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第47話「エッジウェア卿の死」が収録された エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 5 の裏表紙 |
英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第47話(第7シリーズ)として、2000年1月19日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「エッジウェア卿の死(Lord Edgware Dies)」(1933年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。
(1)
<原作>
エルキュール・ポワロとアルゼンチンから一時帰国したアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)の2人が、米国からロンドン/パリ公演ツアーに来ている女芸人カーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)の舞台を観たところから、その物語が始まる。
背景や衣装等を必要としない彼女の「人物模写演技」は完璧で、一瞬で顔つきや声音等を変えて、その人自身になりきるのであった。第4代エッジウェア男爵ジョージ・アルフレッド・セント・ヴィンセント・マーシュ(George Alfred St. Vincent Marsh, 4th Baron Edgware)/ エッジウェア卿(Lord Edgware)と結婚している米国出身の舞台女優ジェーン・ウィルキンスン(Jane Wilkinson)の物真似に関しても見事の一言で、ポワロは深く感銘を受ける。
更に、驚くことには、ポワロとヘイスティングス大尉の真後ろの席には、ジェーン・ウィルキンスン本人と映画俳優のブライアン・マーティン(Bryan Martin)の2人が、カーロッタ・アダムズによるジェーン・ウィルキンスンの人物模写演技を楽し気に観劇していたのである。
<英国 TV 版>
英国 TV 版の場合、原作の開始部分に至るまでに、かなりの話が追加されている。
(A)
英国 TV 版の場合、エッジウェア卿が、ジェラルディン・マーシュ(Geraldine Marsh - エッジウェア卿の先妻の娘)と一緒に、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)による四大悲劇の一つである「マクベス(Macbeth)」(1606年)を観劇しているところから、物語が始まる。
舞台上、マクベス夫人(Lady Macbeth)を演じるジェーン・ウィルキンスンが、マクベス(Macbeth)を演じる俳優に抱かれる場面があり、エッジウェア卿がこれに激怒。
ジェーン・ウィルキンスンは、激怒するエッジウェア卿に対して、離婚を求めるが、エッジウェア卿は、彼女の求めを拒否。
(B)
エルキュール・ポワロは、引退先からホワイトヘイヴンマンションズ(Whitehaven Mansions)へと戻り、私立探偵業を再開。ミス・フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon)は、業者に対して、事件ファイルが入った箱の整理を指示。
チャーターハウス スクエア6-9番地 フローリンコート (Florin Court, 6-9 Charterhouse Square → 2014年6月29日付ブログで紹介済)が、 ホワイトヘイヴンマンションズとして、撮影に使用されている。 |
その最中、ポワロは、カーロッタ・アダムズが出演する舞台(場所:Gaiety Theatre / 時刻:午後8時)の招待状を受領。
更に、ポワロは、アーサー・ヘイスティングス大尉からの電報も受け取る。その電報によると、彼が搭乗したブエノスアイレス(Buenos Aires)からの飛行機は、パリ経由で、午前9時半にロンドン到着の予定、とのことだった。
(C)
ポワロは、ミス・レモンを伴い、ヘイスティングス大尉を出迎えるために、タクシーで飛行場へと向かう。
ポワロとミス・レモンに久し振りに再会したヘイスティングス大尉は、2人に対して、
*アルゼンチンにおいて、Pampas de Fernandez Consolidated Railway に全額を投資したが、鉄道の施設がうまく行かず、投資が失敗し、全額を失ったこと
*牧場を売却するため、彼の妻は現地にまだ残っていること
*ヘイスティングス大尉夫妻は、アルゼンチンから英国へ戻る計画であること
*ヘイスティングス大尉は、住居を探すために、先に帰国した次第で、住居を探す間、ピカデリーパレスホテル(Piccadilly Palace Hotel)に宿泊する予定であること
を告げる。
ヘイスティングス大尉の説明を受け、ミス・レモンは、ポワロに対して、気落ちするヘイスティングス大尉を、カーロッタ・アダムズの舞台へ連れて行くように提案する。
(2)
<原作>
エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉が観劇する舞台上、女芸人カーロッタ・アダムズは、ジェーン・ウィルキンスンの人物模写演技を行っているが、ポワロの人物模写演技は行っていない。
<英国 TV 版>
女芸人カーロッタ・アダムズは、舞台上、ポワロの人物模写演技を行い、それを見たポワロは、笑うこともできず、気不味い顔をする。
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サヴォイホテルの正面玄関(その1) |
(3)
<原作>
女芸人カーロッタ・アダムズによる舞台が終わった後、エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉は、サヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)へと移動して、夕食をとる。
その夕食の途中、ブライアン・マーティンと一緒に居たジェーン・ウィルキンスンが、ポワロの席を訪れて、内密の会話を求める。
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サヴォイホテルの正面玄関(その2) |
<英国 TV 版>
女芸人カーロッタ・アダムズによる舞台が終わった後、劇場において、ジェーン・ウィルキンスンが、ポワロを呼び止めて、内密の会話を求める。
更に、カーロッタ・アダムズも、ポワロの元を訪れて、食事へ誘うのであった。
