2023年6月15日木曜日

アガサ・クリスティー作「ハロウィーンパーティー」<英国 TV ドラマ版>(Hallowe’en Party by Agatha Christie )- その2

第63話「ハロウィーンパーティー」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 8 ケースの裏表紙
-
下段の一番右側の人物が、
「ハロウィーンパーティー」に登場する
富豪の未亡人であるルウェリン=スマイス夫人(Mrs. Llewellyn-Smythe)の
顧問弁護士であるジェレミー・フラートン(Jeremy Fullerton - 演:Eric Sykes)


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Poirot」の第63話(第12シリーズ)「ハロウィーンパーティー」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(1)

<原作>

ロンドンから30ー40マイル程離れた町ウッドリーコモン(Woodleigh Common)の中心的な存在であるロウィーナ・ドレイク夫人(Mrs. Rowena Drake)が、学校の生徒達のために、彼女の自宅「リンゴの木荘(Apple Trees House)」において、ハロウィーンパーティーを主催することになり、友人のジュディス・バトラー(Judith Butler)の家に滞在している探偵作家のアリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)も参加する運びとなった。

確か、原作の場合、ジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)とレオポルド・レイノルズ(Leopold Reynolds)の母親であるレイノルズ夫人(Mrs. Reynolds)は、ハロウィーンパーティーに参加していなかったのではないかと思う。

ミランダ・バトラー( Miranda Butler)の母親であるジュディス・バトラーの場合、娘のミランダ・バトラーは熱があるため、ミランダ・バトラー自身はハロウィーンパーティーに参加していなかったが、ジュディス・バトラーは、ハロウィーンパーティーに参加していたと、アリアドニ・オリヴァー夫人は、エルキュール・ポワロに対して、説明している。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、レイノルズ夫人とジュディス・バトラーも、ハロウィーンパーティーに参加している。


(2)

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、アガサ・クリスティーの原作には登場しない


*フランセス・ドレイク(Frances Drake - ロウィーナ・ドレイクの娘)

*エドマンド・ドレイク(Edmund Drake - ロウィーナ・ドレイクの息子)

*コットレル牧師(Reverend Cottrell - ウッドリーコモンの牧師)


も、ハロウィーンパーティーに参加している。

<原作>

当然のことながら、上記の3人は、原作には登場していない。

密に言うと、原作上、ハロウィーンパーティーの準備を行った人物の一人として、「チャールズ・コットレル牧師(Reverend Charles Cotterell)」と言う名前だけは出てくる。


(3)

<原作>

原作の場合、図書室の方を見ていたロウィーナ・ドレイクが、手に抱えていた花瓶を落として割ってしまう現場を目撃する人物は、エルムズ学校(The Elms school)の教師であるエリザベス・ウィッテカー(Elizabeth Whittaker)である。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、図書室の方を見ていたロウィーナ・ドレイクが、手に抱えていた花瓶を落として割ってしまう現場を目撃する人物は、オリヴァー夫人に変更されている。


(4)

<原作>

原作の場合、図書室の方を見ていたロウィーナ・ドレイクが、手に抱えていた花瓶を落として割ってしまう場所は、階段の上だった。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、図書室の方を見ていたロウィーナ・ドレイクが、手に抱えていた花瓶を落として割ってしまう場所は、図書室の前に変更されている。



(5)

<原作>

原作の場合、オリヴァー夫人が、ロンドンのエルキュール・ポワロ宅に電話をかけてきた後、慌ててやって来て、ポワロに対して、ジョイス・レイノルズが何者かによって殺害されたことを説明する。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、オリヴァー夫人は、ロンドンのエルキュール・ポワロ宅を訪問することはなく、ポワロに対して、ジョイス・レイノルズが何者かによって殺害されたことを電話で説明するだけである。


(6)

<原作>

原作の場合、オリヴァー夫人からの連絡を受けたエルキュール・ポワロは、直ぐにウッドリーコモンへと向かうが、その道中の列車内で、誰かに会ったという記述は、特に見られない。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、オリヴァー夫人からの連絡を受けたポワロは、直ぐにウッドリーコモンへと向かうが、その道中、ギリシアへの旅行から戻って来た造園師であるマイケル・ガーフィールド(Michael Garfield)と同じ車輌となり、会話を交わしている。


(7)

<原作>

原作の場合、ウッドリーコモンに着いたポワロは、まず最初に、引退したバート・スペンス元警視(ex Superintendnt Bart Spence)の家を訪れる。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、登場人物として、スペンス元警視は割愛されているため、ウッドリーコモンに着いたポワロは、オリヴァー夫人が滞在しているジュディス・バトラーの家を訪れる。彼女の家へ向かう途中、ポワロは、彼女の娘であるミランダ・バトラーと会う。


(8)

<原作>

原作の場合、図書室において、ジョイス・レイノルズが、林檎が浮かぶブリキのバケツに頭を押し込まれて、溺死している現場を目撃したオリヴァー夫人は、一時期、林檎が食べられなくなるものの、ポワロに協力して、ジョイス・レイノルズを殺害した犯人を突き止めようとする。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、図書室において、ジョイス・レイノルズが、林檎が浮かぶブリキのバケツに頭を押し込まれて、溺死している現場を目撃したオリヴァー夫人は、一時期、林檎が食べられなくなるだけではなく、寝込んでしまい、物語の終盤まで、ベッドから離れることができなかった。従って、原作とは異なり、オリヴァー夫人が、ポワロの捜査に協力する展開にはなっていない。

それが、脚本家による意図的な変更なのか、それとも、オリヴァー夫人を演じた Zoe Wanamaker のスケジュール上の都合なのかは、不明である。


0 件のコメント:

コメントを投稿