2023年2月25日土曜日

綾辻行人作「十角館の殺人」<小説版>(The Decagon House Murders by Yukito Ayatsuji )- その2

英国のプーシキン出版から2020年に出ている
綾辻行人作「十角館の殺人」の英訳版に掲載されている
「角島」の地図(青屋敷の焼失跡と十角館等を含む)


1986年3月26日(水)、大分県O市K大学の推理小説研究会(Mystery Club)の一行が、S半島のJ岬の沖合いに浮かぶ角島(Tsunojima)と呼ばれる無人の孤島を訪れた。一行のメンバーは、以下の通り。


(1)ポウ(Poe)- 医学部4回生

(2)カー(Carr)- 法学部3回生

(3)エラリイ(Ellery)- 法学部3回生で、会誌「死人島(Dead Island)」の現編集長

(4)ヴァン(Van)- 理学部3回生

(5)アガサ(Agatha)- 薬学部3回生

(6)オルツィ(Orczy)- 文学部2回生

(7)ルルウ(Leroux)- 文学部2回生で、会誌「死人島」の次期編集長


彼らは、欧米の有名な推理作家達に因んだニックネームで呼ばれている。


角島には、半年前の1985年9月20日に、凄惨な四重殺人事件が発生の上、全焼した「青屋敷(Blue Mansion)」の跡と十角形という奇妙なデザインの「十角館(Decagon House)」が残るだけだった。

事件後、不動産業者である(ヴァンの)伯父が角島を購入したことを聞いたヴァンが、自分が所属する推理小説研究会に話を伝え、会誌「死人島」の次期編集長であるルルウが、角島に唯一残っている「十角館」での1週間の合宿を提案したのである。


角島を訪れた推理小説研究会の一行の頭上には、以下のような暗雲が垂れこめていた。


(1)

1985年1月、推理小説研究会によって開催された新年会の三次会において、当時、文学部1回生だった中村千織(Chiori Nakamura)が、急性アルコール中毒が要因となって引き起こされた心臓麻痺により急死したのである。


(2)

合宿の約半年前に該る1985年9月20日の早朝、亡くなった中村千織の両親である中村青司 / 中村和枝夫妻が住む角島の「青屋敷」が全焼するという事件が発生。

「青屋敷」の焼け跡から、建築家で、「青屋敷」/「十角館」の設計者でもある中村青司(Seiji Nakamura:46歳)、彼の妻である中村和枝(Kazue Nakamura)、そして、住み込みの使用人である北村夫妻と思われる計4名の遺体が発見されたのである。

検死解剖の結果、中村青司は焼死、中村和枝は、ロープのようなもので絞殺されていたことが判明。また、使用人の北村夫妻は、2人とも、椅子にロープで縛りつけられた後、斧で頭を叩き割られていたことが判った。なお、死亡時刻には、大きな開きがあり、中村和枝、使用人の北村夫妻、そして、中村青司の順だった。更に言うと、4人全員の体内から、多量の睡眠薬が検出された。

驚くべきことに、何故か、中村和枝の左手首が、彼女の遺体から切断されており、警察による現場検証にもかかわらず、「青屋敷」の焼失現場からは発見されなかった。


「青屋敷」が全焼した当時、庭師である吉川誠一(Seiichi Yoshikawa:46歳)が、角島を訪れていた筈であった。彼は、月に1回、角島に数日間滞在して、庭の手入れをしており、今回も、庭の手入れのために、角島にやって来ていたのである。

ところが、吉川誠一の遺体は、「青屋敷」の焼失現場からは見つからず、行方不明とされた。

そのため、当時の警察は、吉川誠一が、中村和枝に横恋慕した結果、中村青司、中村和枝、そして、使用人の北村夫妻の4人を殺害した後、角島から逃亡したのではないかと結論付けていた。


そして、角島を訪れた推理小説研究会の一行に対して、惨劇の幕があがることになる。


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