2023年10月21日土曜日

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」<英国 TV ドラマ版>(Murder on the Orient Express by Agatha Christie )- その1

第64話「オリエント急行の殺人」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 8 の表紙
 -
下段の左側から3番目の人物が、
「オリエント急行の殺人」に登場する
米国人の実業家サミュエル・ラチェットの執事エドワード・マスターマン
(演:Hugh Bonneville)


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」(1934年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第64話(第12シリーズ)として、2010年12月25日に放映されている。英国の俳優であるサー・デヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。ちなみに、日本における最初の放映日は、2012年2月9日である。


英国 TV ドラマ版における主な登場人物(エルキュール・ポワロを除く)と出演者は、以下の通り。


(1)モーリス中尉(Lieutenant Morris - パレスチナに駐屯する英国陸軍(と思われる)軍人):Tristan Shepherd

(2)ブランシュフラワー中尉(Lieutenant Blanchflower - パレスチナに駐屯する英国陸軍(と思われる)軍人で、モーリス中尉の友人):Sam Crane

(3)サミュエル・ラチェット / ランフランコ・カセッティ(Samuel Ratchett / Lanfranco Cassetti - 米国人の実業家): Toby Jones

(4)ヘクター・マックイーン(Hector MacQueen - 米国人で、ラチェットの秘書):Brian J. Smith

(5)ジョン・アーバスノット大佐(Colonel John Arbuthnot - 英国人で、軍人):David Morrissey

(6)メアリー・デベナム(Mary Hermione Debenham - 英国人で、家庭教師):Jessica Chastain

(7)コンシェルジュ(Concierge - イスタンブール(Istanbul)のホテル(The Tokatlian Hotel)の受付):Stewart Scudamore

(8)ザビエル・ブック(Xavier Bouc - ベルギー時代からのポワロの友人で、国際寝台車会社(Compagnie Internationale des Wagons Lits)の重役):Serge Hazanavicius

(9)ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人(Princess Natalia Dragomiroff - ロシア人で、フランスに帰化した亡命貴族の老婦人):Eileen Atkins

(10)ヒルデガード・シュミット(Hildegarde Schmidt - ドイツ人で、ドラゴミロフ公爵夫人に仕える女中):Susanne Lothar

(11)ピエール・ミシェル(Pierre Michel - フランス人で、オリエント急行の車掌):Denis Menochet

(12)キャロライン・ハバード夫人(Mrs. Caroline Hubbard - 米国人で、おしゃべりな中年女性):Barbara Hershey

(13)エドワード・マスターマン(Edward Masterman - 英国人で、ラチェットの執事):Hugh Bonneville

(14)グレタ・オルソン(Greta Ohisson - スウェーデン人で、信仰心の強い女性):Marie-Josee Croze

(15)ルドルフ・アンドレニ伯爵(Count Rudolf Andrenyi - ハンガリー人で、外交官):Stanley Weber

(16)エレナ・アンドレニ伯爵夫人(Countess Elena Maria Andrenyi / 旧姓:エレナ・ウォーターストーン(Elena Waterstone))- アンドレニ伯爵の妻

(17)アントニオ・フォスカレリ(Antonio Foscarelli - 米国に帰化したイタリア人で、自動車のセールスマン):Joseph Mawle

(18)コンスタンティン博士(Dr. Constantine - ギリシア人で、医師):Samuel West


アガサ・クリスティーの原作に比べると、英国 TV ドラマ版における登場人物には、以下の違いが見受けられる。


*アガサ・クリスティーの原作に登場する以下の人物は、英国 TV ドラマ版の場合、割愛された結果、登場しない。


オリエント急行のイスタンブール(Istanbul)発カレー(Calais)行き車輌の16号室(一等寝台席)の乗客として、サイラス・ベスマン・ハードマン(Cyrus Bethman Hardman - 米国人 / セールスマンと言っているが、実はラチェットの身辺を護衛する私立探偵)が、原作では登場するが、英国 TV ドラマ版の場合、登場しない。英国 TV ドラマ版の場合、サイラス・ベスマン・ハードマンの役割は、コンスタンティン博士が、代わりに務めている。


*以下の人物について、アガサ・クリスティーの原作と英国 TV ドラマ版の間では、人物設定上の差異が見受けられる。


(1)モーリス中尉:原作の場合、「シリア(Syria)に駐屯するフランス陸軍(と思われる)軍人 / A very distinguished officer had committed suicide.」となっており、具体的な名前や階級は与えられていない。一方、TV ドラマ版の場合、「パレスチナに駐屯する英国陸軍(と思われる)軍人 / ポワロに追い詰められて、同僚の拳銃を奪い、頭を撃って自殺。」に変更された上に、具体的な名前や階級が与えられている。


(2)ブランシュフラワー中尉:原作の場合、シリアに駐屯するフランス陸軍(と思われる)軍人のデュボスク中尉(Lieutenant Dubosc)となっており、アレッポ(Aleppo)駅において、イスタンブール行きのタウルス急行(Taurus Express)に乗車するポワロを見送る。また、デュボスク中尉は、ポワロがどういった事件を捜査していたのかについては、知らされておらず、あくまでも、ポワロの見送りだけを指示されていた。一方、TV ドラマ版の場合、パレスチナに駐屯する英国陸軍(と思われる)軍人のブランシュフラワー中尉に変更されており、パレスチナからイスタンブールまで、船でポワロに帯同している。また、その際、ブランシュフラワー中尉は、ポワロに対して、友人のモーリス中尉を自殺に追い詰めたことに異を唱えている。


(3)サミュエル・ラチェット / ランフランコ・カセッティ: 原作の場合、サミュエル・ラチェットの正体として、「カセッティ」と呼ばれているだけで、「ランフランコ」と言う名前は付されていない。また、米国において、幼いデイジー・アームストロング(Daisy Armstrong)を誘拐して殺害したことについて、特に悔恨の念を抱いていないようである。一方、TV ドラマ版の場合、サミュエル・ラチェットの正体として、「ランフランコ・カセッティ」と言うフルネームが与えられている。また、米国において、幼いデイジー・アームストロングを誘拐して殺害したことについ関して、悔恨の念を抱いているようで、神に祈りを捧げている場面も見受けられる。


(4)ヘクター・マックイーン:原作の場合、彼の父親は、アームストロング家の弁護士であったが、TV ドラマ版の場合、彼の父親は、ランフランコ・カセッティを処罰する検事と言う設定に変更されている。


(5)ジョン・アーバスノット大佐:原作の場合、「アーバスノット大佐」と呼ばれているだけで、「ジョン」と言う名前は付されていない。一方、TV ドラマ版の場合、「ジョン・アーバスノット大佐」と言うフルネームが与えられている。


(8)ザビエル・ブック:原作の場合、「ブック氏」と呼ばれているだけで、「ザビエル」と言う名前は付されていない。一方、TV ドラマ版の場合、「ザビエル・ブック」と言うフルネームが与えられている。


(9)ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人:原作の場合、サミュエル・ラチェット / ランフランコ・カセッティの処刑を指揮したのは、キャロライン・ハバード夫人(本名:リンダ・アーデン(Linda Arden))であったが、TV ドラマ版の場合、キャロライン・ハバード夫人ではなく、ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人が指揮している。


(12)キャロライン・ハバード夫人:原作の場合、サミュエル・ラチェット / ランフランコ・カセッティの処刑を指揮したのは、キャロライン・ハバード夫人であったが、TV ドラマ版の場合、キャロライン・ハバード夫人ではなく、ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人が指揮している。


(16)エレナ・アンドレニ伯爵夫人:原作の場合、彼女の旧姓は、「エレナ・マリア・ゴールデンベルク(Elena Maria Goldenberg)」になっていたが、TV ドラマ版の場合、彼女の旧姓は、「エレナ・ウォーターストーン(Elena Waterstone / Wasserstein)」に変更されている。


(17)アントニオ・フォスカレリ:原作の場合、彼の正体は、アームストロング家の運転手であったが、TV ドラマ版の場合、それに加えて、アームストロング家のメイドだった車掌ピエール・ミシェルの娘の恋人だったと言う設定が追加されている。原作の場合、車掌ピエール・ミシェルの娘の恋人だった人物は、アームストロング家の庭師だったサイラス・ハードマンである。


(18)コンスタンティン博士:原作の場合、他の車輌の乗客で、ポワロとブック氏の捜査に協力する人物であったが、TV ドラマ版の場合、サイラス・ハードマンが登場しない関係上、コンスタンティン博士も、サミュエル・ラチェット / ランフランコ・カセッティの処刑を執行するメンバーの一人になっている。また、アームストロング家の家庭医だったと言う設定も追加されている。


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