2022年12月5日月曜日

アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー(Agatha Christie - Marple - Calendar 2023)- 「予告殺人(A Murder is Announced)」

ビル・ブラッグ氏が描く
ミス・マープルシリーズの長編第4作目である
「予告殺人」の一場面

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェーン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、5番目を紹介したい。


(5)「予告殺人(A Murder is Announced)」(1950年)


「予告殺人」は、1950年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第4作目である。


チッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の地元紙朝刊「ギャゼット(Gazette)」の広告欄に、非常に変わった連絡が掲載された。「殺人をお知らせ致します。10月29日の金曜日、午後6時半にリトルパドックス館においてです。(A murder is announced and will take place on Friday, October 29th, at Little Paddocks, at 6:30 pm.)」と。

チッピングクレグホーン村の郊外にあるリトルパドックス館(Little Paddocks)の女主人であるレティシア・ブラックロック(Letitia Blacklock)は、この広告を見て困惑する。一方で、当日、好奇心旺盛な村の人々が、続々とリトルパドックス館に集まって来て、何が起きるのか、とても心待ちにしていた。


そして、時計が午後6時半を告げた時、室内の明かりが突然消えると、部屋の扉が開いて、懐中電灯を持った男が姿を現した。村の人々が何かの余興だと思った時、銃声が響く。

部屋の扉が閉まり、明かりが灯ると、そこには、突然部屋に侵入して来た男の死体が横たわっていたのである。レティシア・ブラックロックの親友であるドーラ・バンナー(Dora Bunner)によると、死んでいた男は、村のホテルに勤める従業員のルディー・シャーツ(Rudi Scherz)とのこと。


警察が呼ばれ、クラドック警部(Inspector Craddock)が、その場に居合わせた村の人々を一人ずつ調べていく。状況としては、自殺、あるいは、事故のように思われるが、クラドック警部としては、どちらにも納得がいかなかった。


クラドック警部にとって非常に幸運なことに、死亡したルディー・シャーツが勤めていた村のホテルには、探偵好きな独身の老婦人ミス・ジェーン・マープルが滞在していたのである。

ミス・マープルの手腕を高く評価している警察の上層部から、クラドック警部は、事件の真相解明のために、ミス・マープルに協力を求めるよう、指示される。クラドック警部からの依頼を受けたミス・マープルは、驚くべき事件の真相を明らかにするのであった。



カレンダーには、リトルパドックス館内の明かりが突然消えて、部屋の扉が開き、拳銃を持った謎の男(ルディー・シャーツ)が部屋に侵入して来たシーンが描かれている。画面中央に描かれた暖炉の上の時計は、午後6時半を指している。
同じく、画面中央の壁には、拳銃を持ったルディー・シャーツの影が映っているが、リトルパドックス館内の明かりは消えており、ルディー・シャーツ自身が懐中電灯を持っている(→ 懐中電灯を間に挟んで、ルディー・シャーツ自身は、壁に相対している)ので、彼の影が壁に映ることは、現実的にはありえないものの、これは、当該場面を劇的に表現する上での御愛嬌と言える。

2016年9月15日に、アガサ・クリスティー没後40周年に際して、
英国のロイヤルメール(Royal Mail)が発行した記念切手6種類のうちの
1枚である「予告殺人」 -
厳密には、記念切手のように、
ルディー・シャーツの影が、壁に映ることはありえない。

Harper Collins Publishers 社から出版されている「予告殺人」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、薔薇の花束が活けられた花瓶の形に切り取られているものが使用されている。


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