2023年11月16日木曜日

アガサ・クリスティー作「予告殺人」<英国 TV ドラマ版>(A Murder Is Announced by Agatha Christie )- その2

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く
ミス・マープルシリーズの長編第4作目「予告殺人」の一場面
(筆者が購入した「アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー」から抜粋)


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「「予告殺人(A Murder Is Announced → 2022年12月5日付ブログで紹介済)」(1950年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第4話(第1シリーズ)「予告殺人」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(1)

<原作>

チッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の地元紙朝刊「ギャゼット(Gazette)」の広告欄に、非常に変わった連絡が掲載された。「殺人をお知らせ致します。10月29日の金曜日、午後6時半にリトルパドックス館においてです。(A murder is announced and will take place on Friday, October 29th, at Little Paddocks, at 6:30 pm.)」と。

チッピングクレグホーン村の郊外にあるリトルパドックス館(Little Paddocks)の女主人であるレティシア・ブラックロック(Letitia Blacklock)は、この広告を見て困惑する。一方で、当日、好奇心旺盛な村の人々が、続々とリトルパドックス館に集まって来て、何が起きるのか、とても心待ちにしていた。

<TV ドラマ版>

チッピングクレグホーン村の地元紙朝刊「ギャゼット」の広告欄に掲載された予告殺人の日時は、原作の「10月29日(金)の午後6時半」ではなく、「9月25日(金)の午後7時半」に変更されている。


そして、時計が午後6時半を告げた時、室内の明かりが突然消えると、部屋の扉が開いて、懐中電灯を持った男が姿を現した。村の人々が何かの余興だと思った時、銃声が響く。

部屋の扉が閉まり、明かりが灯ると、そこには、突然部屋に侵入して来た男の死体が横たわっていたのである。レティシア・ブラックロックの親友であるドーラ・バンナー(Dora Bunner)によると、死んでいた男は、村のホテルに勤める従業員のルディー・シャーツ(Rudi Scherz)とのこと。


警察が呼ばれ、ダーモット・クラドック警部(Inspector Dermot Craddock - 捜査主任)が、その場に居合わせた村の人々を一人ずつ調べていく。状況としては、自殺、あるいは、事故のように思われるが、クラドック警部としては、どちらにも納得がいかなかった。


(2)

<原作>

ダーモット・クラドック警部にとって非常に幸運なことに、死亡したルディー・シャーツが勤めていた村のホテルには、探偵好きな独身の老婦人ミス・ジェーン・マープルが滞在していたのである。

ミス・マープルの手腕を高く評価している警察の上層部(ジョージ・ライデスデール(George Rydesdale - 地元の警察署長(Chief Constable)で、ダーモット・クラドック警部の上司)+サー・ヘンリー・クリザリング(Sir Henry Clithering - 前警視総監で、ダーモット・クラドック警部の名付け親))から、クラドック警部は、事件の真相解明のために、ミス・マープルに協力を求めるよう、指示される。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、原作とは異なり、警察関係者として、ダーモット・クラドック警部しか登場しないため、原作のような展開はない。


(3)

<原作>

ダーモット・クラドック警部の事件捜査に協力することになったミス・ジェーン・マープルは、チッピングクレグホーン村のジュリアン・ハーモン(Julian Harmon - 牧師)とダイアナ・ハーモン(Diana Harmon - ジュリアン・ハーモンの妻)の家に滞在することになる。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、原作とは異なり、ジュリアン・ハーモンとダイアナ・ハーモンは登場しないため、ミス・ジェーン・マープルは、エイミー・マーガトロイド(Amy Murgatroyd - 養鶏業者)とリジー・ヒンチクリフ(Lizzie Hinchcliffe - 養鶏業者で、エイミー・マーガトロイドの同居人)の家に滞在することになる。エイミー・マーガトロイドが、ミス・マープルの友人の娘と言う設定になっている。


ルディー・シャーツの恋人で、地元のスパホテルのウェートレスであるマーナ・ハリス(Myrna Harris)は、ダーモット・クラドック警部とミス・ジェーン・マープルに対して、「ルディー・シャーツは、何者かに雇われて、リトルパドックス館に侵入する強盗犯を演じた。」と言う話をするが、残念ながら、誰がルディー・シャーツを雇ったのかは、不明だった。

その結果、この事件において、本当に命を狙われたのは、リトルパドックス館の女主人であるレティシア・ブラックロックであり、ルディー・シャーツは、その口封じのために殺されたと言う説が有力となるのであった。


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