2023年11月28日火曜日

アガサ・クリスティー作「予告殺人」<英国 TV ドラマ版>(A Murder Is Announced by Agatha Christie )- その4

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「予告殺人」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、

薔薇の花束が活けられた花瓶の形に切り取られているものが使用されている。


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「「予告殺人(A Murder Is Announced → 2022年12月5日付ブログで紹介済)」(1950年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第4話(第1シリーズ)「予告殺人」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(11)

<原作>

原作の場合、チッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の郊外にあるリトルパドックス館(Little Paddocks)の女主人レティシア・ブラックロック(Letitia Blacklock)は、同館に同居しているジュリア・シモンズ(Julia Simmons - レティシア・ブラックロックの年離れた従姉妹)ではなく、本物のジュリア・シモンズから手紙を受け取ったため、ジュリア・シモンズを名乗っていた人物と直接対峙。

すると、彼女は、本当は、資産家ランダル・ゲドラー(Randall Goedler)の反対を押し切って、駆け落ち結婚をした妹ソニア・ゲドラー(Sonia Goedler)の双子の子供の一人であるエマ(Emma)であることを白状する。また、彼女は、ルディー・シャーツ(Rudi Scherz - リトルパドックス館へ押し入ったスイス人の強盗)の殺人とレティシア・ブラックロックの殺人未遂を否定し、双子のもう一方であるピップ(Pip)とは、幼児の時以来、会っていないと答えた。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、レティシア・ブラックロックは、ジュリア・シモンズを名乗っていた人物の部屋に入り、彼女のパスポートを発見。そのパスポートに、ジュリア・シモンズではなく、エマ・メースフィールド(Emma Masefield)と書かれていたため、レティシア・ブラックロックは、彼女がソニア・ゲドラーの双子の子供の一人であるエマであることが判った。

レティシア・ブラックロックから指摘を受けたエマは、「自分達双子が3歳の時に、両親が離婚して、父親のアレックス(Alex)は、名字をファブリカント(Fabricant)からメースフィールドへと変更した。自分は父親に引き取られ、ピップは母親に引き取られて、それ以来、会っていない。」と答えた。


(12)

<原作>

原作の場合、上記(11)が起きるのは、エイミー・マーガトロイド(Amy Murgatroyd - 養鶏業者)が、何者かに絞殺される前である。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、上記(11)が起きるのは、物語の終盤、捜査主任のダーモット・クラドック警部(Inspector Dermot Craddock)が、事件の関係者全員をリトルパドックス館に集めた際である。


物語の終盤、捜査主任のダーモット・クラドック警部は、事件の関係者全員をリトルパドックス館に集める。


(1

<原作>

原作の場合、ダーモット・クラドック警部が、エドマンド・スウェッテナム(Edmund Swetlenham - 文学青年)を双子のもう一方であるピップだと指摘した際に、フィリッパ・ヘイムズ(Phillipa Haymes - リトルパドックス館に下宿している美貌の女性)が、ソニア・ゲドラーの双子の子供の一人であるピップであることを認める。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、レティシア・ブラックロックによって、エマであることを暴露されたジュリア・シモンズを名乗っていた人物が、フィリッパ・ヘイムズに近寄って、彼女がピップであることを指摘する。エマ曰く、「2日前に、フィリッパ・ヘイムズがピップであることが判った。」と告げた。


(1

<原作>

原作の場合、その際、ミッチー(Mitzi - リトルパドックス館で働く外国人のメイド / 料理人)が、「レティシア・ブラックロックが、ルディー・シャーツを銃で撃ったのを目撃した。」と主張するが、ダーモット・クラドック警部は、これに取り合わなかった。

暫くして、台所から悲鳴が聞こえたため、皆が台所に駆け付けると、レティシア・ブラックロックがミッチーの顔を流しに押し付けて、溺れさせようとしているところだった。そのため、レティシア・ブラックロックは、その場で逮捕される。

これは、ミス・ジェーン・マープルが、ミッチーと一緒に、犯人であるレティシア・ブラックロックに対して、仕掛けた罠であった。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、メイド / 料理人ミッチー・コジンスキー(Mitzi Kosinski)は、ダーモット・クラドック警部が集めた事件関係者の中に入っていなかったが、包丁を持って、突然、部屋の中に入って来ると、「あなたが、エイミー・マーガトロイドを殺したんだ!」と叫び、レティシア・ブラックロックを刺そうとした。ミッチー・コジンスキーは、皆に取り押さえられ、部屋の外へと連れ出される。

その後、台所での件は、発生しない。

また、ミッチー・コジンスキーが、レティシア・ブラックロックに対して、包丁で襲い掛かったことも、ミス・ジェーン・マープルが仕掛けた罠ではなかった。


ミス・ジェーン・マープルは、事件の関係者に対して、事件の真相を明らかにする。


*本当のレティシア・ブラックロックは、スイスにおいて、肺炎で既に亡くなって降り、妹のシャーロット・ブラックロック(Charlotte Blacklock)が、今まで姉のレティシアに成り済ましていた。

ルディー・シャーツは、以前、スイスの病院に務めて降り、シャーロット・ブラックロックの顔に見覚えがあったため、レティシア・ブラックロックに成り済ましたシャーロット・ブラックロックによって、殺された。

ドラ・バンナー(Dora Bunner)は、ブラックロック姉妹の幼馴染で、シャーロット・ブラックロックがレティシア・ブラックロックに成り済ましていることも知っていた。ただ、ドラ・バンナーが、レティシア・ブラックロックの愛称である「レティー(Lettie)」ではなく、シャーロット・ブラックロックの愛称である「ロティー(Lottie)」と、時々口走ることがあったため、殺された。

ルディー・シャーツが殺された際、自分は部屋の中に居らず、暗闇の中、部屋を抜け出て、ルディー・シャーツの後ろに居たことを、エイミー・マーガトロイドが思い出すことを恐れたレティシア・ブラックロックに成り済ましたシャーロット・ブラックロックによって、殺された。


事件が解決した後の展開も、原作と TV ドラマ版では、次のように異なっている。


<原作>

*メイド / 料理人ミッチーは、サウザンプトン(Southampton)で新しい職を得る。

*フィリッパ・ヘイムズ(ピップ)とジュリア・シモンズ(エマ)の2人が、ゲドラー家の財産を相続する。

*エドマンド・スウェッテナムとフィリッパ・ヘイムズは結婚して、チッピングクレグホーン村に住むことになる。

<TV ドラマ版>

メイド / 料理人ミッチー・コジンスキーのその後の顛末については、言及されていない。

*フィリッパ・ヘイムズ(ピップ)とジュリア・シモンズ(エマ)の2人が、ゲドラー家の財産を相続することになる。

*エドマンド・スウェッテナムとフィリッパ・ヘイムズが結婚する展開にはならない。TV ドラマ版の場合、飲酒癖のため、妻に離婚されたアーチー・イースターブルック大佐(Colonel Archie Easterbrook - インドから戻った軍人)とサディー・スウェッテナム(Sadie Swetlenham)と交際しているが、彼女の息子であるエドマンド・スウェッテナムは、そのことを快く思っていなかったが、事件解決後、サディー・スウェッテナムが、アーチー・イースターブルック大佐とエドマンド・スウェッテナムの2人の手を引いて、リトルパドックス館を仲良く後にする場面が描かれている。

*資産家ランダル・ゲドラーの妻で、長らく病床にあったベル・ゲドラー(Belle Goedler)が亡くなる場面を以って、物語は最後を迎えるのであった。


ちなみに、犯人のレティシア・ブラックロックを演じた Zoe Wanamaker は、英国の TV 会社 ITV 社が制作した「Agatha Christie’s Poirot」において、アリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver - 探偵作家で、ポワロの友人)も演じている。

なお、アリアドニ・オリヴァーが登場する作品は、以下の通り。


*第10シリーズ / 第55話「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」

*第11シリーズ / 第58話「マギンティ夫人は死んだ(Mrs. McGinty’s Dead)」

*第11シリーズ / 第60話「第三の女(Third Girl)」

*第12シリーズ / 第63話「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」

*第13シリーズ / 第66話「象は忘れない(Elephants Can Remember)」

*第13シリーズ / 第68話「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」


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