2022年8月2日火曜日

スティーヴン・サヴィル&ロバート・グリーンバーガー作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / ソローズクラウンでの殺人」(The further adventures of Sherlock Holmes / Murder at Sorrow’s Crown by Steven Savile & Robert Greenberger) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2016年に出版された
スティーヴン・サヴィル&ロバート・グリーンバーガー作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / ソローズクラウンでの殺人」の表紙


本作品「ソローズクラウンでの殺人(Murder at Sorrow’s Crown)」は、スウェーデンに住む英国出身の作家兼編集者であるスティーヴン・サヴィル(Steven Savile:1969年ー)と米国の作家兼編集者であるロバート・グリーンバーガー(Robert Greenberger:1958年ー)の合作によって、2016年に発表された。


シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの二人が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)において、共同生活を始め、「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」事件を解決してから、数ヶ月が経過した1881年夏(7月)のことである。

その頃、ホームズの名前は、スコットランドヤード内において、既にある程度知れ渡っていて、レストレード警部(Inspecor Lestrade)とグレッグスン警部(Inspector Gregson)が、ホームズの元へ事件の相談に訪れていた。また、新聞各紙も、ホームズの活躍を報道し始めた頃で、ベーカーストリート221Bにやって来る依頼者は、引っ切り無しだった。


その日、最後の依頼者が帰ると、ハドスン夫人(Mrs. Hudson)が姿を見せる。ハーマイオニー・フランセス・サラ・ウィンター(Mrs. Hermione Frances Sara Wynter)と名乗る老女が、「ホームズさんに相談したいことがある。」と言って、訪ねて来たらしい。ただし、事前のアポイントメントをしていない、とのことだった。ホームズが首を横に振ろうとするが、ハドスン夫人は「お年の方だし、こんな暑い中、わざわざ訪ねてみえたのだから、もう一人位会っても、問題ないでしょう。」とホームズを諫めると、ホームズは、ハドスン夫人に対して、その老女を部屋に通すようにと、頷くのであった。


ハドスン夫人に案内されて、部屋に入って来たウィンター夫人は、身長が150cm位で、少なくとも70歳か、それ以上の老女だった。

ウィンター夫人曰く、「夫ライル(Lyle)の知人である実業家ジャイルズ・ドゥヴェール氏(Mr. Giles De Vere)から紹介を受けて、ここにやって来た。」と言う。ジャイルズ・ドゥヴェール氏は、何年か前、ホームズに手助けをしてもらったことがあるらしい。


ウィンター夫人によると、彼女の息子ノーベルト(Norbert)のことで相談したいと言う。


彼女の息子は、英国海軍(Royal Navy)の大尉(Lieutenant → 英国陸軍だと、中尉)で、軍艦ディード(HMS Dido)に乗艦していた。軍艦ディードは、先日終結した(第一次)ボーア戦争(First Anglo-Boer War:1880年12月16日ー1881年3月23日)のため、南アフリカで参戦していたが、数週間前に英国へ帰還した。

ウィンター夫人が軍港まで息子のノーベルトを迎えに行ったところ、息子の姿は見当たらず、乗艦していた乗組員の多くは、息子のことを知らず、たとえ息子を知っていたとしても、彼は乗艦していないと答えるのであった。


その後、ウィンター夫人は、海軍省(Admiralty)と陸軍省(War Office)へ何度も足を運んだものの、殆どの職員は、無視 / 無関心を決め込むか、あるいは、ありきたりの言葉を彼女にかけるだけだった。ただ、ほんの一握りの職員が彼女の息子の消息を調べてくれたが、彼は「交戦中に行方不明(Missing in Action)」になったと記録されていたのである。更に、悪いことには、「彼は、交戦中に脱走した。」というほのめかしもあったらしい。


自分の息子を誇りに思うウィンター夫人としては、彼を「脱走兵(deserter)」だとは、どうしても思えず、ホームズに対して、「息子がどうなったのかを調べて、彼の不名誉を晴らしてほしい。」と懇願した。ウィンター夫人から渡された彼女の息子の写真をワトスンが見ていると、ホームズがその写真をワトスンの手から取り上げ、暫くの間、じーっと見つめた後、ウィンター夫人に対して、彼女の依頼を受け、彼女の息子の調査 / 捜索を直ぐに始めると告げる。

「一見、単なる行方不明者の案件のようではあるが、海軍省や陸軍省の対応から推測すると、何かが裏に隠されているような気がする。」と、ホームズは、ウィンター夫人に話した後、調査を受けてもらえて安心した彼女を戸口まで案内するのであった。


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