2023年4月7日金曜日

ヴォーン・エントウィッスル作「スラックストンホールの亡霊」(The Revenant of Thraxton Hall by Vaughn Entwistle) - その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. から2014年に出ている
ヴォーン・エントウィッスル作「スラックストンホールの亡霊」の裏表紙
(Images : Dreamstime / Funny Little Fish)


「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1893年12月号に「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」を発表して、シャーロック・ホームズを、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」こと、ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor Jame Moriarty)と一緒に、スイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)の底へと葬ったアーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)は、ストランド地区(Strand)の「ストランドマガジン」の建物を訪れた際、ホームズの死に対する正式な喪のしるしとして、黒い腕章を付けたロンドン市民が、「ストランドマガジン」に対して、抗議のデモを行っており、コナン・ドイルの姿に気付いた人々は、彼を捕まえたり、キャベツやトマト等を投げつけたりした。

なんとか、「ストランドマガジン」の建物内に入ったコナン・ドイルが、編集者と一緒に、オフィス内で打ち合わせをしていると、窓ガラスを破って、石が投げ込まれた。投げ込まれた石には、赤インクで「殺人者(Murderer)」と書かれた紙がつけられていたのである。


コナン・ドイルがロンドン郊外のサウスノーウッド(South Norwood)にある自宅へと戻ると、「心霊現象研究協会(SPR : Society for Psychical Research)」と言う団体からの手紙が届いていた。

その手紙によると、


(1)ヘンリー・シグウィック(Henry Sidgwick)なる人物が、「心霊現象研究協会」の会長を務めていること

(2)「心霊現象研究協会」による最初の会合が、2週間後、ランカシャー州(Lancashire)に所在するスラックストンホール(Thraxton Hall)において、4日間にわたり、開催されること

(3)コナン・ドイルを、上記の会合に、ゲストとして招待すること


等が記載されていた。


「心霊現象研究協会」なる団体に全く心当たりがないコナン・ドイルの目の前に、突然、シャーロック・ホームズが、その姿を現わして、あの有名なセリフを発する。


「Once you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, is the truth.(全くありえないことを全て取り除いた後、そこに残ったものが如何にありそうにないことであっても、それは真実に違いない。 → 短編「緑柱石の宝冠(The Beryl Coronet)」より)」


コナン・ドイルの目の前に現れたホームズの幻は、更に、言葉を続ける。


・今日の午前中、君がメイフェア地区(Mayfair)で会った謎の女性から受け取った手紙に付いていた不死鳥(phoenix)の透し模様(watermark)は、ランカシャー州のスラックストン家のものだ。(The phoenix is the heraldic symbol of a famous English family, The Thraxton family.)

・「心霊現象研究協会」による会合が、2週間後、ランカシャー州のスラックストンホールにおいて、開催される。つまり、スラックストン家のレディー・ホープ・スラックストン(Lady Hope Thraxton)が、「心霊現象研究協会」による会合内で行われる降霊術会(seance)において、至近距離から銃で胸を2回撃たれて、殺される運命にある。(The meeting of SPR will take place at Thraxton Hall in 2 weeks’ time, at which time the current Lady Hope Thraxton will be murdered, shot twice in the chest at close range at a seance.)

・「心霊現象研究協会」の手紙の内容は、今日の午前中、君がメイフェア地区で会った謎の女性から聞いた話と符合する。


コナン・ドイルは、「スラックストン家のレディー・ホープ・スラックストンは、確か、有名な降霊術者で、新聞で読んだ覚えがある。(Then Hope Thraxton is the medium of some renown I have read of more papers.)」と答える。


コナン・ドイルの返事を聞いたホームズは、微笑んだ。

「さあ、ゲームの始まりだ。(The game is afoot my boy.)」と。


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