2022年12月1日木曜日

アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー(Agatha Christie - Marple - Calendar 2023)- 「スリーピングマーダー(Sleeping Murder)」

ビル・ブラッグ氏が描く
ミス・マープルシリーズの長編第12作目で、最後の作品である
「スリーピングマーダー」の一場面

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェーン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、4番目を紹介したい。


(4)「スリーピングマーダー(Sleeping Murder)」


「スリーピングマーダー」は、1976年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第12作目で、かつ、最後の作品である。


新婚のグエンダ・ハリデイー・リード(Gwenda Halliday Reed - 21歳)は、夫のジャイルズ(Giles Reed)より一足先に、ニュージーランドを出発して、英国を訪れると、イングランドの南海岸で新居探しを始めた。

まもなく、ディルマス(Dillmouth)においてヴィクトリア朝風のヒルサイド荘(Hillside)を見つけて、一目で気に入った彼女は、早速、その家を購入すると、業者を呼んで、改装工事を進めた。改装工事の間、彼女は、子供部屋だった場所で寝起きをした。

グエンダにとって、ヒルサイド荘は初めての家の筈にもかかわらず、何故か、家の隅々まで全て知り尽くしているような感じがして、次第に不安の思いに囚われていく。更に、業者が古い戸棚を開けると、そこには、彼女が思っていたような模様の壁紙が現れたのである。


その後、ロンドンに住む夫ジャイルズの従兄弟に該るレイモンド・ウェスト(Raymond West)夫妻からの招待に応じて、グエンダはロンドンへと出向く。

彼女は、ウェスト夫妻とレイモンドの伯母であるミス・マープルと一緒に、芝居「モルフィ公爵夫人(The Duchess of Malfi)」の観劇に出かけた際、劇中で「女の顔を覆え。目が眩む。彼女は、若くして亡くなった。(Cover her face; mine eyes dzzle; she died young)」という台詞を聞いた途端、グエンダは、悲鳴を上げると、劇場から逃げ出してしまう。

自分が狂ったのではないかと思い悩むグエンダは、ミス・マープルに対して、これまでに起きたことを全て、正直に打ち明けた。何故ならば、彼女は、芝居「モルフィ公爵夫人」の台詞を聞いた際、ヒルサイド荘において、ある男が、ヘレン(Helen)という名前の金髪の女性の首を締めながら、同じ言葉を漏らしていたことを思い出したのである。


グエンダは、元々、父親が駐在していたインドで生まれたが、母親が亡くなったため、幼い頃から、ニュージーランドに居る母方の伯母に預けられ、育てられた。父親は、母親が無くなった数年後に、他界していた。

グエンダからの話を聞いたミス・マープルは、グエンダが、父親と彼の後妻と一緒に、英国に住んでいたのではないかと示唆して、それが事実であることを突き止める。グエンダの母親の死後、インドから英国へと戻る途中、父親はヘレン・ハリディー(Helen Halliday - 旧姓:ケネディー(Kennedy))と出会い、船上でのロマンスを経て、英国到着後に結婚し、二人は、ヘレンが生まれ育ったディルマスに家(ヒルサイド荘)を借りて住んでいた。グエンダは、18年前のまだ幼い頃、ヒルサイド荘を訪れたことがあったのである。


グエンダは、自分の頭に浮かぶ恐怖のイメージと劇の台詞について、考え込む。果たして、ヘレンを絞殺する男のイメージは、本当の記憶なのだろうか?彼女の夫であるジャイルズが、ニュージーランドから英国に到着したので、グエンダは、彼と一緒に、この謎を更に調べていこうと決心したのであった。



カレンダーには、画面奥から、ヒルサイド荘、グエンダ・ハリディー・リード、そして、テラスの先にある庭に埋められたヘレン・ハリディーの死体が、斜めに結ばれるように描かれている。

Harper Collins Publishers 社から出版されている「スリーピングマーダー」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、毒薬が入った瓶の形に切り取られているものが使用されている。


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