2022年9月15日木曜日

ポール・W・ナッシュ作「シャーロック・ホームズの遺稿」(The Remains of Sherlock Holmes by Paul W. Nash)- その4

英国のロイヤルメール(Royal Mail)が発行した
サウスダウンズ国定公園(South Downs National Park)の切手 -
画面奥に見えるのは、白亜系チョークから成る海食崖である
セブンシスターズ(Seven Sisters → 2017年4月9日付ブログで紹介済)

(7)シャーロック・ホームズの遺稿(The Remains of Sherlock Holmes)


1929年の春、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの二人が引退したサウスダウンズ(South Downs)において、事件は発生した。


そして、「ホームズが亡くなった。(It was in the spring of the year 1929 that my friend Sherlock Holmes died.)」という衝撃的な一文から、物語が始まる。ただし、ホームズの死体は見つかっておらず、彼の死は、未だに公式記録となっていない。(That, at least, is my belief, though his death has never been certified and his mortal remains have not been found.)


1925年6月に夫人が亡くなった後から、ワトスンは、サウスダウンズにあるホームズのコテージに同居していた。


ある日、サムスン・カーデュー(Samson Cardew)という男性が、事件の相談のために、ホームズのコテージを訪れる。

父親の死後、彼はヘイスティングス(Hastings - イーストサセックス州(East Sussex)にある街)へと移り、母親のアグネス(Agnes)と一緒に、そこでホテルを経営して成功を納めていた。


そんな時、ホテルに滞在していたベートマン(Bateman)と名乗る男が、サムスンのオフィスに突然入って来て、彼に対して、「チャーリー・ヴィンセント(Charlie Vincent)について、教えろ!」と迫った。

訳が分からず、断るサムスンに向かって、ベートマンは、ナイフをちらつかせて、暴行を加えたのである。


「チャーリー・ヴィンセント」とは、40年前、サムスンの父親が死に際に彼に残した謎の歌であった。


果たして、謎の歌に隠されたものは、何か?ベートマンと名乗る男は、一体、何を狙っているのか?


地下鉄ベーカーストリート駅(Baker Street Tube Station)内の
ジュビリーライン(Jubilee Line)のホーム壁に設置されているシャーロック・ホームズシリーズの名場面 -
これは、「赤毛組合」で、ジェイベス・ウィルスンが営む質屋の裏側に建つ銀行の地下室において、
画面左側から、銀行の頭取であるメリーウェザー氏(Mr. Merryweather)、
スコットランドヤードのピーター・ジョーンズ(Peter Jones)、
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの4人が、
暗闇の中、黙って待ち伏せを続けている場面が描かれている。


サムスンの依頼に基づいて、ホームズが解き明かした事件の真相の裏には、彼が40年近く前の1890年に解決した「赤毛組合(The Red-Headed League)」事件が深く関わっていたのである。


なお、英語の「Remains」には、「遺稿」の他に、「遺体」や「遺骨」という意味もあるので、本短編のタイトルには、二重の意味がかけられていると言える。


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