2023年6月26日月曜日

アガサ・クリスティー作「ハロウィーンパーティー」<英国 TV ドラマ版>(Hallowe’en Party by Agatha Christie )- その3

第63話「ハロウィーンパーティー」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 8 個別ケースの表紙 -
下段の右側から2番目の人物が、「ハロウィーンパーティー」に登場する
Zoe Wanamaker が演じる探偵作家のアリアドニ・オリヴァー。
また、下段の一番右側の人物が、同じく、「ハロウィーンパーティー」に登場する
Timothy West が演じるコットレル牧師(Reverend Cottrell -
英国 TV 版用に設けられたキャラクターで、
アガサ・クリスティーの原作には登場しない。
厳密に言うと、原作上、ハロウィーンパーティーの準備を行った人物の一人として、
「チャールズ・コットレル牧師(Reverend Charles Cotterell)」と言う名前だけは出てくる。) 


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Poirot」の第63話(第12シリーズ)「ハロウィーンパーティー」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(9)

<原作>

造園師であるマイケル・ガーフィールド(Michael Garfield)は、元の採掘場(quarry)を庭園へと造園している。

<TV ドラマ版>

マイケル・ガーフィールドは、亡くなったルウェリン=スマイス夫人(Mrs. Llewellyn-Smythe)からロウィーナ・ドレイク(Rowena Drake - ルウェリン=スマイス夫人の姪)が相続した土地の一部を庭園へと造園している。


(10)

<原作>

この庭園において、ポワロは、初めて、マイケル・ガーフィールドに会う。

<TV ドラマ版>

ジュディス・バトラー(Judith Butler - アリアドニ・オリヴァーの友人)が、ミランダ・バトラー(Miranda Butler - ジュディス・バトラーの娘)と一緒に、ポワロをこの庭園へと案内する。その途中、ポワロは、マイケル・ガーフィールドに会うが、物語上、ポワロがマイケル・ガーフィールドに会うのは、2回目となる。


(11)

<原作>

エルキュール・ポワロは、ウッドリーコモン(Woodleigh Common)において、近年に発生した事件の情報を収集するが、それらは、以下の通り。


*ルウェリン=スマイス夫人:彼女が突然亡くなり、彼女の遺言書(codicil)により、彼女の屋敷で働いていたオルガ・セミノフ(Olga Seminoff - ヘルツェゴヴィナ(Herzegovina)出身 / 外国語の勉強を目的として、家事手伝いをしながら、外国の家庭に住まわせてもらう制度を利用していた女性(au pair girl))が彼女の遺産相続人として指定される。ところが、後に、その遺言書が偽造と判明し、オルガ・セミノフも失踪。

*レスリー・フェリアー(Leslie Ferrier):法律事務所の事務員として働いていたが、何者かに背中を刺されて死亡(当時28歳)。

*シャーロット・ベンフィールド(Charlotte Benfield):店員として働いていたが、頭部に複数の傷を負って、死亡しているのが発見される(当時16歳)。

*ジェネット・ホワイト(Janet White):エルムズ学校(Elms school)の教師として働いていたが、何者かに首を絞められて死亡。


<TV ドラマ版>

エルキュール・ポワロは、ウッドリーコモンにおいて、近年に発生した事件の情報を収集するが、それらは、


*ルウェリン=スマイス夫人

*レスリー・フェリアー

*ベアトリス・ホワイト(Beatrice White)


の3つだけで、「シャーロット・ベンフィールド」の事件は割愛されている。


なお、レスリー・フェリアーは、レイノルズ夫人(Mrs. Reynolds - 殺害されたジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)とレオポルド・レイノルズ(Leopold Reynolds)の母親)の家に下宿しており、女誑しで、フランセス・ドレイク(Frances Drake - ロウィーナ・ドレイクの娘)と付き合っていたと言う設定が追加されている。

また、原作では、ジェネット・ホワイトとなっていた名前が、ベアトリス・ホワイトへと変更されている。更に、彼女は、エルムズ学校において、ジョイス・レイノルズの先生で、ウッドリーコモンにある湖で溺死しているのが発見されると言う設定に変えられている。


(12)

<原作>

ポワロが上記4つの事件の情報を得たのは、主に、バート・スペンス(Bart Spence - 元警視(Superintendent))とエルスペス・マッケイ(Elspeth McKay - スペンス元警視の妹)の2人からである。

<TV ドラマ版>

ポワロが上記3つの事件の情報を得たのは、バート・スペンスとエルスペス・マッケイが登場しない関係上、グッドボディー夫人(Mrs. Goodbody - ウッドリーコモンにおいて、「魔女(witch)」と呼ばれている女性)からである。原作に比べると、TV ドラマ版の場合、グッドボディー夫人の登場場面が多い。



(13)

<原作>

亡くなったルウェリン=スマイス夫人が残した本当の遺言書は、物語の終盤まで発見されない。

<TV ドラマ版>

物語の中盤、ポワロは、ティモシー・ラグラン警部(Inspector Timothy Raglan)の了解を得て、レスリー・フェリアーの遺品を調べると、その中に、フランセス・ドレイクの写真立てを見つける。そして、ポワロは、その写真立ての裏側に、亡くなったルウェリン=スマイス夫人が残した本当の遺言書が隠されているのを発見する。


(14)

<原作>

レオポルド・レイノルズが、小川において、溺死体で発見されるが、誰が発見したのかについては、言及されていない。また、ポワロは、レオポルド・レイノルズが溺死体で発見された現場を訪れていない。

<TV ドラマ版>

朝、湖へ散歩に来たエリザベス・ウィッテカー(Elizabeth Whittaker - エルムズ学校の教師)が、レオポルド・レイノルズの溺死体を発見する。また、その知らせを聞いたポワロは、現場を訪れている。


(15)

<原作>

エルムズ学校の教師として働いていたジェネット・ホワイトが、何者かに絞殺された事件の真相については、最終的に、明らかにされないまま、終わる。

<TV ドラマ版>

レオポルド・レイノルズの溺死体を発見された湖を訪れたポワロに対して、エリザベス・ウィッテカーが、同僚だったベアトリス・ホワイトの死の真相を明らかにする。エリザベス・ウィッテカーとベアトリス・ホワイトは同性愛者で、お互いに愛し合っていたが、ベアトリス・ホワイトは、このことが他の第三者に知られることを非常に気にかけており、次第にそれが苦になって、最終的には、湖に身を投げて、自殺したのである。ベアトリス・ホワイトは、エリザベス・ウィッテカー宛に自殺の経緯を綴った手紙を残していたが、彼女のことを考えて、エリザベス・ウィッテカーは、彼女の手紙を公にすることを控えていた、とのこと。


(16)

<原作>

レオポルド・レイノルズの溺死体を発見された後、ロウィーナ・ドレイクは、ポワロに対して、ジョイス・レイノルズが殺された図書室の前で花瓶を落とした理由について、「図書室から出て来たレオポルド・レイノルズを見かけたからだ。」と告白する。

<TV ドラマ版>

ポアロは、ロウィーナ・ドレイクに対して、ジョイス・レイノルズが殺された図書室の前で花瓶を落とした理由を尋ねるが、彼女は、言葉を濁して、ハッキリした回答をしなかった。そして、翌朝、レオポルド・レイノルズの溺死体を発見された後、ロウィーナ・ドレイクは、ジュディス・バトラーの家に滞在してしているポワロの元を訪れて、「事件当夜、図書室から出て来たのは、レオポルド・レイノルズだ。」と告白し、原作とは異なり、ポワロの質問とロウィーナ・ドレイクの回答には、時間的な差が存在している。


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