2023年3月28日火曜日

<第1100回> アガサ・クリスティー作「死者のあやまち」<英国 TV ドラマ版>(Dead Man’s Folly by Agatha Christie )- その2

第68話「死者のあやまち」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 9 の裏表紙

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)をベースにして、英国の TV 会社 ITV 社が制作した「Agatha Christie’s Poirot」の第68話(第13シリーズ)の冒頭は、以下のように進んでいく。


(1)

<英国 TV ドラマ版>

雷鳴が轟く大雨の中、ビックフォード(Bickford)が運転する車に乗った資産家のサー・ジョージ・スタッブス(Sir George Stubbs)と彼の妻のレディー・ハティー・スタッブス(Lady Hattie Stubbs)が、彼らが購入したナス屋敷(Nasse House)へと到着し、執事のヘンデン(Henden)達に出迎えられる。

<原作>

アガサ・クリスティーの原作では、この場面から始まる訳ではない。


(2)

<英国 TV ドラマ版>

その1年後、名探偵エルキュール・ポワロは、女流探偵作家で、彼とは旧知の仲であるアリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver)からの連絡を受け、ロンドンからデヴォン州(Devon)のナス屋敷まで呼び出される。

ポワロを乗せて、駅からナス屋敷へと向かう途中、運転手は、外国人旅行者の女性2人(オランダ人とイタリア人)を乗せた。女性旅行者2人は、車の前部シートに座ったが、オランダ人の女性旅行者のお喋りに、後部シートに座るポワロは、愛想笑いを浮かべるものの、内心、非常に閉口していた。オランダ人の女性旅行者によると、彼女達は、今朝、エクセター(Exeter)駅のプラットフォームで出会って、それから、一緒に行動している、とのことだった。運転手は、ナス屋敷の手前で、彼女達を車から降ろすと、ポワロをナス屋敷まで送り届けたのであった。

<原作>

アガサ・クリスティーの原作では、ポワロは、女性旅行者2人のことを嫌がらず、迎えの車を使って、紳士的に、近くのユースホステルまで送ってあげている。


(3)

<英国 TV ドラマ版>

ナス屋敷に到着したポワロを、オリヴァー夫人は、外へと連れ出すと、次のように説明する。

明日、ナス屋敷で催される慈善パーティーのために、(殺人)犯人探しゲーム(Murder Hunt)の段取りをしているところだが、このゲーム自体に何かおかしな点があるものの、それが何なのか、よく判らないと、オリヴァー夫人は、そんな不安を口にする。彼女としては、それをポワロに明らかにしてほしいと頼む。

基本的には、アガサ・クリスティーの原作通りであるが、犯人探しゲームについては、ウォーバートン夫妻(ジム・ウォーバートン(Jim Warburton - 国会議員)とウォーバートン夫人(Mrs. Warburton))による発案であるとの言及が為されている。

前回に述べたが、ジム・ウォーバートンは、英国 TV 版の場合、国会議員となっているが、アガサ・クリスティーの原作の場合、国会議員を務めるウィルフレッド・マスタートン(Wilfred Masterton)の代理人で、大尉(Captain)である。また、ウォーバートン夫人は、英国 TV 版の場合、国会議員ジム・ウォーバートンの妻となっているが、アガサ・クリスティーの原作の場合、国会議員のウィルフレッド・マスタートンの妻で、名前はコニー・マスタートン(Connie Masterton)である。

<原作>

アガサ・クリスティーの原作では、犯人探しゲームに関しては、コニー・マスタートンによる発案だとされている。


第68話「死者のあやまち」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 9 の内側(その1)-
エルキュール・ポワロシリーズのパーパーバック版の広告となっている。

(4)

<英国 TV ドラマ版>

ポワロは、ナス屋敷の前の持ち主であるエミー・フォリアット(Amy Folliat)に会う。

フォリアット夫人によると、彼女の夫は、ベルギー北部のフランドル地方(Flanders)において亡くなった、とのこと。また、彼女の長男は、陸軍に入隊したが、パシュトゥーン人(Pashtuns - アフガニスタンとパキスタンに居住するイラン系民族)との紛争で亡くなり、彼女の次男は、飛行機を操縦して、アフリカのナイロビ(Nairobi)へと向かう途中、墜落して、行方不明になった、と言う説明を受けた。

<原作>

アガサ・クリスティーの原作によると、フォリアット夫人の夫は、第二次世界大戦前に、亡くなり、また、彼女の長男は、海軍で出征した後、乗っていた艦が沈められ、彼女の次男は陸軍に入隊したが、イタリアで戦死したようである、とのこと。


(5)

夕食を終えたポワロは、散歩を兼ねて、船着場まで降りていき、そこでジョン・マーデル(John Merdell - 村の老人で、犯人探しゲームの被害者役を務めるマーリン・タッカー(Marlene Tucker)の祖父)に出会う。

ポワロからフォリアット夫人の話題をふられたマーデル老人は、「Master Henry(フォリアット夫人の長男), he died for his country, fair dos. Master James(フォリアット夫人の次男), he was wild !」と言う発言をする。ポワロが、マーデル老人に対して、「It is said, is it not, that the time for the Folliat family, it is finished ?」と尋ねると、マーデル老人は、「Always be Folliats at Nasse.」と言う謎めいたコメントを告げるのであった。


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