2022年8月4日木曜日

スティーヴン・サヴィル&ロバート・グリーンバーガー作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / ソローズクラウンでの殺人」(The further adventures of Sherlock Holmes / Murder at Sorrow’s Crown by Steven Savile & Robert Greenberger) - その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2016年に出版された
スティーヴン・サヴィル&ロバート・グリーンバーガー作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / ソローズクラウンでの殺人」の裏表紙

ウィンター夫人(Mrs. Hermione Frances Sara Winter)がベーカーストリート221B(221B Baker Street)を辞去すると、シャーロック・ホームズは、ジョン・H・ワトスンに対して、「今直ぐに海軍省(Admiralty)へ出かける。」と告げる。絶え間ない雨は弱まっていたが、まだ止んでいなかった。夏の暑さにかかわらず、二人はコートを羽織ると、外へ出て馬車を呼んだ。


海軍省に到着すると、ホームズは、ウィンター夫人の息子ノーベルト・ウィンター大尉(Lieutenant Nobert Wynter)のことを尋ねて廻るが、職員の間をたらいまわしにされるか、あるいは、「上の許可がないと、情報を開示できない。」と言われ、埒が明かなかった。しかしながら、ノーベルト・ウィンター大尉に対して、今年(1881年7月)、つまり、つい最近まで給与が支払われていたことが判明する。一方で、彼は、今年の2月、南アフリカでの交戦中に行方不明になっている訳で、それにもかかわらず、彼に給与が支払われているのは、理解し難いことであった。

海軍省から戻る馬車の中で、ホームズは、ワトスンに対して、次のように話した。「南アフリカを離れる前、あるいは、英国への帰還途上の軍艦ディード(HMS Dido)内において、ノーベルト・ウィンター大尉の身に何か良くないことが起き、そして、英国政府がその事実を隠蔽している。」と。


海軍省からベーカーストリート221Bに戻ると、ホームズに頼まれたワトスンは、(第一次)ボーア戦争(First Anglo-Boer War:1880年12月16日ー1881年3月23日)が勃発した1880年12月よりも前の1880年11月から軍艦ディードが英国に帰還した先月(1881年6月)までの新聞を念入りに調べて、ノーベルト・ウィンター大尉の名前を探したが、残念ながら、彼の名前も、また、類似した名前さえも見つからなかった。


更に、ワトスンは、知り合いの医者数名に会い、海軍で医療奉仕活動をしたことがある人物を知っている医者を探り当てた。

彼の紹介で、ワトスンは、バーソロミュー・ニューカーク医師(Dr. Bartholomew Newkirk)という30歳の男性に会い、話の途中にノーベルト・ウィンター大尉という名前を何気なく出してみたが、相手には何の反応もなかった。彼によると、英国海軍には18千人以上の兵士が居て、全員の名前を知っていること自体、不可能とのことだった。それでも、バーソロミュー・ニューカーク医師は、自分の医療奉仕記録をあたって、ノーベルト・ウィンター大尉のカルテがあるかどうかを調べてくれることになった。

ワトスンとしても、今できることはそこまでで、バーソロミュー・ニューカーク医師からの回答を待つしか、他に手がなかった。


ホームズ側の調査で何か進展があっただろうかと考えながら、ワトスンは、ベーカーストリート221Bへの家路を急いでいた。ベーカーストリート221Bまであと少しとなった時、突然、ワトスンは背後から何者かに両手を掴まれ、建物と建物の間の狭い路地に引きずり込まれた。ワトスンが羽交い締めに抵抗していると、二人目が姿を表した。その二人目がジャブを2つ見まうと、ワトスンは息が詰まり、崩れ落ちる。「これは、一体、どういうことだ?」と、ワトスンが言葉を発する前に、強烈な一発が放たれ、ワトスンの視界が暗転する。


暫くして気が付いたワトスンがなんとかして立ち上がり、ベーカーストリート221Bへ戻ると、ホームズは既に帰宅していた。ただ、ホームズも、負った怪我の手当てをしていたのである。


つまり、ホームズとワトスンの二人は、同じ連中に襲われた訳だ。ノーベルト・ウィンター大尉の消息を調べられることを良しとしない人物(達)の仕業なのだろうか?


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