2023年10月16日月曜日

アガサ・クリスティー作「パディントン発4時50分」<英国 TV ドラマ版>(4:50 from Paddington by Agatha Christie )- その2

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く
ミス・マープルシリーズの長編第7作目「パディントン駅発4時50分」の一場面
(筆者が購入した「アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー」から抜粋)


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「パディントン発4時50分(4:50 from Paddington → 2022年12月20日付ブログで紹介済)」(1957年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第3話(第1シリーズ)「パディントン発4時50分」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


パディントン駅の屋根(その2)
<筆者撮影>

(1)

<原作>

ロンドン市内でクリスマス用の買い物を終えたエルスペス・マギリカディー夫人(Mrs. Elspeth McGillicuddy)は、セントメアリーミード(St. Mary Mead)に住む友人のミス・ジェーン・マープルに会いに行くために、パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)発午後4時50分の列車に乗った。

彼女が乗った列車は、隣りの線路を同じ方向へ走る列車に並んだ。並走する列車のある車窓のブラインドが上がっており、マギリカディー夫人は、そこに驚くべき瞬間を目撃した。なんと、こちらに背中を向けた男が、金髪の女性の首を絞めている現場だったのである。

すぐさま、マギリカディー夫人は、車掌に対して、今目撃した内容を報告した。

<TV ドラマ版>

基本的に、原作と同じ展開をしている。


(2)

<原作>

ミス・マープルの家を訪れたマギリカディー夫人は、彼女にも、列車内で目撃した内容を話した。マギリカディー夫人から経緯を聞いたミス・マープルは、彼女の話を信じたが、翌日の朝刊には、それらしき記事が載っていなかった。

ミス・マープルとマギリカディー夫人の2人は、地元の警察を訪ねて、事件の経緯を話したものの、警察による捜査の結果、列車内にも、線路周辺にも、該当する女性の死体は発見されなかった。

<TV ドラマ版>

原作の場合、ミス・マープルの甥であるレイモンド・ウェスト(Raymond West)の次男デイヴィッド・ウェスト(David West)が英国国鉄(British Railways)に勤務しており、エルスペス・マギリカディー夫人がパディントン駅から乗車した列車に並走した列車を調べるのを手助けしているが、英国 TV ドラマ版の場合、ミス・マープル達は、自分達で調べ上げているため、デイヴィッド・ウェストは登場しない。


パディントン駅のプラットフォームに設置されている大時計(その2)
<筆者撮影>

(3)

<原作>

上記の結果を受けて、ミス・マープルは、殺人犯は列車内で絞殺した女性の死体を列車から投げ落としたものと考えた。そうすると、ブラックハンプトン駅の手前で線路が大きくカーブしている地点にあるラザフォードホール(Rutherford Hall)が、正にその場所だと思われた。ラザフォードホールは、現在、クラッケンソープ家(Crackenthorpe family)が所有していた。

そこで、ミス・マープルは、旧知の家政婦で、若いベテラン料理人であるルーシー・アイルズバロウ(Lucy Eyelesbarrow)に対して、クラッケンソープ家の家政婦として潜入して、マギリカディー夫人が目撃した女性の死体を探すように依頼した。

ミス・マープルの依頼に興味を覚えて、クラッケンソープ家の家政婦として採用されたルーシー・アイルズバロウは、数日後、ラザフォードホールの納屋の中にある石棺内に、マギリカディー夫人が目撃した女性の死体を発見したのである。

<TV ドラマ版>

ミス・マープルの甥であるレイモンド・ウェストは登場しないが、トム・キャンベル警部(Inspector Tom Campbell)が、代わりに、ミス・マープルの甥として登場する。そして、ミス・マープルは、彼の家に捜査拠点を構えて、ルーシー・アイルズバロウに対して、捜査の指示を行う。

原作の場合、ブライアン・イーストリー(Bryan Eastley - クラッケンソープ家の次女であるイーディス・クラッケンソープ(Edith Crackenthorpe / 故人)の夫で、元戦闘機パイロット)とルーシー・アイルズバロウの2人が恋愛関係に発展していく。一方、英国 TV ドラマ版の場合、ブライアン・イーストリーは、ルーシー・アイルズバロウに対して、何度も好意を見せるが、最終的に、恋愛関係に発展して行くのは、ミス・マープルの甥であるトム・キャンベル警部とルーシー・アイルズバロウの2人である。

原作の場合、ラザフォードホールの納屋の中にある石棺内から、マギリカディー夫人が目撃した女性の死体を発見された後、警察関係者として、地元警察のオードリー警部(Inspector Awdrey)の他に、スコットランドヤードのダーモット・クラドック警部(Detective-Inspector Dermot Craddock)、地元警察のベーコン警部やパリ警察のアルマン・デッサン警部(Inspector Armand Dessin)が出てくるが、英国 TV ドラマ版の場合、地元警察のオードリー警部を除くと、彼らは誰も登場しない。彼らの代わりに、地元警察のオードリー警部とミス・マープルの甥であるトム・キャンベル警部が、事件の捜査を行う。


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