態だった。


トーア寺院に戻ったチャールズ・ケアリー卿の問い掛けに対して、母親と妹は、驚くべき話をする。

2日前の10月5日(水)の夜、妹のエリザベスが、自分の寝室で眠っていると、玄関ホールでネズミが走り回る音を聞いたように感じた。ベッドから降りた彼女は、火をつけたロウソクを持って、玄関ホールへ出ると、そこに首のない修道士が居たのである。首のない修道士の姿を見た彼女は、直ぐに気を失ってしまい、気がついた時には、その姿はどこにもなかった。

娘から話を聞いた母親のレディー・マリオン・ケアリーは、息子のチャールズ・ケアリー卿宛に、緊急の電報を打ったのであった。


軽い夕食をとったチャールズ・ケアリー卿は、塔の3階(3rd Floor)にある自室へと下がる。そこからは、かつて僧院の裏庭で、現在は、ケアリー家の中庭となっている場所を見下ろせる部屋だった。

ある音を聞いて、チャールズ・ケアリー卿が、窓のカーテンを開けて、中庭を見下ろすと、そこには、首のない修道士が立っていた。チャールズ・ケアリー卿が階段を駆け降りて、中庭まで出てみると、残念ながら、修道士の姿は既に掻き消えていた。


ホームズがワトスンに説明を行っていると、ハドスン夫人が、ちょうど受け取った電報を届けに来た。

それは、今話題となっていたチャールズ・ケアリー卿本人からの電報で、「FEAR WE ARE ALL IN DANGER (STOP) PLEASE COME AT ONCE (STOP) SIGNED BY CHARLES CARY」と書かれており、ホームズに対して、デヴォン州のトーキーへの早急な来訪を請うものだった。

至急の電報を受け取ったホームズは、ワトスンを伴い、パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)発午後6時45分の最終列車で、トーキーにあるトアベイ駅(Tor Bay Station)へと向かった。トーア寺院は、トアベイ駅から、馬車で直ぐの場所にあった。


老齢の執事グレイスン(Grayson)は、既に就寝中のため、チャールズ・ケアリー卿本人が、ホームズとワトスンの二人を出迎えた。彼によると、「妹のエリザベスが、再度、首のない修道士の姿を見た。」とのことだった。

急いでロンドンを出て来たホームズとワトスンの二人は、まだ食事を済ませていなかったため、チャールズ・ケアリー卿が食事を準備しようとしたが、料理人のサリー・グビンズ(Sally Gubbins)は、自分の台所を汚されることを嫌い、起き出して来て、ホームズとワトスンにスープを供した。


食事を済ませたワトスンは、再度、首のない修道士の姿を見たことで、精神的に不安定になっているエリザベスのために、鎮静剤を取りに、玄関ホールへと戻る。

玄関ホールへ戻る途中、今までに感じたことがない寒気が、ワトスンの体を走るのを感じた。そして、その寒気のために、ワトスンの身体が固まってしまった。玄関ホールには、自分だけではなく、自分以外の何か、それも、悪意のようなものが存在しているようだった。

ワトスンは、勇気を奮い起こして、深呼吸をすると、身体を捉えていた呪縛が突然解けた。手足を動かすことができるようになったワトスンは、玄関ホールに置いてあった自分の鞄から鎮静剤を取り出すと、皆が居る場所へと急いで戻った。


玄関ホールにおいて、ワトスンが感じたドス黒い悪意のような存在は、一体、何だったのだろうか?チャールズ・ケアリー卿の妹エリザベスが二度見た首のない修道士の幽霊が、三たび、姿を現したのか?


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