2022年9月12日月曜日

ケント州(Kent) スコットニー城(Scotney Castle)- その2

当時の所有者であったクリストファー・ハッシーと妻のエリザベス・ハッシーにより、
「ピクチャレスク」方式に基づいて創り上げられた庭園の中に埋もれて建つ「Scotney Old Castle」 -

英国の Seven Dials, Cassel & Co が2000年に出版した
ポール・ジョンスン(Paul Johnson)著
「Castles of England, Scotland & Wales」から抜粋。

1778年に、エドワード・ハッシー(Edward Hussey)が、それまで約350年間にわたり、スコットニー城(Scotney Castle)を含む地所を所有してきたダレル家(The Darrell family)から買い取った後、彼の孫であるエドワード・ハッシー(Edward Hussey - 祖父と同名)が、英国の建築家であるアンソニー・サルビン(Anthony Salvin:1799年ー1881年)に依頼して、丘の上に「Scotney New Castle」の建設を始めた。1843年に「Scotney New Castle」が竣工すると、湖内にある島に建つ「Scotney Old Castle」の方は、使用されなくなり、廃墟となっていく。


湖内にある島に建つ「Scotney Old Castle」(その1)

そして、100年程過ぎた20世紀半ば頃、当時の所有者クリストファー・ハッシー(Christopher Hussey:1899年ー1970年)と彼の妻エリザベス・ハッシー(Elizabeth Hussey)が、古城「Scotney New Castle」とその周囲の庭園の設計に取り掛かる。

英国では、18世紀から19世紀にかけて、「風景式庭園(Landscape Garden)」方式が人気を博していたが、あまりに整然としたデザインを採用する「風景式庭園」方式に対して、絵画のように完璧な景色を創り上げる「ピクチャレスク(Picturesque)」方式という新しいコンセプトが提案された。

クリストファー・ハッシーとエリザベス・ハッシーの2人は、新しいコンセプトである「ピクチャレスク」方式に基づき、古城「Scotney New Castle」について、必要な部分だけを残し、取り壊しを行った。また、彼らは、古城の周囲に、様々な植物(シャクナゲ、ツツジ、水仙やブルーベル等)を植えて、1年中、彩りが絶えない庭園を作り上げていったのである。


湖内にある島に建つ「Scotney Old Castle」(その2)

1970年にクリストファー・ハッシーが亡くなった際、「Scotney Old Castle」や「Scotney New Castle」を含む地所は、ナショナルトラスト(National Trust)に遺贈された。

「Scotney New Castle」内の部屋は、ナショナルトラストによって、一般に貸し出された。「Scotney New Castle」内の部屋を借りた人の中には、英国の政治家で、保守党初の女性党首(1975年ー1990年)かつ英国初の女性首相(1979年-1990年)であるサーチャー女男爵マーガレット・ヒルダ・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher, Baroness Thatcher:1925年ー2013年)も含まれている。マーガレット・サッチャーは、1970年代と1980年代の間、週末をここで過ごして、鋭気を養ったと言われている。


クリストファー・ハッシーの妻エリザベス・ハッシーが2006年に亡くなった後、ナショナルトラストは、2007年6月6日に「Scotney Old Castle」や「Scotney New Castle」を含む地所を一般公開して、現在に至っている。


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