2022年9月22日木曜日

キャロル・ブッゲ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / インドの星」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Star of India by Carole Bugge) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2011年に出版された
キャロル・ブッゲ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / インドの星」の表紙(一部)


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆☆(4.0)


1891年5月4日、シャーロック・ホームズと彼の宿敵で、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の2人は、スイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)にその姿を消して、彼らは死亡したものと思われていたが、3年後の1894年4月、ホームズは、無事にロンドンへと帰還し、「空き家の冒険(The Empty House)」事件において、ジョン・H・ワトスンやスコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)と協力の上、モリアーティー教授の片腕であるセバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)の捕縛に成功した。本作品は、興味を持てる事件がなく、ホームズは非常に退屈していた1894年10月に発生した事件である。

英国の作家であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies:1946年ー)が2022年に発表した「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐(The further adventures of Sherlock Holmes / Revenge from the Grave → 2022年5月4日 / 5月14日 / 5月24日付ブログで紹介済)」では、「最後の事件」/「空き家の冒険」に続くホームズ対モリアーティー教授の後継者と名乗る人物との戦いが展開する一方、本作品では、ホームズだけではなく、モリアーティー教授も生きており、ホームズ対モリアーティー教授の戦いの第2幕が始まる。


(2)物語の展開について ☆☆☆☆(4.0)


デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐」では、ホームズ対モリアーティー教授の後継者と名乗る人物との戦いが展開するが、本作品では、スイスのマイリンゲンにあるライヘンバッハの滝壺から復活したモリアーティー教授が、ホームズの元を訪れたメリーウェザー嬢(Miss Merriweather)が保有する青いサファイアで、正当な持ち主ではない人物の手に渡ると、死をもたらすと言い伝えてられている「インドの星(The Star of India)」に狙いを定めたため、ホームズ対モリアーティー教授の戦いの第2幕が進んでいく。

序盤、物語の舞台は、ロンドンのロイヤルアルバートホール(Royal Albert Hall → 2016年2月20日付ブログで紹介済)やコヴェントガーデン(Covent Garden → 2016年1月9日付ブログで紹介済)、そして、コンウォール州(Cornwall)のティンタジェル城(Tintagel Castle → 2022年7月23日付ブログで紹介済)へと移り、展開がスピーディーとまでは言わないものの、非常に読みやすく、なかなか面白い。メリーウェザー嬢が持つ「インドの星」に狙いを定めたモリアーティー教授との戦いの第2幕をホームズが開始する本筋が始まった後も、最後まで一気に読み進められる。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆半(3.5)


興味を持てる事件がなく、非常に退屈していたホームズは、モリアーティー教授の復活を知り、以前の姿を取り戻したかのように、活動的である。

本作品は、ホームズ対モリアーティー教授の戦いの第2幕が本筋かと思わせるが、「実は、…」という内容で、ホームズは、モリアーティー教授以外に、もう一人の敵を相手にする必要があり、やや苦戦するのである。


(4)総合評価 ☆☆☆☆(4.0)


本作品は、非常に読みやすく、話の展開も面白い。

また、モリアーティー教授の復活を知ったホームズは、とても生き生きしているように感じられる。

唯一の難点は、復活したモリアーティー教授自身が、物語の最後まで、ホームズに対して、その姿を見せず、闇に潜んだままで終わるところかなと思う。ただ、それが、「犯罪界のナポレオン」と呼ばれるモリアーティー教授らしいのかもしれないが。そうは言っても、ライヘンバッハの滝から共に生還したホームズとモリアーティー教授の二人が、実際に対面する場面を見たかった。



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