2023年6月17日土曜日

サイモン・ゲリエ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 大いなる戦争」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Great War by Simon Guerrier) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2021年に出版された
サイモン・ゲリエ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 大いなる戦争」の表紙

本作品「大いなる戦争(The Great War)」は、英国の SF 作家であるサイモン・ゲリエス(Simon Guerrier:1976年ー)によって、2021年に発表された。

彼は、英国の BBC で放送されている SF ドラマ「ドクターフー(Doctor Who)」の小説やオーディオドラマ等も執筆している。


1921年6月24日より「JHW 4112 - 17」と言う番号で保管されていた事件記録は、「公開不可(NEVER for publication)」の扱いであったが、100年が経過して、最早「非公開」であり続ける必要性がなくなったため、今回、一般に公開されることになった。

(「JHW」とは、ジョン・H・ワトスンのことを指しているものと思われる。)


1917年12月第1週、第一次世界大戦(Word War I:1914年-1918年)の真っ只中、東部戦線(East Front)において、英国軍を含む連合国側と同盟国側が相対していた。

オーガスタ・ワトスン(Miss Augusta Watson)は、フランスのレベック(Rebecq - 現在のベルギーのワロン地域にある場所)から2 - 3マイル離れた野戦病院において、救急看護奉仕隊(VAD - Voluntary Aid Detachment)として、負傷兵の手当をしていた。

その時、オーガスタ・ワトスンは、同僚の看護師に呼ばれて、看護師長(Matron)のシスター グロリア(Sister Gloria)の部屋へと向かった。


シスター グロリアの部屋に入ったオーガスタ・ワトスンは、そこに60歳代後半の男性を認めた。

深夜の来客は、シャーロック・ホームズだった。


ホームズがやって来たのは、11月1日(木)の夜、この野戦病院において亡くなったフィリップ・オグル=トンプソン大尉(Captain Philip Ogle-Thompson)の件であった。

当夜、オーガスタ・ワトスンも夜間勤務に就いていた筈であるが、ホームズによると、フィリップ・オグル=トンプソン大尉の記録が、病院内には全く存在していない、とのことだった。


ホームズは、オーガスタ・ワトスンに対して、2通の手紙を見せる。


1つ目の手紙は、


・日付: 11月5日(月)

・宛先: フィリップ・オグル=トンプソン大尉の母親で、ロンドンのベルグラヴィアスクエア(Belgravia Square)に住むジュリア・レイモンド・フィリップ・オグル=トンプソン(Julia Raymond Ogle-Thompson)

・差出人: R

・内容: 11月1日(木)の午前4時過ぎ、フィリップ・オグル=トンプソン大尉の部隊は、ドイツ軍の攻撃を受けて、彼は負傷し、Rue St. Julienne 病院において死亡。ロンドンに戻った際、自宅を訪問の上、詳細について説明したい。 


と言う内容だった。


一方、2つ目の手紙には、


・日付: なし

・宛先: フィリップ・オグル=トンプソン大尉の母親であるジュリア・レイモンド・フィリップ・オグル=トンプソン

・差出人: 正直な友人(A honest friend)

・内容: どんなことを知らされても、それを信じてはいけない。(Whatever you is informed don’t believe it.)フィリップ・オグル=トンプソン大尉は、非常に立派な人間で、兵士です。(In truth, your son Can Thompson was a good man and soldier.)


と書かれていた。


1つ目の手紙に書かれた差出人「R」のイニシャルを見たオーガスタ・ワトスンは、ホームズに対して、「差出人は、レイナー・フィッツジェラルド将軍(General Rayner Fitzgerald)ではないか?」と知らせる。

ホームズがオーガスタ・ワトスンに「将軍をよく知っているのか?」と尋ねると、彼女は、「将軍には、一度も会ったことがない。自分の知る限り、将軍は、病院へは一度も来たことがない。(We have never met. To the best of my knowledge, the general has never been to the hospital.)」と答えた。


その最中、レイナー・フィッツジェラルド将軍が、二人の前に姿を現した。

オーガスタ・ワトスンによると、「将軍は、病院へは一度も来たことがない。」とのことだったが、将軍は、ホームズに対して、「少なくとも、週に1回は病院に来ている。」と告げる。


病院内で亡くなったにもかかわらず、フィリップ・オグル=トンプソン大尉の記録が全く残されていないと言うか、その記録が失われている。

また、レイナー・フィッツジェラルド将軍の言動も、何か怪しい。


第一次世界大戦の最前線である東部戦線において、一体、何が起きているのだろうか?


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