2022年9月26日月曜日

ジョン・ディクスン・カー作「血に飢えた悪鬼」(The Hungry Goblin by John Dickson Carr)

日本の東京創元社から
創元推理文庫として1980年に出版されている
ジョン・ディクスン・カー作「血に飢えた悪鬼」の表紙 -
ウィリアム・ウィルキー・コリンズの写真が使用されている。


「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家である。彼は、シャーロック・ホームズシリーズで有名なサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の伝記を執筆するとともに、コナン・ドイルの息子であるエイドリアン・コナン・ドイル(Adrian Conan Doyle:1910年ー1970年)と一緒に、ホームズシリーズにおける「語られざる事件」をテーマにした短編集「シャーロック・ホームズの功績(The Exploits of Sherlock Holmes)」(1954年)を発表しているが、推理小説「月長石(The Monnstone)」(1868年)の作者で、ヴィクトリア朝時代(1837年-1901年)に活躍した英国の小説家 / 推理作家 / 劇作家であるウィリアム・ウィルキー・コリンズ(William Wilkie Collins:1824年ー1889年 → 2022年9月2日 / 9月4日付ブログで紹介済)を探偵役にした推理小説も発表している。


彼が、ジョン・ディクスン・カー名義で発表した作品では、当初、パリの予審判事のアンリ・バンコラン(Henri Bencolin)が探偵役を務めたが、その後、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)が探偵役として活躍した。彼は、カーター・ディクスン(Carter Dickson)というペンネームでも推理小説を執筆しており、カーター・ディクスン名義の作品では、ヘンリー・メルヴェール卿(Sir Henry Merrivale)が探偵役として活躍している。


彼がウィリアム・ウィルキー・コリンズを探偵役にした推理小説は、1972年にジョン・ディクスン・カー名義で発表された歴史ミステリー「血に飢えた悪鬼(The Hungry Goblin - A Victorian Detective Novel)」である。


定期船(ニューヨーク → リヴァプール)と列車(リヴァプール → ユーストン(Euston Station → 2015年10月31日付ブログで紹介済))を乗り継いで、1869年10月29日(金)の夕方、ジャーナリストのクリストファー(キット)・ファレル(Christopher (Kit) Farrell)は、9年ぶりにロンドンへと戻って来た。


キット・ファレルは、ランガムホテル(Langham Hotel → 2014年7月6日付ブログで紹介済)に宿泊するのであるが、ロンドン到着早々に、奇怪な事態に次々と遭遇する。

彼が、ホテルの玄関前で四輪馬車から降りた際、ホテルの中から出て来た女性が、玄関前に横付けになった四輪馬車に乗り込むと、霧雨の中を走り去って行った。なんと、彼女は、米国で別れ別れになった彼の恋人パトリシア(パット)・デンビー(Patoricia (Pat) Denbigh)だった。米国に居る筈の彼女が、何故、ロンドンに居るのか?彼女の急いだ様子を見る限り、何か、彼には言えない秘密があるようだった。

また、彼の友人で、探検家のナイジェル・シーグレイヴ(Nigel Seagrave)は、キット・ファレルに対して、「妻のミュリエル(Muriel)を愛しているが、最近、全く同じ顔をした別人と入れ替わったみたいだ。」と告げる。

更に、銃弾がキット・ファレルの頭をかすめた。何者か、彼を殺害しようとしているのか?


そして、万聖節前夜(ハロウィーン)の夜、ユドルフォ荘の温室内において、ナイジェル・シーグレイヴが撃たれる事件が発生する。温室は、出入口には誰かが居る衆人環視の密室状況下にあり、ナイジェル・シーグレイヴを撃った犯人の姿は、どこにもなかった。


この謎に挑戦するのが、ジョン・ディクスン・カーが探偵役に据えたウィリアム・ウィルキー・コリンズその人である。


パリの予審判事のアンリ・バンコランが探偵役を務める処女作「夜歩く(It Walks by Night)」を1930年に発表した以降、不可能犯罪をテーマに取り組んできたジョン・ディクスン・カーによる最後の長編かつ遺作が、本作品である。


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