2022年9月23日金曜日

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 死者の書」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Scroll of the Dead by David Stuart Davies) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2009年に出版された
デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 死者の書」の表紙(一部)

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)


本作品は、「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」、3年間に及ぶ海外放浪、そして、「空き家の冒険(The Empty House → 2022年5月27日 / 7月1日 / 7月10日 / 7月17日 / 7月24日 / 7月29日 / 8月3日 / 8月6日付ブログで紹介済)」を経て、シャーロック・ホームズがロンドンに帰還した1894年4月から1年が経過した1895年5月初旬から、物語は始まる。

兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)からの依頼を受けて、ホームズは、霊媒師を名乗るユーリア・ホークショー(Uriah Hawkshaw)のイカサマを見破り、英国政府の重要機密に通じているロバート・ハイザ卿(Sir Robert Hythe)が騙されるのを防いだ。

それから1週間後の深夜、同じ降霊会に参加していたセバスチャン・メルモス(Sebastian Melmoth)が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)のホームズの元を訪れる。彼は、ホームズに対して、「自分は、死後の世界(The life beyond living) / 不死(immortality)を研究している。自分は、死が最終だとは思っていない。(I don’t believe death is the end.)」という謎の言葉を残すと、ベーカーストリート221Bを後にする。

そして、話は、1896年春へと移り、大英博物館(British Museum → 2014年5月26日付ブログで紹介済)に二人組の盗賊が侵入して、「死者の書(The Scroll of the Dead)」と呼ばれるパピルス(papyrus)が盗まれた事件について、スコットランドヤードのアモス・ハードキャッスル警部(Inspector Amos Hardcastle)が相談に訪れたことを契機として、「死後の世界 / 不死」の秘密を探ろうとするセバスチャン・メルモスとホームズの戦いの幕が、本格的に切って落とされる。


(2)物語の展開について ☆☆☆☆(4.0)


物語は、ケンジントン地区(Kensington)における死者と交信する降霊会から始まり、大英博物館に保管されていたパピルス「死者の書」の盗難事件、ノーフォーク州(Norfolk)にある友人の地所におけるセバスチャン・メルモスの事故死事件(銃の暴発)、そして、問題のパピルスをエジプトで発掘した考古学者であるジョージ・フェーヴァーショー卿(Sir George Favershaw)の殺害事件とアリステア・アンドリューズ卿(Sir Alistair Andrews)の行方不明事件と、次々と展開していき、なかなかスピーディーであり、面白い。そして、「死後の世界 / 不死」の秘密を探ろうとするセバスチャン・メルモスとホームズの二人は、それが隠されているジョージ・フェーヴァーショー卿の避暑地である湖水地方(Lake District)へと、最後に辿り着く。

本作品の場合、他のパスティーシュと比べると、約170ページと、どちらかと言うと、中編に近く、物語の展開も早いので、非常に読みやすい。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆☆(4.0)


本作品の場合、推理要素はあるものの、内容的には、「死後の世界 / 不死」の秘密を探ろうとするセバスチャン・メルモスとホームズの戦いが中心であり、その過程で、大英博物館に保管されていたパピルス「死者の書」の盗難事件、ノーフォーク州にある友人の地所におけるセバスチャン・メルモスの事故死事件(銃の暴発)そして、問題のパピルスをエジプトで発掘した考古学者であるジョージ・フェーヴァーショー卿の殺害事件とアリステア・アンドリューズ卿の行方不明事件等が発生していく。

勿論、ホームズは、これらの謎を全て解き明かして、「死後の世界 / 不死」が隠されているジョージ・フェーヴァーショー卿の避暑地である湖水地方へと辿り着くが、そこへ至るまでのセバスチャン・メルモスとの競争というか、知恵比べが主体である。


(4)総合評価 ☆☆☆☆(4.0)


他のパスティーシュ作品の場合、300ページ近くの分量のものが多く、作品によっては、300ページを超えるものもある。長編になると、どうしても、1つのテーマだけで推し進めていくには、なかなか難しい。また、物語の展開に乏しいと、どうしても、読み進めていくには、厳しい。

それらに比べると、本作品は、約170ページの中編であり、物語の展開も早く、非常に読みやすいので、ガチガチの本格ものではないが、お勧めである。



0 件のコメント:

コメントを投稿